いまさら翼といわれても (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.11
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本棚登録 : 4255
感想 : 239
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041081648

作品紹介・あらすじ

奉太郎が省エネ主義になったきっかけ、摩耶花が漫画研究会を辞める決心をした事件、えるが合唱祭前に行方不明になったわけ……。〈古典部〉メンバーの過去と未来が垣間見える、瑞々しくもビターな全6篇!

感想・レビュー・書評

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  • この作者のデビュー作が「氷菓」だとは知らなかった。最初からハイクオリティだ。古典部シリーズは、最初アニメで見た。画面もきれいだったが、その内容の密度の高さにも驚いた。高校生たちの心理をよく描いてあって、その心理の綾を衝く推理も面白かった。高校生には高校生の毒があるのもリアルな感じがしたものだ。「やらなくていいものはやらない」とうそぶいているくせに、ついつい人のために頭を働かせてしまうクールなアニメの折木奉太郎がそのまま小説の中にいる。6篇の内、4編は折木の視点、2編は伊原摩耶花の視点で展開する。折木の小学校時代のエピソードが出てきたり、伊原のマンガ家になりたいという夢が一歩進んだり、千反田えるの家の跡継ぎの問題やらが出てきたりと、小説の中でも時はつぎつぎと流れている。折木の推理は相変わらず鮮やか。普通の人はこうはいかない。それにしても高校生もいろいろ大変だ。

  • 〈古典部〉シリーズ第6弾は、古典部の4人それぞれが語り手となる短編集。
    第1弾目の「氷菓」から彼ら4人の高校生活をずっと追ってきて、本書では彼らの今まで語られなかった一面を知ることができます。

    「鏡には映らない」
    中学の卒業制作の時にとったある行動によって、同級生に誤解されてしまった折木。
    同じ中学だった伊原がその真相を解き明かす。
    実は折木はヒーローだったなんて、かっこ良すぎます。

    「わたしたちの伝説の一冊」
    伊原が漫研をやめたその裏に、こんな凄まじい出来事があったなんて。

    「長い休日」
    奉太郎が省エネ主義になった理由は?

    少しほろ苦く重めで、悩みを抱えた高校生の物語から、心に刺さるところや学ぶことがたくさんあります。
    謎を解いたあとに残るさわやかさとか、必要以上に深入りしないところとか。

    そして、作者の米澤穂信さんのあとがきがまたさり気なくて、いいです。

  • 古典部シリーズ最新作。
    今までは千反田に苦悩と呼ばれるものが今までなかったので,
    最後の章はとても驚き胸が苦しくなってしまった。
    えると奉太郎が苦悩をどんな風に決着をつけるのだろうか…。

  • 古典部シリーズ6作目
    「遠回りする雛」以来の短編集
    シリーズの中でも特にビターでほろ苦い話が多め。
    古典部4人の心の変化や成長を感じると共にこの後どうなっていくのかわたし、気になります!
    ホータローのモットーの原点となった「長い休日」がマイベスト

  • 短編集ですごく読みやすかったです。
    この本を読む前に原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」を読んでいて、選挙関係のお話の始まりだったのでちょっと読むのが憂鬱でしたが(これは自分が悪い)その後の章からはすらすら読む事ができました。

    いまさら翼といわれても。確かにこの話は学生の人に多く当てはまる現象だなと思いました。自分の人生を振り返ってみると野球を小、中、高と続けていてその後に就職だ、進学だなど、何かやりたい事はないのか?などと聞かれるケースが多々あった。その時は今まで野球しかしてこなかったから、他の選択肢が何も見えなかった。千反田さんとは違う状況かもしれないが、これからも野球を続けていくんだという盲目的な心理に陥っていて、引退した後は「はい、今から君の好きな事、やりたい事、を選んで人生を決めなさい。」といわれても。何をしていいのかさえ分からなかった。
    自分の人生のレールを引き過ぎて、特急列車にしかならないよりも、各駅停車でゆっくりと。いろんな路線に可能性を見出して走っていこう。
    ってあの頃の自分に言いたい…

  • 古典部員、それぞれが主人公とした短編集。

    短編なのに、内容濃いめでガツンとした読み応えが好みでした。
    表題作「いまさら翼といわれても」は、なかなか考えさせられるラスト。決めるれた人生から解き放たれるって幸せや解放感だけではすまない、なんて考えも及ばなかった。
    決めるれた人生が幸せなのか不幸なのかは他人が決められることではない。

  • 再読。表題作もいいが、摩耶花が語り手となる二つの話が謎解きも含め面白く好み。古典部の4人だけでなく脇の登場人物までもきちんと描かれてるのがこのシリーズの良さ。読み終えて寂しい。

  • 〈古典部〉シリーズの6作目兼最新作読破しました!
    今作は時系列はバラバラだけど、今までの話の補足や登場人物たちの人となりを読み解く上で大切なお話ばかりの短編集でした。

    今回は伊原さんしてんの作品が2点ありました。そのうちの一つでは、前作でいつの間にか退部していた漫研を退部するまでが描かれており、謎が解けてスッキリしました。もう1つでは、シリーズでは初めて伊原さんが「探偵役」をしていて、いつもとは違うストーリーの進め方や視点が非常に面白かったです。

    普段かなりドライに見える折木の小学校時代や中学時代の話では、読んだ後折木への印象が変わりました。

    最終章『いまさら翼といわれても』では、あらすじ的にはまたいつもみたいな謎解きかなとも思ってたんですけど、謎解きのあとの千反田さんと折木の絡みが、千反田さんの人生における分岐点的な話且つその後がすごく気になる形で終わっていました。謎解きに埋もれがちではありますが、彼らもまだ高校生。この先の人生について考える機会の多い年頃で、自分の進路について悩んでいた過去を思い出しながら読みました。
    最新作が益々気になる形で終わっており、発売が待ちきれません。

  • 6つの短編というか、エピソードを通じて、古典部の4人の大人の階段を登る姿が美しい。

    生徒会長選挙の不正に対する里志、中学卒業制作物に纏わる奉太郎の言動、中学の英語教師とヘリコプターを巡る推理、漫画研究会の分裂と摩耶花の想い、えるの家の手伝いを手伝う奉太郎の心理、合唱祭のえる、それぞれに奉太郎が絡みながら、奉太郎のやらなくて良いことはやらない、やらなければいけないことは手短かにというモットーの謎に迫る。奉太郎の休日は誰かが終わらせてくれるという姉の言葉の意味もわかる。

    もっと教養があれば、と奉太郎は言うが、高校2年にしては、それぞれが教養を身につけている。自分の高校時代と比較してもだ。奉太郎の感想文は稚拙さがありながらも自分自身の考えが表現されている。摩耶花の漫画も荒削りながら表現力がありそうである。里志の政治力も眼を見張る。えるは日本の文化に相当詳しい。私も高校時代にバンドをやったり、絵を描いたり、小説を書いたりしたが、どれも中途半端だった。

    古典部の4人は、それぞれが強いと感じる。強い人というのは、人に優しい。表面的な優しさではない。そして他人を許せる度量がある人が強い人だと思うのである。そして信念を持っている。
    そういう人でいたい。

  • 前作「ふたりの距離の概算」から文庫版ベースでなんと7年ぶり。自分の読書歴としても5年ぶりの古典部シリーズ。お久しぶり、とわくわくしながら開いたら短編集でした。ううん、長編読みたかったなあと言うのが率直な第一印象。

    トリックがすぐ思い当たる作品もありやや物足りなさもありましたが、ラストを飾る表題作でガツンとやられた感じです。うん、持ち前のビターさを存分に残しつつ話が大きく動き出そうとするこの感じ、大作ならではです。

    まさに「あとがき」にある通りの位置づけの作品、今後に俄然期待が高まります。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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