ラストナイト (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.78
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本棚登録 : 744
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041082898

作品紹介・あらすじ

片桐達夫、五十九歳。顔には豹柄の刺青がびっしりと彫られ、左手は義手。傷害事件を起こして服役して以来、三十二年の間に誘拐事件を三回、強盗を一回起こし、刑務所を出たり入ったりの生活を送る男には、胸に秘めた思いがあった――。
菊池正弘が営む居酒屋「菊屋」に、刑務所を出所したばかりだという片桐達夫が現れた。三十五年来の友人を迎える菊池だが、刑務所から離れられない彼に忸怩たる思いを持っていた。片桐が犯罪に手を染めるようになったきっかけは、彼が「菊屋」で起こした傷害事件だった。しかしそれは因縁をつけてきた暴力団員から、店と菊池の妻をを守るための行動だったのだ――。
片桐は、なぜ、罪を重ねることになったのか? 涙腺崩壊必至! 心奪われる、入魂のミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 再犯を繰り返す、顔にまで刺青をした男。片桐。
    しかし、それには理由が…
    う…切ない…
    辛過ぎる…
    親友にも、娘にも、三行半を突きつけられ…
    それでも、初志貫徹する。自分の人生をかけて…

    はじめは、何やねん!悪さばっかりして、友達にも迷惑かけてって思ってたけど、ラストになるにつれて分かる真実!

    泣ける!泣ける!泣ける!

    でも、もっと何か楽な方法というか、生き方は、なかったんかな…
    奥さんをそれだけ、愛してたって事かな?
    何か、悲しすぎる生き方やけど、本人は満足できたのかな?
    そうであると信じたい!
    ええ作品でした!(^_^)v

  • これはすごい
    THE薬丸岳 といった作品
    壮絶な男の物語、そして結末。
    熱いものがこみ上げます。

    ストーリとしては
    顔に豹柄の刺青を入れた刑務所帰りの男、片桐。再犯を繰り返し何度も刑務所に収監されます。
    そもそも事の発端は暴力団員への傷害事件。そこから、人が変わったように再犯を繰り返す片桐。
    片手が義手となり、豹柄の刺青を入れたり、いったい何が彼を変えたのか?

    そんな片桐を友人、弁護士、別れた妻の娘とそれぞれの視点から、語られていきます。
    そして、ラスト明らかになる真実
    哀しい結末
    まさに驚愕なラスト
    骨太のヒューマンミステリでした。

    ネタばれになるので、詳細にコメントできない。
    しかし、ぐっと熱くなります

    これは、とてもお勧め

  • こういってはなんだけど、ここまで完成された作品だとは思ってなかった…… 発売当初はページ数が他の薬丸作品より少なめに感じたので、内容も軽めのものかな、と勝手に思いその時は買わず、電子書籍のセールでようやく買ったのですが…… いや、完全に自分がバカだった……

    顔に刺青を彫り、再犯を繰り返す片桐。そんな片桐が再び出所。彼の出所後、数日間の足取りを友人、弁護士、娘などといった様々な人物の視点を通して描きます。

    更正を願う友人は、一向に生き方を改めようとしない片桐に複雑な感情を抱き、若い弁護士は片桐とその娘の様子から、自身の過去を思い出し、そして娘は、片桐の逮捕後、母が覚醒剤に溺れ自殺したことを知り、片桐に黒い感情を持ち……

    それぞれの片桐に対する思いがとにかく読ませる。元々薬丸さんの文章は読みやすいと、思っているのですが、この読みやすさと重厚なドラマを両立させるのは、やはりスゴいと言う言葉しか出てきません。デビュー作から一貫して、犯罪とその後の人々の苦悩を見つめ続けた薬丸さんだからこそできる芸当だと思います。
    そして読んでいけばいくほど、片桐が再犯を繰り返すような凶悪な男にはどうしても思えず、彼が何を思って行動しているのか気になり、グイグイと読み進めてしまいます。

    そして徐々に片桐をめぐる視点は核心へ。夜の街に立つ女性、そしてそれぞれの語り手をつなぐ謎の男。女性の章での一級品の犯罪小説のような緊迫感もさることながら、女性の過去と贖罪、そして片桐の言葉や行動に胸を打たれます。そして最後の男の章で、片桐のこれまでの行動の意味が明らかになったときの衝撃……

    片桐の行動の意味もさることながら各語り手の話が見事に繋がるのも、薬丸さんの物語の構成力の高さを感じます。そしてミステリとしての出来に加え、罪と罰、贖罪と赦しをめぐる重厚な人間ドラマとしても、とにかく読ませます。

    そして先にも書きましたが、これが結構ページ数が少ないのです。電子書籍で読んでいたので、後でサイトで確認したのですが文庫本で256ページ。このページ数でミステリとしての完成度も、犯罪をめぐる重厚な人間ドラマとしても洗練された作品を書くことができるのか、とそういう意味でも衝撃を受けました。薬丸さんはどこまで行ってしまうんだ……本当にムダのない作品だと思います。

    読みやすい文章、手頃なページ数、それでいてミステリとしての完成度や、片桐の目的や真の人間性に興味を持たせ続ける展開、そして何より、犯罪をめぐる人間ドラマ……

    薬丸作品を一つ誰かに勧めるとなったら、そうした総合的なバランスから一番がこれになりそう。ミルクボーイの漫才じゃないけど、栄養バランスの五角形みたいにこの作品を表すとしたら、メチャクチャ大きいものを書くだろうなあ。

  • これ以上ないくらいの愛は感じるが、不器用だなあ。泣けるぐらい本当不器用な生き方だ。

  • これほど、壮絶な生き方をする男がいるとは。
    絵空事のような話も、著者の筆力で、その小説世界にたちまち取り込まれてしまった。
    罪を犯した者の思いや贖罪を取り上げたら、著者はやはり当代一。
    顔に豹柄の刺青をした特異な容貌の男の行動を、彼に関わる5人の視点で浮き上がらせる構成も見事。
    ラストで、彼の思いと行動が明らかになり、涙腺を刺激されずにいられない。

  • 薬丸岳『ラストナイト』角川文庫。

    なんとも壮絶な男の物語である。余りの結末に絶句した。

    主人公の59歳になる片桐達夫は顔に豹柄の刺青をびっしり入れ、左手は義手という異様な容貌を持ち、32年間、刑務所に出たり入ったりを繰り返していた。何故、片桐は犯罪を繰り返すのか……

    ラノベチックな表紙イラストが似合う柔なミステリーが増える中、薬丸岳は驚くほど骨太のミステリーを描いてみせた。人間はここまで鬼になれるのか。

    本体価格620円
    ★★★★★

  • 異形の風貌に変わってしまった彼を理解し、何とか救えないものかと奮闘する登場人物たち。
    ラストナイトを迎えるまでの日々をそれぞれの視点から描き、寡黙で多くを語らない彼が何故罪を重ね続けるのか、その意図が少しずつ明らかになっていく。

    本来であれば、憎むべき犯罪者であるのに、彼に寄り添い、何とか理解しようと思えてしまう。
    この作者の描く犯罪者には皆心があり、読者側が同情すらしてしまうような魅力がある。
    切なくて哀しい、一人の男による人生をかけた愛の物語。


  • 顔面に豹柄の刺青を入れた男、片桐は、30年以上も犯罪を繰り返し、刑務所を出たり入ったりしている。
    それは何故なのか…。
    いつも読む本よりもページ数が少なめなのだが、5人の目線から映し出される主人公の生き様が壮絶で、非常に読み応えがあった。

  • 久しぶりの薬丸作品。ホワイダニットミステリーの最高峰! モノローグを紡いだ構成は見事! いやぁ、これは完全にやられましたね。無条件に手に取って欲しい一冊。

  • 読みやすい。知らぬ間に読み終えてしまった。
    人生の半分を刑務所で過ごし、それにも意味がある。
    犯罪はよくないが、意味がある犯罪。
    主人公に感情移入してしまうようなストーリー。形は間違ってるかもしれないけど…愛を貫き通す…主人公にとってかけがえのない一番幸せな時間。その時間のために人生かけて守りたかった。
    初めて薬丸岳さんの作品を読ませてもらったが、心がなぜかほっとする、温まる。最後の最後、涙なしでは読めない物語

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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