黙示録 (単行本)

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (633ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105627

作品紹介・あらすじ

爛熟期を迎える18世紀前半の琉球王国。数奇な運命の下に生まれた少年・了泉は、自らの命と野心をかけて舞踏の世界でのし上がる――。琉球に生まれた天才舞踊家の、壮絶なる《天国》と《地獄》を描く一大叙事詩!

感想・レビュー・書評

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  • 献本企画でパイロット版をいただきました。ありがとうございます。

    が、レビュー投稿期日があったのですね、、、これ。申し訳ない。
    ようやく上巻・下巻共に読み終えました。

    一部のダンスに関しては見慣れている方だと思いますが、物語のテーマの一つでもある「琉球の美」としての楽童子たち、特にメインキャラクターである了泉・雲胡ら二人の舞踊対決が凄すぎてイメージしきれません。京劇や狂言、歌舞伎は見たことがあるのですが・・・
    「指で笑う」シーンが多く、大衆もその動きに圧倒され琉球人に魅了されることになっていますが、そもそも指だけで「笑った!」って見ていて分かるのかな。。。

    現実にはあり得ないようなことも自由に表現できるのが本のいいところだと思いますが、この作品は実写化に向かったとき自分でハードルを上げてしまっている感があるな。。

    幻術を使い、稚児の若さを貪って肉体を蘇らせても実体は骸骨という与那城王子の設定は牡丹灯籠を彷彿とさせます。でも下品が過ぎるような。

    最下層から這い上がってきた了泉と、努力と才能の人 雲胡。薩摩、江戸を経て琉球へ戻ってきた2人の今後が気になるところです。

    ここから下巻へ…

    貧しいニンブチャーから這い上がり、士族の地位も金も名誉も手に入れた了泉と雲胡には縁談も続々舞い込むのですが…慢心して心を無くした了泉は結局全てを失ってしまいます。

    ニンブチャー(念仏僧)、安仁屋村に住み貧しく誰からも蔑まれる彼らは穢多非人に近い存在だと思うのですが、了泉の母のように病気をきっかけにそこにさえ居場所がなくなってしまうのは、昔本土でも実際にあったハンセン病のような差別の歴史を暗喩しているのか…クンチャーが天刑病とされ、見た目も醜く変えてしまい、実際には人から人へは感染しないのに隔離されるところなんかはそれとしか思えません。(と思って調べてみたらやはり、そうでした)

    これまで蔑まれひどい目に遭わされ続けてきたとは言え、良心の欠片もなく、傲慢で身勝手な了泉の行動には読んでいて幻滅しましたが、物語上、一度徹底的に彼を堕とす必要があるので仕方ないか。

    後半一気に厚みを増して面白くなってきます。

    太陽しろ、月しろだけでなく、動と静、男と女、親と子、高貴と下賤、貧者と富者、美しさと醜さ、若者と老人、生と死など対比するテーマが混在して読み応えがありました。

  •  十八世紀の琉球王国を舞台に、貧民の出である了泉と秀才教育を受けてきた雲胡という二人の少年が、琉球舞踏の世界で切磋琢磨しながら高みを目指す。
     天才・了泉と秀才・雲胡のライバル同士のぶつかり合いは『ガラスの仮面』やスポ根マンガの世界そのままで、踊りの描写も臨場感たっぷりで入り込みやすい。前半は、了泉ら学童子たち一行が徳川将軍の前で琉球舞踊を披露するまでの道中が面白おかしく書かれている。後半になると、清と日本という二つの大国にはさまれた琉球王国の微妙な立場や、人間の弱さと輪廻に焦点が移り、シリアスさが増す。

     色々と詰め込みすぎて、最後は南国らしいアニミズムに走ってしまった感があるが、全体的にテンポの良いストーリーでページの分厚さをものともしない面白さだった。

  • 作者お得意の沖縄歴史ものであり、今までの作品の主役たちも、結構、ぶっ飛んだキャラが多かったが、本作ではとびっきりのアウトローっぷりを発揮しているので、好き嫌いが大きく分かれるであろう。ただし、陰陽の陽たる王のために悲しみをまとって生き、この世の地獄を味わう陰となるべきものが、主役である以上、主役は彼の様な性格と生き方をしなければならない。ただし、作者らしく、ただ単に悲惨な生を描くのではなく、ここでもぶっ飛んだキャラを脇に配し、とびっきりの波乱万丈の展開を用意している。妖怪王子と認識できないかわら版屋等、少々、行き過ぎ感があるものの、これらの脇役が脇をしっかり締めているので、主人公の行いも陰に籠らず、物語も何処か沖縄らしい味わいが残る。全ての登場人物にその意味があり、その物語が最後に神にささげる踊りとして収斂していく様は素晴らしい。最後に物語は最初に還る輪をなす相似形の様な終わり方をするが、神の舞が螺旋の動きである以上、螺旋の様に物語は動いていかなければならない。

  • この小説は琉球舞踊を題材にした小説でした
    踊る時の気持ちについて考えさせてくれる
    素晴らしい本でした
    ちゃんと踊りについての技術的な面からの解釈と
    気持ちの面からの解釈が詳しく描かれていたので
    踊る事に触れた事がある人にはかなりお勧めです
    最後の方になると精神面の事が描かれているので
    苦手な人も出てくるかもしれませんが
    踊る事について真剣に考えることの出来る素晴らしい
    本でした
    主人公は最悪な人格なので毛嫌いする人もいると思いますが
    全部上手く繋がっているので最後まで読んでもらいたいです
    あと、この小説を読んで昔の人たちが一日を生きるのが
    どれだけ大変だったか勉強になります
    みんな貧しくて死体が転がっていたり、お互いだましあい
    混沌としている
    今の僕たちには想像もできない貧困な世の中だった
    それを思うと食べ物も着るものも住むところもある
    今の世の中は楽に生きてける世の中だなと思いました
    そのせいで、感謝の気持ちや自然の恩恵も忘れてしまう
    でも、世の中がいくら発展しても混沌とした人の感情は
    変わらないんだなーと思いました

  • 「テンペスト」よりさらに古い、1600年代後半から1700年代にかけての琉球舞踊の物語。被差別ニンブチャーとして生まれ、母がハンセン病になったことでその村を追われ、曲芸一座で糊口をしのいでいた了泉は踊りの才能を見いだされ、ライバル・雲胡と抜きつ抜かれつの出世をしてゆく。謝恩使として江戸に上る際の、薩摩・大阪・江戸の様子なども面白かった。前々から興味のあった久高島やイザイホーにまで話がつながって個人的にうれしい。同じように、と言っていいか分からないが、手で物語を表現するフラを踊る身として、もっと心を込めようと思わされた。「マブイ落とす」の文字を見て、再び「風車祭」が読みたくなった。

  • 金庸の小説世界のようでした。荒唐無稽のようで核があり、哲学ともいえる舞踊の中には宇宙があって、めくるめく世界にお腹いっぱいです。

  • ガラスの仮面だよ~ってことで
    読み始めました
    江戸に行くんだよね~って、感じ

    ところが、半分読み終えたところで
    江戸から帰ってきちゃったよ
    これからどういう展開?

    後半は、精神世界ってところかな
    自分、死ぬほどの困難に出会ったら
    どう考えて乗り切ろうって思ってたんですが
    穏やかな死を迎えるため...と
    考えて行こうかと

    了泉は、毒のあるキャラです
    不快感を感じてしまうことも多々
    何で、こんな展開?っていうのは
    後で必要な事だと納得が行くんですが
    でもねぇε-(‐ω‐;)

    久高島や、御嶽、グスクなど
    知識として持っていたおかげで
    物語の展開に入り込めてよかったです
    (斎場御嶽は、行ったことあるし)
    一般読者が、いきなり読んだら
    難しいんじゃないかな?

  • 「テンペスト」や「トロイメラ」も面白かったけれど、これはまた違った感じで本の見た目と同様、重厚感があって読み応えがありました。なにせ上下2段組で600ページ以上。でも面白くて、夢中で読みました。琉球王国時代、太陽しろである首里天加那志 尚敬王の対となる月しろの座を巡って、2人の舞踏家が対立する。主人公の了泉はニンブチャー出身で、ことごとく世間を憎んでいるが、生まれながらに人を引き付ける魅力を持ち、舞踏に関しては天才である。ライバルの雲胡は士族出身で、舞踏の英才教育を受けた秀才。そんな二人は十代の頃からお互いをライバル視し、月しろとなるべく切磋琢磨する。薩摩と清国に挟まれ、微妙な立場にある琉球が独立を保つためには、芸能も大切な力となった。そんな芸能の仕事にかかわる人々の悲喜交々も、物語に奥行き面白さを生み出す。了泉は最後には神に捧げる舞踏の域に達し、琉球の成り立ちにまで話が及ぶ。琉球舞踊を見たことはないのだけれど、おそらく実際に見るよりも舞踏家の息遣いを感じ、緊迫感を感じた。でも琉球舞踊、見てみたいな。あぁ〜、沖縄に行きたい!!

  • 献本企画当選・パイロット版入手

    了泉にとって幸福だった時はページをめくる手が止まらないのに、地獄へと突入した途端に読み進めるのが辛かった。アウトローな主人公だったはずなのに、いつの間にか感情移入してしまったのが原因だと思う。
    身につまされて、何度も冊子を閉じて天井を見上げぼんやりと過ごし、気持ちを落ち着けてまた読む。そんな行動を繰り返した。
    ボリュームがあることが原因ではなく、細かな心理描写がスムーズな読書を邪魔しじっくりと読むことをさせてくるのだ。こんな作品は初めてで正直戸惑いました。
    辛いからさら、と読みたいのにそれが出来ない。
    そして最後の一文にやられた。千年を生きてみないか。深読みしてしまうではないか! むしろすべきなのか?
    ああもう、パイロット版では我慢できず書店へ迷わず買いに行きましたとも。

    個人的に、この作品は全編を通して、郷土にたいする愛情がなければ書き上げることのできない一冊だなあ、と感じた。

  • 表題から勝手に想像したものから随分違ってた(笑)。読み始めて、伝記物かと思いきや、妖怪とかファンタジー的な話もありの、踊りの才能のある一人の人間の一代記という話でした。結局、表題が何を表してるのか、よくわからないまま、読み終わってしまった。二転三転するストーリーは面白いが、何を伝えたいのかは、よく分からず。。。難しく考えず、エンタメとして読むのがよいかな。

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著者プロフィール

池上永一
一九七〇年沖縄県那覇市生まれ、のち石垣島へ。九四年、早稲田大学在学中に『バガージマヌパナス』で第六回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。九七年刊の『風車祭』が直木賞候補に。二〇〇八年刊の『テンペスト』はベストセラーとなり、一一年の舞台化をはじめ、連続テレビドラマ、映画にもなった。一七年『ヒストリア』で第八回山田風太郎賞を受賞。他の著書に『シャングリ・ラ』『レキオス』『ぼくのキャノン』『統ばる島』『トロイメライ』『黙示録』などがある。

「2023年 『海神の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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