逃げ出せなかった君へ

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041079454

作品紹介・あらすじ

新卒でブラック企業に入社してしまった3人の同期、大友、夏野、村沢。早朝から深夜にわたっての個人宅への飛び込み営業を命じられ、帰宅も叶わず連日会社に泊まり込みを余儀なくされる毎日。心身共に疲弊しきった3人は、ある日思い立って深夜の居酒屋に向かう。非人間的な毎日のなか、一杯の生ビールで久しぶりに人間に戻った気持ちになれた3人だったが、部長の過酷な追い込みにあった夏野は――。
やる気のない居酒屋のアルバイター、定年の日を迎えた男、暴走しがちな池袋警察署交通課員……。夏野の選択はすれ違うだけのはずだった人々の人生をも変えていく。

感想・レビュー・書評

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  • 2019年作品。NHKでのドラマを先に観て、関心を持ち原作を読みました。ドラマは原作のテイストを残して、少し違う作品になっているなあと感じました。原作は、よりハードな一面があるなあと感じました。社員を追い込むブラック企業は恐ろしいとは思いながらも、私が社会人になった40年前は、ここまでではないにしろ結構ブラックに近い会社が多かったような気がします。滅私奉公と言う単語が生きていたなあと思い出しました。読んで感じたことは苦しい状況を共有した仲間は、大事だし素敵な存在だと言うことかなあ。私にも新卒で同期だった連中と未だに20代の頃のような付き合いをしていますから。

  • 心が痛くて痛くて仕方なくなりながら、最後の章は涙をポタポタ流しながら読み終えました。
    絶望的で壮絶なブラック企業に勤めていた3人の同僚。その中の一人である「夏野」を中心に6つの人生を描いている。
    最初は次元が違う世界の話かなと思ってたけど、いや、ちょっと分かるぞと思ってしまった自分が嫌だなと思いながら、読み進めました。色々書くとネタバレになると思うとなかなか感想が書きづらいけど、最後はやるせない気持ちと温かな気持ちで、繋いだ見えない縁という奇跡を見せてもらった気がしました。やっぱり、人の温かな思いに勝るものはない、と思う。度々、作中にビールが出てくるのですが、本当に美味しそうで。キンキンに冷えた世界一のビールを友人と飲みたくなった。

  • 逃げてもいいんだ。

    逃げることも 一つの選択。

    勇気なんだ。

    石の上にも三年。

    このことわざは ある意味 残酷です。

    今まで このことわざは

    当たり前のように 使っていました。

    出来ない奴は 根性がないいんだ。

    そんなことは 無いと

    教えてくれた一冊です。

    登校拒否 大いに結構。

    今回のキーワードは ビールですね。

    ドラマ化されて

    先に 見てしまったんですが。

    原作も 楽しめました。

    もう一度 ドラマも 見てみたいです。

  • とても良かった。
    前にテレビで「六畳間のピアノマン」という題名のドラマがあり、とてもいいドラマだったので原作も読んでみました。
    原作もとても良かったです。むしろ原作の筋の方が良いかな。どっちもかな。
    自分にも心当たりがあるような、蓋をしてなかったことにしてしまいたくなるような辛い経験を、乱暴に蓋をせずに回収して、癒してくれるような優しさに溢れているような、そんな感じ。
    人は窮地に陥ったとき、名も知らぬ通りすがりの誰かのたった一言で命が繋がれることがよくある、ということも思い出しました。
    私はスーパードライ派ではないけど、仕事終わりのキンキンに冷やした中ジョッキは、確かにスーパードライがよく似合うと思います笑

  • それぞれ主人公が異なる短編だけど、ブラック企業に働く夏野の自殺から始まる。同期の友人や夏野の父親、その父親を助けた警察官や夏野に人生を救ってもらった教師など。

    一つ一つはありきたりでよくあるような話かもしれないけど、いろいろ繋がって面白かった。
    きれいに繋がりすぎてるくらい。

    一つの出来事を複数の視点で描かれる作品は好きだな。(「EVEシリーズ」とか「冷静と情熱のあいだ」を思い出した。)

    何年か前にも、その人の価値は死んだ後に悲しんでくれる人の数で決まるみたいな文章を見たけど、人に価値なんてつけなくていいのに。

    ここに出てくるブラック企業に比べるとウチはマシだけど、周りのメンバーは洗脳されてるように思えてくる。
    自分も逃げ出したいけど、生きていくための武器が必要だ。って考えるだけじゃなくて、行動に移さないとな。

  • 一話目読んで、気が重くなった。ブラック企業の短編集なのかと思って読むの嫌だなーっと思ったら違っていた。
    ある一人の逃げ出せなかった君にまつわる連作。どの章も泣ける。
    それぞれの章の登場人物がきちんと描かれていて、薄っぺらじゃない。

    一話目は救いのない話だったけど、最後まで読んで少しは救われた気がする、そんな小説です。

    何となく手に取った本だけど、よい本だった。他の作品も読んでみたいと思う。

  • ブラック企業で奴隷のように働く3人の新卒社員。
    日々の仕事に疲弊し、人間としての普通の生活をも手放す3人は、ある日の夜中に居酒屋チェーンで飲んだビールに、特別な思いをいだいた。

    連作短編ですが、最終的にはひとつの話にまとまっている作品。

    3人の働いていた会社や、また村沢の派遣された先の会社のようなブラックな会社に務めることになったら悲劇。
    逃げなければいけません。
    私は古い人間なので、上司からの叱責はある程度は必要と思っていますが、あれはダメ。
    壊れていく人達の姿を想像するだけで、苦しい気持ちになりました。

    それぞれの章に、色々な思いを持ちました。
    負けなかった人達の姿が眩しい。
    無敵=ナンバーワン、無双=オンリーワン。
    誰もがその人1人だけ、唯一無二の存在なのです。
    著者のメッセージを強く感じました。

  • 主題はブラック企業の話、だけど、それは1話目だけで、あとの話はその周囲の人々の話だった。

    些細なことでも、誰かに影響を与えている、
    誰かが必ず見てくれている、と感じた。

    1話目が読むのが辛かったけど最後まで読んでよかった。

  • タイトルもいいしブラック企業の話ということで期待していたけれどイマイチ。構成や話の詰めが甘い。単純。

  • 友人からおすすめされて読んだ。
    ブラック企業の社員から始まり、その周辺の人物たちの短編集。
    最初の話が重すぎて、これおすすめするのどんな気持ちだよ…と思っていたら、最後は綺麗な終わり方でとても良かった。

    他者の死に罪償感を覚えている人が、どうやって生きていけばいいかという話。
    亡くなった人の良い面だけを語ると、本来の人物像から離れていって、結局自分が楽に生きるための方策なんじゃないかと思ってしまうし、
    はたまた「こんなことしてもあいつは喜ばない」とか勝手に死人の意思を仮託して自分の思う方へルート取りすることへの嫌悪感。
    もう何も変わらない死者と、変わっていってしまう生者はどう付き合っていけばいいのか?
    この辺りについて何か明言せずに、分からないなりに生きていくしかないよね〜というスタンスなのがすごく誠実だと思った。死んだことある人間っていないからな。
    あと色んな視点からの物語があるけど、自死した人物視点のものがなかったのも、周りの苦悩を一緒に感じられる気がしてよかった。

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著者プロフィール

安藤祐介
一九七七年生まれ。福岡県出身。二〇〇七年『被取締役新入社員』でTBS・講談社第一回ドラマ原作大賞を受賞。同書は森山未來主演でドラマ化もされ、話題を呼んだ。近著に『本のエンドロール』『六畳間のピアノマン』『就活ザムライの大誤算』などがある。

「2023年 『崖っぷち芸人、会社を救う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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