ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041071885

作品紹介・あらすじ

生後16ヶ月で自閉症と診断された息子ジェイコブ。けれど特殊教育は本当に彼のため? もっと人生を楽しんでほしいと、自ら保育所を立ち上げた母キャサリン。やがてジェイコブの才能が開花し奇跡を起こす。

感想・レビュー・書評

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  • レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。

    この物語は2歳で自閉症と診断され、3歳の時に専門家に「彼が16歳の時に自分で靴ひもを結べるようになっていあたらラッキーだ」と言われたインディアナ生まれの少年ジェイクのことを、その母親で保育所を経営していたクリスティーンが書き綴ったものです。

    自閉症の子どもはある分野では著しい遅れが見られる反面、別の分野では非常に高い能力を示す場合が多いそうです。
    母親のクリスティーンは、ジェイクがパズルを速くやれることと引き換えに、息子は女の子をデートに誘ったり、採用面接の相手と握手を交わすことができないとわかり、一時絶望します。
    しかし彼女は自閉症児のための「リトル・ライト」の経営をして、多くの預かった自閉症児とジェイクの才能を引きのばすことに3人の子どもを抱え、自ら病に苦しみながら、夫のマイケル他多数の人々の支援により、尽力します。

    そしてジェイクは、小学校には行かず10歳で数学と科学の才能を認められ、大学からオファーを受け、奨学金を受けて入学し、ノーベル賞も夢ではないと言われ一躍マスコミにも取り上げられます。
    そして、世界最年少の宇宙物理学者となります。
    この本には、母のクリスティーンが、どういう風にジェイクたち3人の子どもと、預かった自閉症児たちを育ててきたかが、書かれています。

    クリスティーンの行動方針は「ジェイクが好きなことがやれるようにすること」。
    「ふつうの子どもらしい生活を送れるようにすること」。
    「そして子どもたちが大好きなことをやらせてあげれば、そこから生まれる独立心や創造力は、決して無駄になることはないのです」と語っています。
    そして、「わたしがこの本を書いたのは、ジェイクのストーリーはすべての子どもに当てはまる話だと考えるからです。息子の才能は特別なものですが、彼の話を書くことによって、誰もが持っているそれぞれの個性や特技がもっと注目されるようになればよいと思います」と結ばれています。

    こんな、素敵なメッセージでいっぱいの本ですが、ここに至るまでの著者の苦労は計り知れなかったと思います。
    この本を読んだら誰しも、ジェイクとクリスティーンに声援を送らずにはいられないと思います。
    そしてジェイクの成長と大学での大成功は大変、感動的です。
    私たちも、著者の行動を、少しでも見習って、学校や家庭で子どもや自分自身の長所を伸ばしていけるようになるといいと思いました。

  • 面白かった。面白いだけでなく、人間にとって、とても重要な事のヒントが書かれているような気がして、本を読むのを止めることが出来なかった。

    2歳で重度の自閉症と診断され、文字を理解することも話すことも永遠に出来ないだろうと言われた子供ジェイク。

    しかしジェイクは、両親の並外れた教育方針と努力によって天才的才能を開花させ、10歳で大学に入学し12歳で物理学の研究者となり、近い未来にノーベル賞を取るだろうと言われるまでになった。そのストーリーはそれだけで興味をそそる。この本は、その全ての過程を母親自らが書き記したもの。

    すごいと思ったのは、著者である母クリスの観察力と、そして行動力、決断力、バイタリティー。

    彼女は始め、自閉症児に対する公的な支援やセラピーを受けたが、専門家達が決めたその方針が本当に息子にとって良い結果をもたらしているのか、息子は本当は何をしたいと思っているのかをしっかりと観察していた。
    話すことも行動で示すことも出来ない息子の小さな小さなサインをクリスは見逃さなかった。

    セラピスト達は自閉症児の、"出来ないこと"を出来るようにする訓練ばかりを行っていることに気づいたクリスは、息子の"出来ないこと"ではなく"出来ること"に目を向け、息子の可能性を決め付けることなく、好きなことを好きなだけやれる環境を与え続けた。

    出来ることを伸ばし、やりたい事を思う存分やらせてあげると、他の"出来なかった"社会的行動も出来るようになることにも気づく。

    基本的にこの方針で、ジェイクは自閉症の中に閉じこもってしまうことなく、社会生活を送れるようになった。

    そして、自分の子どもが自閉症というだけでも大変なのに、自ら保育所を運営し、さらに自閉症児のためのスクールも開いて、同じように困っている人達に手を差し伸べた。クリスの考え方、やり方は他の自閉症の子供達にも驚くべき効果をもたらした。このようにして、自閉症児の親を含めたコミュニティを作り、みんなで支え合って強くなった。

    天才児であるジェイクは勿論だけれど、このお母さんもこんなにすごい人が本当にいるの?と思うほど、頭が良くて慈悲の心に溢れている。

    どこにも正しい治療法や教育法が示されていない道なき道を、自らの観察眼と家族の愛で切り開き、その道の専門家がノーと言うことも、正しいと思えば突き進んだ。専門家達が間違えていたと言うことを証明するには、結果しかない。そして、クリスはジェイクという天才を育て上げるという最高の結果でそのやり方が正しかったということを、結果的に世界に示した。

    この奇跡のような話の中には、私たちがジェイク程天才でなくても、自閉症でなくても、学ぶことが出来る大切なことが散りばめられていた。生きることに困った時、子どもを育てることに困った時など、折に触れて読み返したいような本だった。
     

  • 2歳で重度の自閉症と診断され、読み書きはおろか自分で靴紐も結べるようにはならないだろうと言われていたジェイコブ ・バーネットは、9歳で大学に入学し、いつかはノーベル賞も夢ではないと言われている

    この本は、ジェイコブの母親クリスティン・バーネットによる自叙伝である

    絶望の淵に立たされた彼女がひたすら息子の可能性を信じ、試行錯誤をを繰り返しながら息子を取り戻す様子が生き生きと描かれている
    時に公教育を厳しく批判しながらも、自分の直感を信じ希望を捨てるのではなく、探し求める道を選択したクリスティン

    それは、できないことを訓練してできるようにするのではなく、その子の才能を引き伸ばすこと、親が子供の好きなこと・打ち込めるものを真摯に受け止め、シェアすることだ
    常に、ジェイコブがジェイコブでいられる場所を求めている姿には感動した

    彼女の素晴らしいところは、その情熱と愛情が3人の息子にだけ注がれるのではなく、経営している保育所の園児や月1回開催しているリトル・ライトに集まってくる自閉症児たちにも惜しみなく注がれているところだ

    9歳で大学に入学し、天才児として雑誌や新聞・TVで取り上げられるようになっても、彼女のスタンスは、揺るぎなかった

    私がジェイクの驚くべき能力に圧倒され、それに酔ってしまっていたら、私は彼にとって良い母親にはなれなかったと思うのです
    わたしの行動指針はたった二つーージェイクが好きなことをやれるようにすること、普通の子供らしい生活を送れるようにすること、それだけです

    あとがきで著者は言っている
    「彼は何だってできますよ」とジェイコブの物理学の教授が言っているのに対して
    わたしが息子の先生たちに望んでいたのは、このような可能性を示してくれることでした
    それはすべての先生や親にも子供だけでなく、自分自身にも当てはまることです

    まさしく家庭や学校現場の基本に据えられなければならないことだと思う



  • 【感想】
    ジェイコブ・バーネットは8歳で大学に入学した天才少年である。
    彼は2歳で重度の自閉症と診断され、読み書きはおろか、自分で靴紐を結べるようにすらならないだろうと言われていた。
    彼は2014年現在、インディアナ大学に在学し、数学、物理学、宇宙物理学など広範囲にわたる分野の勉強をしながら、自閉症児のためのスポーツプログラム「ジェイコブズ・プレイス」という慈善活動に携わっている。

    飛び級というと、両親や教育機関が子どもの可能性を開花させるべく先へ進ませる、いわば積極的な試みのように思える。だがジェイクの両親は、実はそうした才能育成を望んでいなかったというのだから意外だ。両親はあくまで「普通の子と同じように」幸せになって欲しかったため、早いうちから大学へ行くことは、ジェイクの将来の可能性をつぶしてしまうと考えたのだ。

    「一生しゃべれない」と診断されたジェイクが充実したキャンパスライフを送れるようになったのも、そうした「普通の子と同じ教育」の成果である。
    いくら天才少年であっても、一日中訓練とセラピーに明け暮れていると心身が不調に陥ってしまう。また、学習机に向かうばかりでなく、芝生で遊び、川に入り、友達とお泊りするような健全な少年時代を送らなくては、思い出が何もないまま大人になってしまう。
    大切なのは社会生活の遅れを取り戻すための訓練ではなく、本当に価値のある体験を積むことであり、それには健常児も障がい児も異なるところはないのである。

    筆者「チェスの天才ボビー・フィッシャーは、子どものときに起きている間じゅうチェスをしろと強制されなかったはず。おそらくほうっておかれれば自発的にいつまでもチェスをしていたに違いありません。そうなったときにこそ、チェスボードを閉じて外に遊びに行きなさいと言うのが親の役目だと思うのです。子どもには同じ年頃の友達が必要です。一人ぼっちのままでは、自分が誰であるかを発見することはできないのです」
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    私が思わずウルっときてしまったポイントは、309ページ、ジェイクを大学に通わせるか迷っていた筆者が客観的な判定を求めて、神経心理学者カール・ヘイル博士のもとで、ジェイクに知能検査を受けさせるシーンである。彼女はテストがすぐに終わると思っていたのだが、これがなかなか終わらない。待合室は殺風景で、いつ終わるかわからないため外に出ることもできない。待ちくたびれて非常に退屈していた彼女の前に、ようやくジェイクが出てきた。そして傍にいたヘイル博士は奇妙なことを聞いてくる。待合室で何をしていたかと。
    退屈で居心地が悪かったことを白状した彼女に、博士は次のような言葉を投げかけたのだ。
    「これで5年生の教室に座っていなくてはいけないジェイクの気持ちが分かったでしょう。彼にとってふつうの学校に通うことは、窓の外を眺めながら、あのガソリンスタンドでコーヒーが飲めたらいいなと考えることなのです。このまま普通の学校に通わせておくことは、最悪の選択です。彼は今、非常に退屈しているし、このままの生活が続けば、彼が持っている素晴らしい想像力が全て失われてしまいます」
    彼は、筆者がジェイクを大学に行かせるべきか迷った挙句にここへ来ることを知り、ジェイクがふだんどれほど退屈しているかをわたしに実感させるため、ふだんはもっと色々なものが置いてある待合室をわざわざ片付けて殺風景にしていたのだ。

    なんて素敵な思いやりなのだろうと、また、なんてジェイクは愛されているのだろうと感じ、人々の慈愛の心に瞳を濡らしてしまった。
    天才児童に必要なのは、子ども時代の健全な思い出であり、熱心に物事に取り組むことができる環境であり、そして、自分を理解し愛してくれる大人たちなのだ。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    【本書のメモ】
    スキルのムラ:自閉症の子どもは、ある分野では著しい遅れが見られる反面、別の分野では非常に高い能力を示す場合が多い。スキルが同じぐらいのレベルに揃わず、発育段階のあちこちに散らばっている子どもが、自閉症スペクトラムと診断される。

    「ジェイクが自閉症と診断された瞬間から、家族は恐ろしい何かに取りつかれてしまったようになります。(略)自閉症が少しでも改善するかどうかは、子どもが5歳になる前に周りがどれだけ介入したかにかかっているというデータがあるため、自閉症児との生活は、今のうちに、もっと、もっと、もっとたくさんのことをやらなければ、という時間との闘いなのです」

    遅れを取り戻すための課題をやらせることも大切だが、ジェイクには、裸足でどろんこ遊びをするような時間も必要だと、筆者の直感が訴えていた。そこで、昼にセラピーなどの課題、夜に子供らしい遊びの2つを取り入れる生活を始めた。この選択こそが、ジェイクがこちらの世界に戻ってきてくれるきっかけになったと、筆者は今でも本気で信じている。

    プリスクールの教師が、「ジェイクは字が読めなくなるだろうから」といって、彼が気に入っているアルファベットカードを持ち込み禁止にしようとしたとき、クリスティンはある疑問を抱いた。「なぜみんな、この子たちができないことにばかり焦点を当てるのだろう?なぜできることにもっと注目しないのだろう?」そう考えた彼女は、特別支援クラスをやめさせ、自らの手でジェイクを教育することを決心した。

    筆者の夫も筆者自身も、ジェイクの早熟ぶりには驚かされる毎日だった。とはいえ彼は、会話の面ではあまり進歩が見られなかった。
    自閉症児の母親としていちばん大変なことは何か、とよく聞かれるが、それは子どもがママ大好きと言ったり、抱きついて甘えたりしてくれないことである。

    自閉症児とその家族のための夜間クラス、「リトル・ライト」を開設し、彼らができないことにしつこく取り組み続けるのではなく、彼らがやりたいことから始めようとした。保育所の健常児たちにしてきたように、得意なことに焦点を当て伸ばしてあげることを重要視した。
    「大好きなことに打ち込んでいると、それ以外のスキルもおのずとアップする――これもまた、わたしが繰り返し実感してきたことです」

    プラネタリウムを見るために大学を訪れ、教室の最前列で教授に質問し始めたジェイクを見て、筆者ははっきりと確信した。彼は、その驚くべき頭脳で、世の中に大きな貢献をする人間になるだろうと。
    そして天文学に接する時間が長くなればなるほど、ジェイクの内向性は影を潜めていった。大好きな天文学について誰かと話せる環境ができたことで、ただしゃべることと、コミュニケーションをとることの違いを学んでいったのだ。

    わたしたちは、自閉症児を「失われた子どもたち」だと考えがちである。治療しなければならない存在だと考えてしまう。しかし、自閉症児を治療するということは、科学や芸術を「治療」することに等しい。リトル・ライトに来る子どもたちには、その年齢の子どもには絶対に無理だと言われるようなアクティビティやプロジェクトをどんどんやらせている。

    「チェスの天才ボビー・フィッシャーは、子供のときに起きている間じゅうチェスをしろと強制されなかったはず。おそらくほうっておかれれば自発的にいつまでもチェスをしていたに違いありません。そうなったときにこそ、チェスボードを閉じて外に遊びに行きなさいと言うのが親の役目だと思うのです。子どもには同じ年頃の友達が必要です。一人ぼっちのままでは、自分が誰であるかを発見することはできないのです」

    ジェイクは8歳にして、IUPUIの授業に出席し大学生と変わらない勉強をしていた。そんな彼が10歳になったとき、ラッセル博士から大学に入学しないかとの誘いが来た。
    筆者にとってジェイクが大学に進学することなどありえないことだった。大学に行ったらどうやって友達をつくるのか?今いる友達との関係はどうなるのか?そして、彼の子ども時代はどうなってしまうのか?ジェイクが自閉症の世界から出てきてくれて以来、筆者はジェイクが「普通の子と同じように」幸せになってもらうことを望んでいたのだ。

    そののち彼は大学に入学する。
    周囲の学生と接していく中で、ついに本当の会話ができるようになった。今日はどうだったと聞けば、昔のようにスケジュールを分刻みで答えるようなことはなく、友達と過ごした時間について語ってくれるようになったのだ。

    今やジェイクは、Honers College(各大学で選ばれた優秀な学生向けのコミュニティ)で、複数のスタディグループを主宰し、他の学生たちに勉強を教えている。数学や科学はジェイクにとってあまりにも力強く美しい存在で、周囲の人たちにもその美しさを伝えたくて仕方がないのだ。

    「息子の才能は特殊なものだが、彼の話を書くことによって、誰もが持っているそれぞれの個性や特技がもっと注目されるようになればいいと思う。(略)すべての自閉症児が天才だと言うつもりはないが、子どもの内なるきらめきに注目し、それを伸ばしてあげれば、かならず想像もしなかったほどの発展が見られるのだ」

  • 9歳で大学に入学し、将来のノーベル賞候補と言われる、天才少年ジェイコブ・バーネット。
    アスペルガー症候群の彼をどのように育てたのか?
    母親による自叙伝。

    読み応えがあった。

    我が子が自閉症と診断された、親の衝撃は想像がつく。
    だからこそ、ものごとがいい方向へすすむたび、ともに感動し、泣けてしまう。

    我が子だけでなく、運営する保育所を通して、すべての子どもの可能性=Sparkを信じ、伸ばしていくクリスティン。
    限界を決め、矯正を主眼とする公的支援や教育に従わず、自力でなんとかするその行動力と信念がすごい。

    しかも長男の自閉症だけでも大変なのに、追い打ちをかけるようにさまざまな問題が襲いかかる。
    それでも負けないタフさに脱帽。

    意見が対立することがあっても、ともに支え合う夫マイケルも素敵。

    前向きな力をもらえる1冊。

  • 我々は自分の物差しで物事を測ってしまいがちだ。我が子が「自閉症」と客観的に診断され医学的には「文字を読むことさえ難しい」と医者に言われたらどうするだろう?諦めてなすがままにする?出来る限りの治療をする?本書では母クリスティンはどちらも選ばなかった。

    常識を疑い我が子を信じたクリスティンは、その行動力と信念を持って見事ジェイクの能力を開花させた!12歳の小さな宇宙物理学者。既に将来のノーベル物理学賞候補の呼び声も高い。母の素晴らしさもさることながら、それと同等に当時9歳の子供の理論を一笑に付すことなく真摯に向き合ってその頭脳を認めた教授たちにも称賛を送りたい。

    好きなことを伸ばす、子供時代を大切にする。当たり前のことだが、自閉症治療では当たり前ではないこと。天才かもしれないし天才でないかもしれない、でも子供の気持ちを尊重し大切にしたい、そういう親としての姿勢をクリスティンとマイケルから学ばされた。

    ジェイクが人類史上名を遺すほどの天才だったから出来たこと。普通の自閉症患者には当てはまらない。変な希望は与えないでほしい。もしかするとそのとおりで、これはたまたまだだったのかもしれない。でも実際に起こったということは発生確率はゼロではなく、ゼロではないということはまた起こるということだ。奇跡も何度か起これば常識になるのである。

  •  幼くして自閉症と診断され、16歳でくつひもが結べたらラッキーだといわれた子ども。しかし、その母親はあきらめずにその子どもを観察して熱意をもって育てた。その結果、その子がもつ数学、宇宙理論に関する高い能力が開花する・・・。この本は、その母親の手記。
     読んでいて心打たれたのは、この母親がこの子だけではなく、人間全体に対して非常に暖かいまなざしをもっていること。下手すれば、子どものサクセスストーリーに終始してしまいそうな要素がたくさんあるんだけど、そういうところが鼻につかずに温かい気持ちになれたのは、それが大きいと思います。オビの情報によると、映画化されるらしいですが、この母親のまなざしをしっかりと軸に据えた映画にしてもらえたらいいなあと思うところです。【2019年3月16日読了】

  • 出来ないことでなく、出来ることに注目する
    楽しい経験に満ちた毎日
    人生とは五感を通じた経験の積み重ね

    なんていろんな子供がいて、可能性があるんだろう。

    親としての行動指針
    ジェイクが好きなことができるようにすること
    子供らしい生活を送れるようにすること

    2019.11.4

  • 9歳で大学に入学、そんな天才児がアメリカに。
    彼は2歳の時に重度の自閉症と診断される。
    彼はもう字を読めるようにはならないと言われてしまうけれど、
    母親は彼を取り戻すために奮闘し続ける。
    そう、天才児になったジェイクも凄いけど、彼の興味のある事を伸ばしていこうと信じ続け努力し続けた母親が素晴らしい。
    保育所も運営しながら、同じように自閉症の子をもつ家族の為にお金も取らずに家に招き入れ面倒をみてあげたり。
    もちろん協力するご主人も素晴らしい。
    こういう両親だったからこそ、もしかしたら埋もれてしまっていたかもしれないジェイクの才能が開花されたんだと思う。

    大学も研究者も認めた彼の才能はこの先どうなるのか興味深い。

  • 9歳で大学に入学した天才数学少年、ジェイコブ・バーネットの母親の手記。
    2歳で自閉症と診断され、字を読めるようにはならないだろうと言われてからの、家族の戦いの物語。

    とにかく母親の愛と信頼が桁外れで泣けた。どれだけ異常だと言われても、特別だと言われても、彼女が1番大切にしたのは「彼が子どもらしくいられること」、「家族揃って楽しく過ごせること」。
    子どもたちの「きらめき」を最大限に伸ばしてあげること。

    フィクションでもそこまでないぜってくらいアクシデントまみれの生活なのに、苦しい素振りはひとつも見せない肝っ玉母ちゃん。

    数学のオープンプロブレムを解いて論文を発表することよりも、母親にとって奇跡だったのは、「自閉症の息子が、自分にしか見つけられない四葉のクローバーで自分を元気づけようとしてくれたこと」。

    こういうの読むと本当に、子育ては信頼と忍耐の世界だなと思う。
    子どもの無限の可能性を信じて、決して折らないこと。「専門家」に何を言われようと、勇気と信念を持って、子どもが羽を広げられるよう励まし続けること。
    「正しさ」に惑わされてしまったとき、クリスティンが背中を支えてくれる気がする。


    TEDxTeenの映像も見たけど、ジェイク思った以上にいい子だった。愛情たっぷり受けて育ったんだろうなという優しさが滲み出ていた。学ぶだけではなく、ひたすら考える。考えることからあたらしいものは生まれる。

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著者プロフィール

アメリカ・インディアナ州在住。1996年に地元向けの保育所「エイコーン・ヒル・アカデミー」を立ち上げた。現在は自閉症及び特別な支援が必要な子どもとその家族のためのコミュニティ・センター「ジェイコブズ・プレイス」を夫マイケルとともに運営している。

「2018年 『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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