永遠についての証明

著者 :
  • KADOKAWA
4.13
  • (35)
  • (39)
  • (17)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 271
感想 : 49
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041072196

作品紹介・あらすじ

特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能を持つ瞭司に惹きつけられるように三人は結びつき、共同研究で画期的な成果を上げる。しかし瞭司の過剰な才能は周囲の人間を巻き込み、関係性を修復不可能なほどに引き裂いてしまう。出会いから17年後、失意のなかで死んだ瞭司の研究ノートを手にした熊沢は、そこに未解決問題「コラッツ予想」の証明と思われる記述を発見する。贖罪の気持ちを抱える熊沢は、ノートに挑むことで再び瞭司と向き合うことを決意するが――。
冲方丁、辻村深月、森見登美彦絶賛! 選考委員の圧倒的な評価を勝ち取った、フロンティア文学賞3年ぶりの受賞作!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • マリモさんの書評を読んで手にしました。

    瞭司の命を削って出来たプルビス理論。この理論の為に瞭司は生まれてきたのかと思ってしまう。ここまで捧げないと理論と言うのは見えないのか。

    熊沢と佐那、小沼先生に出会い同じ言葉が通じて無邪気に喜ぶ瞭司が孤独に苛まれていく姿をみるのは辛い。
    でも自分が熊沢と佐那と同じ立場だったとしても同じようなことしか出来なかっただろうなと分かるからなおさら辛い。
    ただ数学をしたかっただけ、そんな無邪気で少年のような瞭司は自分を受け入れてくれない状況には弱かった。
    こんな状況は実際にもあるんじゃないかと思ってしまった。
    天才は生活なんてせずに天才を続ければいい。生活なんて凡人がすればいい。
    こんな住み分けができればいいのに

    • マリモさん
      raindropsさん
      こんばんは!コメントありがとうございました。
      私のレビューから読んだ下さったとのこと、とても嬉しいですー。
      アルコー...
      raindropsさん
      こんばんは!コメントありがとうございました。
      私のレビューから読んだ下さったとのこと、とても嬉しいですー。
      アルコールに浸かりながら、自分だけが見える世界に孤独にのめりこんでいく姿が痛々しくて。
      私も、自分でも熊沢たちと同じように逃げてしまっただろうなと思ったんですね。それでも彼には誰か理解者がそばにいてあげてほしかったとも。
      切ないお話でした。
      2023/10/09
    • raindropsさん
      マリモさん、コメントありがとうございます。
      自分だけが見える世界を言葉にするにはアルコールがなければ無理だったんだろうか、と思ってしまいます...
      マリモさん、コメントありがとうございます。
      自分だけが見える世界を言葉にするにはアルコールがなければ無理だったんだろうか、と思ってしまいます。そうだったら悲しい。
      アルコールが理解者の代わりになってしまったんですね。
      本当に切ないお話でしたね。
      2023/10/10
  • 第9回野性時代フロンティア文学賞受賞作品。数学で天才的な才能を持つ瞭司。特別推薦で大学に入るが、その才能に周囲は驚きと嫉妬を隠せない。同期の熊沢、佐那とともに難問に挑んでゆくが、天才であることで、本人にその気は無くとも人間関係は歪んでしまう。味方がいなくなり、孤独のまま瞭司は難問の証明を試みるがアルコールに身体を蝕まれ、若くして亡くなる。17年後、熊沢は彼のノートを遺族から受け取り…。
    最初からすぐに引き込まれた。比喩など含め、若さ、みずみずしさ、表現がとても素晴らしい。森の中、星を見るシーンなどその空気を感じました。輝いていました。破滅に向かうところと、瞭司に対しての教授の、特に熊沢の心を対比してよく書けてて、内容も良かったですがその文章に圧倒的にやられました。

  •  初めての作家さん。というのも当たり前で、これがデビュー作。本当にこれがデビュー作?と思わせるストーリー構成とその内容に舌を巻いてしまった。

     天才数学家の瞭司は、小学生の頃に数学に目覚めてからは数学にしか興味がなくなってしまった。捲し立てるように数学についてばかり話す瞭司から同級生はみんな離れていってしまう。教師を上回る才能に、やがて教師からも疎ましく思われ、完全に孤立してしまう。
     高校生になった瞭司。瞭司の才能に気付いた先生が、知り合いの大学教授の小沼に瞭司のことを紹介すると、特別推薦生として大学に入学することになる。そこには瞭司の他にも特別推薦生の熊沢と佐那がいて、瞭司は初めて語り合える人と出会うことができ、喜びを感じていた。熊沢と佐那を初め、周りの人たちは瞭司の才能に嫉妬を感じながらも瞭司のことを認めていく。
     やがて瞭司の才能は、教授である小沼までもが嫉妬を抱くようになり、小沼は現役に戻りたいと瞭司から離れていき、佐那や熊沢までもが離れていくことになる。

     数学会を大きく揺さぶる論文を残し、若くして亡くなってしまった瞭司。瞭司を救えなかった後ろめたさを抱えながらその論文を読み解こうとする熊沢。熊沢を通した現在と、瞭司を通した過去の世界が交互に繰り広げられていく。

     数学に関してはチンプンカンプンな私でも大いに楽しむことができた。瞭司が大学生の頃は、やっと瞭司も報われたなあと嬉しく思ったが、その才能ゆえにまたしても瞭司は運命に翻弄されていってしまう。
     これまで辛い思いをしてきたのに、なんでまたこんな思いをしなければならないのかと、暸司の境遇に打ちひしがれた。
    ラスト。やっと、本当にやっと瞭司が報われたんだと、数学を通して瞭司の存在そのものを証明できたんだと胸が熱くなった。それも、一番大切だと思っていた友達の手で。そして、田中からのプレゼントがまた素敵だった。
    3人が出会った頃のような爽やかな風が、心の中で優しく吹いた。

  •  ある一人のずば抜けて天才の数学者と、優秀な数学者二人の友達、恩師の先生の話。
    数学は好きだけど、文系の私にはあまりにもわからなさすぎて、数学の詳しい所は深入りできないし、そもそも何をいっているかまるでわからかった(´∀`=)けれど、それでもやめられなくなる面白さでした。

    天才というのは、人が見えていない景色がやはり見えているものなのでしょうか?嫌な奴だったら、一人で悦に入って突き進む場合もあるのかもしれないけれど、この主人公は純粋で、ただただ数学が好きで、初めて数学の話が通じた場所で、友達と数学の話をしながら共に考えるのが楽しくて仕方ない愛すべき青年。

    次第に友達や恩師と、離れていき、孤独感を募らせ、数学者としての焦りもあり、壊れていってしまいます。友達の気持ちもわかるし、天才本人の気持ちも想像はできる。

    天才数学者のみる世界をほんの一瞬でいいから見てみたいと思いました。きっと、そこは、自然が豊かで光に溢れている、人間の手の及ばないところなんでしょうね。

    一気読みでした。恩師の小沼先生が特に好きでした。

  • 本屋で表紙は見たこと有ったんですが、わけわかんないイケメン兄ちゃんがドヤ顔で写っているわ、妙にキラキラしているのでてっきり自己啓発本めいた小説かなんなんて思ったのでスルーしていました。まさかこんなにいい本だったとは。完全に盲点でありました。
    先日剣道表紙に惹かれて読んだ「夏の陰」が個人的にツボだったので、他も読んでみようと思ったらなんとこのキラキラ表紙。おいおいって思いました。
    数学界を舞台にした青春群像劇なのですが、秀才の悲哀と天才の絶望を両面から書いていてメチャクチャ切ないです。
    自分の突き進むべき道に誰の足跡もついていない快感。そして誰も理解者がいない圧倒的な孤独。天才の影になり嵩む劣等感と妬み。天才の限界を見たと感じた時に湧きおこる醜く昏いよろこび。
    天才と秀才、秀才は天才の才能が得られるのならば悪魔にだって命を売っただろうし、天才は秀才の心が理解できないままにいつまでも一緒に居られると信じた。先駆者の圧倒的な孤独。それを受け止められなかった悔恨が読者にも伝わってきます。
    フェルマーの最終定理も何言ってんだか分からないけどめちゃくちゃ面白かった。これもまた数学なんて全然分からなくて大丈夫。絶対面白いから。
    それにしても数学って人間臭い学問なんだなあって、フェルマーの最終定理の時に思いましたが、これ読むと猶更思います。
    所で結構売れた本だと思うのですが、2作目が剣道って売れ線絶対はずしてる気がします。僕はうれしかったけれど、世間的にはマーケティングの失敗だったりしないのでしょうか。次次回作も期待大。

  • コラッツ予想の一般証明は誰かに任せて、個別解計算にドハマリしています。それは本書を読んでから。任意の数列を目にするたびごとに自動的に計算プログラムが起動するほどになりました。内容はさておき(楽しく読んだ憶えあり)、強く影響を受けた本と胸を張っていえます。大学受験数学を乗り切れたのは本書に拠るところが大きいかもしれない。

  • 再読。やっぱりめちゃめちゃ好き。
    周りの人の生き方さえも変えてしまうほどの才能をもった数学の天才。
    夭逝した未来から始まる物語が切なすぎる…
    でも数学に選ばれた人たちが見る世界は美しくて、その美しさに救われた。

  • 数学にとんと疎い自分でも、この物語を通して天才数学者たちが見る世界を垣間見、数学という学問がもつ美しさと一種の残酷さに触れることができたような気がして。それぐらい表現に血が通っていて、説得力があった。この作品がデビュー作って、やはり圧倒的才能。

  • 文系で数学の才能ゼロの私には、主人公の見ている景色を見ることも理解することもできないけれど、この本を読んで少しだけ想像することができた。知らない世界を知ることができた。最後の熊沢さんの発表にもグッときた。

  • 私は高校時代に物理学の国際大会に参加し、自身に満ち溢れていた。しかし、本物の才能を目の当たりにすると、その道を志すことをなんとなく辞めてしまい、自分が諦めた道を自分より才能がある人が進んでいると冷めた目で見てしまう。そんな私と大学入りたての熊沢はよく似てるな感じました。数学は好きだけど、才能のない自分がやったって仕方がない。そんな気持ちが常に頭を過ぎる。
    瞭司はそんな私や熊沢が憧れた天才。この物語は瞭司が遺したノートを熊沢が6年ぶりに取り出してきたところから始まる。そして熊沢視点の現在と、瞭司視点の過去の両視点で物語は進んでいく。全体として、とても上手い構成だと思った。瞭司が何故死んでしまったのか、熊沢は瞭司の遺した「コラッツ予想の証明」を理解することができるのか、物語を進めていけばいくほど気になってどんどんページを進めてしまった。
    個人的には、瞭司の数学の世界に浸る瞬間が好きなシーンだった。狂気を感じるほどの数学者というだけでなく、友達と一緒に数学をやりたいという人間的な瞭司が私にとってはとても魅力的なキャラクターであった。瞭司が数学に没頭する時間に何故か目頭が熱くなってしまった。「寝食を忘れて何かに没頭する」ということの美しさを感じたように思う。
    最後熊沢の、「ミツヤノート」についての講演のシーンで、瞭司の見ていた世界と熊沢の見ていた世界がリンクしたとき、思わず涙してしまった。
    熊沢は瞭司に手を引かれ、数学の世界に身を置くことになるが、私もそんな手を引いてくれる人がいたなら、今は元々好きだった道に迷わず進んでいたかもしれない。
    この小説を読んで私も数学・理論物理の世界に没頭したいと強く感じた。

全49件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

いわい・けいや 小説家。1987年生まれ。北海道大学大学院農学院修了。2018年『永遠についての証明』で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞(KADOKAWAより刊行)。著書に『文身』(祥伝社)、『水よ踊れ』(新潮社)、『この夜が明ければ』(双葉社)などがある。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩井圭也の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×