ゆめこ縮緬 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041081990

作品紹介・あらすじ

愛する男を慕って、女の黒髪が蠢きだす「文月の使者」、挿絵画家と若い人妻の戯れを濃密に映し出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女の記憶を描く表題作他、密やかに紡がれる8編。幻の名作、決定版。

感想・レビュー・書評

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  • これで皆川作品は4冊目の読了となりました。

    初読みは昨年の1月、読み終えてとても理解出来たと言える境地に達せなかった自分の日本語力の未熟さと読解力の乏しさに打ちのめされたのを昨日のことのように覚えています。

    それから約1年半が経過し、その間に300冊前後の本を読んできましたが、まだまだ追いつかないです。

    時代設定は大正から昭和初期、8編の短編がおさめられています。

    ○文月の使者
    ○影つづれ
    ○桔梗闇
    ○花溶け
    ○玉虫抄
    ○胡蝶塚
    ○青火童女
    ○ゆめこ縮緬

    どの作品も現実と幻の境がわからない程にどこか霞がかかったような趣があり、未熟な私にはまだまだ理解するまでには至りません。

    それでもページを捲る手が止まらないのは、自分の中に皆川作品を読み込める力を求めるある種の欲望のようなものがあるのだろう。

    幻想的な世界観、私が知らない言葉の魅力、日本語の、日本文学の深さに酔いしれました。

    説明
    内容紹介
    ミステリと綺想の女王が紡ぎだす、禁忌と官能に満ちた世界

    愛する男を慕って、女の黒髪が蠢きだす「文月の使者」、挿絵画家と若い人妻の戯れを濃密に映し出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女の記憶を描く表題作他、密やかに紡がれる8編。幻の名作、決定版。
    内容(「BOOK」データベースより)
    闇に包まれた中洲を舞台に、生者と死者の黒髪に秘められた恋を紡ぐ「文月の使者」、奔放で美しい継母に、少年が見世物小屋で見た原色の記憶を重ね合わせる「桔梗闇」、挿絵画家と若き人妻の交流を濃密に炙り出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女が垣間見る血族の秘密を描く表題作など、大正から昭和初期を舞台に綴る、官能と禁忌に満ちた8篇。「日本屈指の幻想小説集」と名高い名作を、詳細な解題を収録して完全復刊。
    著者について
    ●皆川 博子:1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁・旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)を、『恋紅』で第95回直木賞を、『開かせていただき光栄です‐DILATED TO MEET YOU‐』で第12回本格ミステリ大賞に輝き、15年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。著作に『倒立する塔の殺人』『クロコダイル路地』『U』など多数。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    皆川/博子
    1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁―旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU』で第12回本格ミステリ大賞を受賞した。2012年には、その功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、15年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 幻想とはなんと魅惑的なのだろうか。
    この時間をいつまでも感じていたいと願ってしまう。

  • 美しかった。どこまでが現実でどこまでが幻想なのか分からない世界観。
    文月の使者、玉虫抄が好きだった。

  • 「文月の使者」
    淀み川に浮かぶ女枕、女に扮した美貌の男、切り落とされた長い黒髪…と和の耽美を詰め合わせた前半からどう話が進む?と読み進めていくと思いもよらない方向に転がっていく短編。皆川博子先生の耽美、幻想イメージからするとちょっと予想外のストーリー展開だが面白い。

    「玉虫抄」
    時を超える母と娘の幻想譚。読んでいる間、瑞々しくもどこか重たく甘い桃の香りが漂う気がしてくる。

    「ゆめこ縮緬」
    どこか陰鬱な印象を受ける蛇屋の空気にここで何かあるのでは、と構えていると蛇屋を「気味が悪い」と避けていた母方の家系の所業の方がおぞましいという…これもある意味予想を裏切るストーリーか。

    全体的に「この人物の正体は…繋がりは…」と考えながら読み、当たる部分もあるが明確な答えは出ていない物が多く、自分の想像は合っているのか外れているのか。
    なんだか夢の中の世界に居たような気分になる。

  • 皆川博子二冊目。前回読んだ『倒立する塔の殺人』よりも幻想色が強くて読みづらかったけど、それに退屈さを感じることは全くなく、重厚感のある短編をそれぞれ深く味わうことができた。

    どのお話も戦前の近代日本を舞台にしたものだから現実味のない感じにはならない。むしろ現実の中に潜む異質がその幻想をより一層濃く仕立て上げている。とある中洲を舞台にした「文月の使者」から始まり、その後の数話は中州から離れるが、最後の二篇で戻ってくる。そして最後に収録されている表題の「ゆめこ縮緬」ではこの短編集がまさしく一つになるという仕掛けがあって思わずぞくりとしてしまう。
    物語自体は純粋な美しさはない。登場人物たちは己の欲を満たすために動き、生死が交差する話が多い。けれど、皆川さんの紡ぐ言葉は美しい。語彙が豊かで艶っぽく、かつ繊細に一つ一つの描写を表している。その対比が、この物語の中毒性のような部分を生み出しているのではないかと思う。
    中でも「影つづれ」と「桔梗闇」が好きだった。玉藻前は知らなかったけれど、その伝説について語る「影つづれ」には引き込まれた。

  • 表題作含む8編短編収録。皆川博子さんが紡ぐ幻想的な物語は絢爛豪華な闇色。死と血と官能に彩られた美しい漆黒の花が誘うように咲き乱れ、蔦が繁るようにして物語を織り上げる情念が読み手を絡め取る。どの作品も絶品。甲乙付け難いけれど「文月の使者」が一番のお気に入り。一度読んだらもう戻れない皆川ワールド。暗黒耽美な世界をぜひ。装丁も美しく、飾りたくなってしまう一冊。

  • ずっと手に入らなかった短編集が18年ぶりの復刊!「文月の使者」はアンソロジーなどで既読だったけれど、何度読んでも鏡花風でとてもいい。というか解説にもあったけど全8編すべて泉鏡花風を意識して書かれていたように思う。大正~昭和初期の和洋混在の風俗、書生さんや女中さん、お金持ちには妾がいて当然、そして乳母やばあやのいる生活。

    精神病院のある「中洲」が舞台になっているものがいくつかあり、どの短編でも医者はだいたい冷酷非道という共通点があるのだけれど、最終話の「ゆめこ縮緬」で全部が繋がって、鳥肌。連作短編というわけではなく独立した短編として読んでいたので、思いがけないオチがついて絶妙の構成だった。

    「影つづれ」は玉藻前の物語が、「桔梗闇」「ゆめこ縮緬」は西條八十の詩が効果的に使われている。頽廃的でエロティックで残酷で、この「和もの」幻想譚は、多方向に展開する皆川ワールドの一方の頂点だと思う。世代的にももうこういう文章を書ける作家は今後出てこないんじゃなかろうか。

    ※収録
    文月の使者/影つづれ/桔梗闇/花溶け/玉虫抄/胡蝶塚/青火童女/ゆめこ縮緬

  • なんとも言い表せない複雑な気持ちで読み終えた。理由の分からない妖しい夢を見たみたいな、ひとときの幻想に足を踏み入れたような短編集だった。
    聞き慣れない言い回しも出てくるし、生者と死者の境目が曖昧で、すぐあちら側の世界に連れて行かれそうになる。それなのにとても読みやすい点に驚く。
    幾人かの登場人物に業の深さを感じて、重さを静かに受け止めていく読書だった。八作品、読み進めるほどにハマっていく深みがあり、どれが良いというのが選べない。それぞれ主人公の見えている景色が違って、それぞれの地獄がある。
    いくつか同じ中洲を舞台にした話があるのが良かった。いろんなモノやヒトが集まってくるその土地を覗いてみたい気がした。

  • 「文月の使者」が印象的だ。中洲の煙草屋で話をしているだけなのに、男なのか女なのか、生者なのか死者なのか、境界が分からなくなってきて、どうにも妖しい。
    他の話も、ただぼんやりと読んでいても話が頭に入ってこない。流れるような美文なものだから騙されているような気分になってくる。なんとも妖しい一冊だった。

  • 耽美。好き。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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