金星を追いかけて

  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102046

作品紹介・あらすじ

太陽系の謎を解き明かせ。チャンスは100年に1度、「金星の日面経過」。18世紀の天文学者たちが命を賭して結集した、地球規模の壮大なプロジェクト。

感想・レビュー・書評

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  • これ読んで金星の日面通過を見た人は幸せだ。

  • 18世紀の天文学者が地球と太陽の距離を導きだすために、世界各地の観測地点へ行き、金星の日面経過を観察する。1761年と1769年の2回の世界的な科学プロジェクトの内容が書かれている。
    科学を発展させるために各国の天文学者が協力しあい、観測地への危険な冒険を敢行する姿に感服した。1761年の観測時は戦争状態にあった国同士であっても、互いに協力の体制を築いていた。天文学者の知識探求のための情熱と科学発展の重要性を各国のトップ認識できたことが世界プロジェクトに発展していったのだと感じる。
    天文学者の冒険記が存在するならば、ぜひ読んでみたい。

  • 18世紀、ハレーの意志を継ぎ、ドリルがやった地球規模の観測。知らなかった。人間の知的好奇心がどれほどのエネルギーを発信するのか。地球と太陽の距離を知りたいという知的好奇心。国を動かした。

  • タイトルにあるように金星に関係する話だが、最近観測された金星の日面通過に関するお話。100~120年周期に2回程度見られる珍しい現象である。次回は2017年。その後は来世紀まで見られない。
    この本は、エドモンド・ハレーが自分の死後の1761年と69年に発生する日面通過を予想し、地球と太陽との距離を視差によって求めるよう世界中(欧州中)の天文学者に呼びかけた、世界初の大規模な科学プロジェクトに関するストーリである。世界規模のプロジェクトは最近始まったかのように思っていたが、この日面通過の観測が初めてであり、政府が資金を出して後世の手本と生る運営を行なっていた。視差を図るには、できるだけ北とできるだけ南で観測する必要があり、喜望峰やタヒチにまで遠征するチームもあったのである。
    注目すべきなのは、このプロジェクトに参加したのは、天文学者だけでない。押し花や種子、鉱物、動物の剥製、土壌に関する詳細の報告や、現地の地理や気候、習慣の調査報告を山のように持ち帰ったとあるように、様々な分野の研究者が参加している。まさに近代学術探検の形ができているのである。この後、北米大陸を横断したメルウェザー・ルイスや、ビーグル号で航海したチャールズ・ダーウィン、エジプトに遠征したナポレオンなども多くの学者を同行させており、このプロジェクトの先見の明には驚かされる。国際的な情報交換と協力の重要性を理解していたわけである。
    しかし、実際のプロジェクトに参加した人たちは、途中で行方不明となったとされ、祖国では死亡が宣告されるなど、不幸な話もあった。本の内容は、こうした実際の話しがメインであり、国際協力という華々しい話の裏にある人間の営みが感じられる。天文ファンだけでなく、広くお勧めの一冊です。

  • 金星の太陽面通過は最近も話題になったが、18世紀の天文学者にとっても太陽系の大きさを決定する重要なイベントだったようだ。金星によるこの出来事を観測しようと、世界各国の天文観測家が自国の名誉(ロシアは科学レベルの高さ)を賭けて金星の太陽面通過の測定を試みている。様々な苦難のうえ、測定した値は現在の測定値と寸分違わない精度のものだった。
    フランスの天文学者の呼びかけで、多くの科学者が賛同して遠い異国の地へ遠征したが、このような国際協力は、近代に始まったことでは無かったようだ。教科書では、歴史を時系列で捉えることが多く、国という単位で考えがちですが、この本では金星のイベントを通じて、科学者の行動を面の広がりで捉えている。2回の金星イベントで運よく観測できた人もいれば、遠くまで遠征しながら雲に邪魔されて観測できなかった不運な人も居た。また観測できても、旅の途中で病に斃れた科学者も多かったようだ。科学に賭ける想いというのはまさに命がけの仕事だった。
    金星の太陽面通過の話題は、素人レベルではそれを観察できるかどうかという興味しか無いけれど、科学者にとっては宇宙の大きさを測る特別な事象であることを知った。次回は2017年と言われているので、自分ももう少し勉強して、この天文現象をまた違った視点で眺めてみたいと思った。

  • 冗長。途中で飽きた。

  •  訳者もあとがきで書いているが、今年は、天文ショーが目白押しだ。5月21日にあった金環日食をはじめとする一連の天体ショーに魅せられた人は多い。そんな今年にぴったりなのが今回紹介する本だ。

     今回のテーマとなっているのが金星の日面経過だ。今でも南の島に行くには飛行機を使っても時間がかかるのに、18世紀では船を使って行った。ドンブラコ、ドンブラコと揺られながら、ある時は嵐に巻き込まれて船酔いしたり、またあるときは照りつける太陽にヒーヒー言ったり、ネズミに食料をかじられて悲惨な目にあったりしながら航海していくのだから並大抵のことではない。

     科学者が国の違いを超えて協力+反目しながらも目的達成のために動いた。そして、ヨーロッパ列強も、最初から参加した国や2回目になって参加した国など温度差が見られるが、国威発揚という今でもやりそうな手段を使って金星の日面経過を拝んだ。

     1回目は1761年6月6日で、2回目は1769年6月3日だった。科学の発達のおかげもあるが、いつの世も天体ショーは人をひきつけてやまない。

    科学者同士のドロドロした人間関係を読んでいくと、次のようなことが浮かんできた。天文学、政治学、考古学と、天の世界、現実の世界、歴史の世界、いずれにしても、人間がかかわるだけに学問の世界も大変なのが読んで分かる。宇宙人ジョーンズが聞いたらどう思うのだろうかとふと頭をよぎった。

  • ★4つか5つか迷ったが面白いことに変わりないので5つ献上。
    希望・野心・策略、多くの人の思惑が交錯しつつ、最後は単純な「知りたい」という知的欲求の下、一つになる。直近のヒッグス粒子発見の動きを見ているような言わば「冒険譚」。
    それにしても思うのは、このような大所からの結束的動きはどうして欧州で多く起こるのだろう?
    確かに科学技術は発展していたのだろうが、例えば自分が属するアジアの歴史の中でこういった話はあまり聞いたことがない。
    様々な思考を巡らせるきっかけを与えてくれる好著。

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