勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~

著者 :
  • KADOKAWA
4.17
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本棚登録 : 1090
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084229

作品紹介・あらすじ

看護師の月岡美琴は松本市郊外にある梓川病院に勤めて3年目になる。この小規模病院は、高齢の患者が多い。 特に内科病棟は、半ば高齢者の介護施設のような状態だった。その内科へ、外科での研修期間を終えた研修医・桂正太郎がやってきた。くたびれた風貌、実家が花屋で花に詳しい──どこかつかみどころがないその研修医は、しかし患者に対して真摯に向き合い、まだ不慣れながらも懸命に診療をこなしていた。ある日、美琴は桂と共に、膵癌を患っていた長坂さんを看取る。妻子を遺して亡くなった長坂さんを思い「神様というのは、ひどいものです」と静かに気持ちを吐露する桂。一方で、誤嚥性肺炎で入院している88歳の新村さんの生きる姿に希望も見出す。患者の数だけある生と死の在り方に悩みながらも、まっすぐに歩みを進める2人。きれいごとでは済まされない、高齢者医療の現実を描き出した、感動の医療小説!

感想・レビュー・書評

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  • 「神様のカルテ」は面白かった。この本もやはり信州の総合病院を舞台としている。お互いに惹かれ合って恋人となる研修医の桂正太郎と看護師の山岡琴美の二人の視点で物語は進んでいく。総合病院の医者や看護師たちの殺人的な大変さがよく分かるが、今回は高齢者の入院患者についての問題が提起されている。最終治療という難しいことなのだが、他人事とは言っていられないことだ。胃瘻というのも難しい。主人公の二人は立派すぎて…。

  • 勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~
    2019.11発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。

    安曇野の美しい風景と、四季折々のお花を織り交ぜながら…。

    看護師の月岡美琴は、生まれも育ち信州松本であり、信濃大学医学部看護学科を卒業したのち、松本市郊外に有る小さな一般病院に就職した。
    就職して3年目を迎えた梓川病院では、美琴は、1年目の研修医・桂正太郎医師をとおして看護師として、また人間としても成長して行く。
    そんな中で、人の命について正面から寿命という現実の前に、命を守ることの大切さと、命をどう終わらせるかということを…。

    そして、安曇野の美しい風景のなかで、美琴と正太郎の恋が育まれて行く。正太郎が、四季折々の花を織り交ぜながら美琴との恋が育まれて行く。

    【読後】
    この本は、字が小さくて読むのが本当に大変だった。
    読むのを辞めようとしたのであるが、「神様のカルテ」を読んできたのでどうしても読みたかったので毎日少しずつ読んできたが。
    途中で怒りを覚えてからは、読む速度が速くなった。怒れば怒るほど、読むスピードが速くなる。読み終って目が痛い、右側の首から肩にかけて痛い、明日が大変だ。

    私は、高齢者(65才以上)と呼ばれる年齢になって、今は健康であるがいつ病気になるか分からないなか、この本を読んで、高齢者医療の現場で、医師と看護師そして病院の各々の立場で患者に向い合っている事を知る。
    途中何度も怒りが湧いてくる。
    病院は、何か問題が起きると患者の為に有るのでなく、医師は、看護師は、各々自分たちの事を、病院は経営の事を考えて患者と接している。

    また、私は、命を寿命とは考えていない、命は人ぞれぞれの運命だと思っている。
    若くて亡くなった人も、年を取って亡くなった人も、その人の運命だと思っている。
    読後感は、はなはだ良くないが、最後は良くまとめているが。
    歳を取ってから読むには、きつい本であった。

  • 高齢者医療がテーマ。この歳になると、いろいろと感じるものが多い作品。親が癌で亡くなった時、急性期病院から退院させられ、病院で死ぬことも難しい時代になってだなぁと感じでいたので、感動する話ばかりであった。魅力あるふたりの主人公の続編を大いに期待してます。

  • 現役の医師である著者の作品だけに現在の医療現場が抱える様々な課題や問題点がよく分かる♪
    信州松本市郊外の小さな一般病院で看護師として3年目を迎える美琴だが、そんな地方病院に朴訥で飾らないが花に何故か詳しい研修医 桂がやって来た。好対照な2人だがともにある意味不器用で、しかしながら仕事には前向きで真摯な姿勢は共通する。そんな2人が様々な人間模様や色々な壁に当たりながら成長する一年間が爽やかに、偶にホロリとさせられながら進展する。作品に託して国に政治に行政に現在の医療の問題課題を汲み取って欲しい作者の思いが伝わってきました。

  • 看護師・月岡は高齢の患者が多い病院に勤務して3年。研修医・桂がやってくる。ぱっと見さえないが、患者に対しては真摯に向き合い、実家が花屋ということで、花についての知識も深い。二人は高齢者医療について、人間の生死を考える。
    高齢者医療の現実が描かれていますが、それだけでなく、安曇野の風景、花、二人の成長、そして恋、爽快感もありました。普段は病院に行かないので自分の周りではどうなのかわからないのですが、夏川先生が書いているだけに、高齢者ばかりの患者、地方の病院の現場を知らせた感じです。登場した先生方のように真摯に患者さんのことを考えてくださる先生ばかりだといいんだけれどね。88歳の患者さんの生き方が素敵でした。
    栗原先生の影があり、続編とか、神様のカルテとのクロスも見てみたいなあ。

  • 若い看護師と研修医の、恋と成長の物語。
    全体的に前向きで、時にじーんとくる。

    『神様のカルテ』とつながった世界。

    ほとんどが高齢者で、認知症と寝たきりも多い、地方の小規模病院。
    取り上げられる問題は、高齢者ならではの内容。

    治療を終えて元気になって退院するのが普通の病院の医療ものとは、一線を画す。

  • 安曇野の梓川病院は、患者がほとんど高齢者な上に人手不足。
    地方医療が抱える問題、集末期医療など重いテーマが扱われているけど、研修医の桂、3年目の看護師美琴のフレッシュさが物語を爽やかにしている。
    二人の医療に向き合う真っ直ぐな姿勢が素敵で、気持ちよく読めた。
    シリーズ化して欲しい!

  • 「神様のカルテ」で描かれるのはベテラン医師が多いけど、
    この作品では、研修医や看護師が中心。

    終末医療、医療のこれからが描かれています。

    シリーズ化して欲しい作品です。

    医師として忙しい日常の中で、この様な素晴らしい作品を描ける作者を尊敬します。

  • 少しの間余裕がなくて小説を読めず、久しぶりに電車で夏川草介を開いた。
    始めの数ページ、冗談交じりの軽やかな文がちゃんと待っていてくれて、なんでもないところなのにじんときた。

    読みたい本がある幸せ。

    花屋の息子である研修医と看護師が高齢者医療と向き合う話。
    各章、秋海棠、ダリア、山茶花、カタクリと、お話に花が登場する。
    言いにくいことをはっきり言ってくれる登場人物達に、心を洗われる。
    人を傷付ける言葉ではなくて、悩みに悩んで、口をついて出た言葉たち。

  • 安曇野の病院に研修医としてやって来た桂正太郎。ここでは入院患者は老人ばかりで胃瘻など終末期医療について悩む。月岡美琴は3年目の看護師。無茶を言う患者家族や事なかれ主義の上層部に噛みつく。

    とっても面白かった。

    「神様のカルテ」とは別のシリーズだけれど流れる哲学は同じ。

    回復の可能性のない老人を生かし続ける事の意味や、医者に任せるだけで考えようとしない患者家族など色々かんがえされられる。

    「テレビや小説では"劇的な死"や"感動的な死"ばかりが描かれる一方で、地味で汚くて不快な臭気を発する"現実の死"は、施設や病院に押し込んで黙殺する。そういう現代の医療が直面している闇の一端が、社会の縮図が、桂の前に立ちはだかっている問題なのである」

    続編をぜひ読みたいけれど、連載が3年もかかっているので、いつになることやら。

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

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