秘密をもてないわたし I Have No Secrets

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041070956

作品紹介・あらすじ

ジェマ、14歳。重度の脳性まひで話せず、動けない。ところが殺人犯の告白を聞いてしまい、なんとか誰かに伝えようとする。勇気と感動のサスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 里親と暮らす14歳のジェマは、重度の脳性麻痺で、体を動かすことも話すこともできないため、自分の思いを伝える術を持たないまま成長したが、周りの人からは一方的な聞き手として秘密を打ち明けられることも多かった。ジェマは、彼女の介護ヘルパーサラの恋人ダンから、彼自身が、近所に住む青年ライアンの殺人事件の、未だ見つからない犯人であるとほのめかされるが、それを他の人達に伝えられすもどかしく思っていた。外見は好青年であるダンの正体をサラに伝える方法を模索しているとき、ママとサラの関係がぎくしゃくすることが増え、サラは突然行方不明となる。

    コミュニケーションの手段を持たないために、意思表示ができなかった少女が、それを獲得し、自己表現する喜びを知り、周囲を動かしていくサスペンス仕立ての物語。




    *******ここからはネタバレ*******

    しっかりとインプットし、考える力もあるのに、アウトプットする方法のない無力感が、サスペンスであるために増幅されて感じる。
    自己表現できないことで、周囲から無力な存在と扱われがちな様子も描かれ、胸が痛むが、家族を含め、周囲の協力者が、愛情深く忍耐強く彼女や、他の里子と接しているのがとても救いになっている。

    ジェマの双子の姉ジョディは、まだ同じ14歳なのに、一人でジェマと会いに来たことに驚く。養親がいるのなら、せめてドアの外まででも付き添わなかったのか?それとも英国はそういう国なのか?????
    幼い頃に生き別れた肉親と合う、しかもその相手が、自らコミュニケーションが取れない状態とあれば、並大抵の勇気ではないと思うのだが。

    ジェマが話す術を手に入れたことに安心するとともに、多くの人たちが自分の言葉を伝える方法を得て欲しいと思える話。


    199頁から200頁の初め。
    パパとケイトは遺体確認のために出かけている筈なのに、いきなりケイトが「ママやパパといっしょにキッチンテーブルを囲みながら」話をし始めるのに違和感。「帰宅後」くらいつけておかないと、場面転換がわからないのではないか?


    内容は平易だけれど、殺人や誘拐・拉致などの犯罪を扱っているので、高学年以上にオススメします。

  • 児童小説らしく分かりやすい文章で、内容も複雑じゃない。脳性麻痺の少女が殺人を打ち明けられたというあらすじから、本気のサスペンスを期待したら物足りないと思う。
    でもこの本にはたくさんの感情が詰まっていて、いろんな気持ちを味わった。
    心無い言葉には腹が立つし、疑わしい男には恐怖を感じ、家族が大好きだという気持ちが溢れる。パパの選んだ誕生日プレゼントはさすがだなあ。
    相手を思ってしたことに喜んでもらえたら嬉しい。ママへのあの「イエス」には胸がいっぱいになった。
    主人公はまだ十四歳で、この先いくつもの可能性があるんだと思えてよかった。

  • わたし=ジェマは十四歳。重度の脳性まひで、二歳からロレイン夫妻の家に里子として迎えられて暮らしている。
    家族は他に、六歳のフィンと九歳のオリビア、住み込みの介護ヘルパーのサラ。
    身体を動かすことも話すこともできず、生活の全てを介助に頼っているけれど、目も見えるし音も聞こえている。頭の中も心の中も普通のティーンエイジャーと変わらない。

    わたしが誰にも話せないとわかっているからか、ときどき人に言えない秘密を打ち明ける人がいる。
    でも、まさか、殺人を打ち明けられるなんて。
    なのに、それを誰にも伝えられない…


    書評で見て手に取った本。
    スリリングなストーリーの中に、障害のある子供たちの生活の様子を自然に織り込んで、とても興味深く読ませてもらった。

    四肢麻痺のリンカーン・ライムの上(?)をいく、脳性麻痺のジェマが、障害に苦しみ悩みながらも、学びたい、伝えたいという意欲を失わないのが素晴らしい。
    ジェマの双子の姉妹・ジョディが、実際にジェマに会った時、動揺のあまり逃げ出してしまったエピソードも、リアリティを与えている。

    これまでたくさんの物語に心の栄養をもらってきたのと同様、この本では、いってみれば“出来ない事だらけ”のジェマが勇気や希望を教えてくれる。
    魔法や異世界やスーパーヒーローを楽しむように、ハラハラドキドキしながら、自然に障害者への理解が進むといいな、と思う。

    それにしても、あえて障害のある子供を受け入れる里親制度、介護ヘルパーが家族のように暮らしていることなど、日本ではまだまだ考えられないことばかり。
    障害のある人も、たまたまそうではない人も、普通に一緒に暮らせる社会って、こんな形の先にあるのかなぁ…

  • 重度の脳性麻痺で話すことも身の回りのことすらもできないジェマ、14歳。里親の元で同じく里子のフィン(自閉症)とオリビアと暮らしている。介護ヘルパーのサラは一緒に暮らしながら介護してくれている。何も話せない、何もできないジェマだが、読むことも考えることも状況の理解もちゃんとできる。サラも里親である両親も理解している。ただ、サラのボーイフレンドのダンは、ジェマは何もわかっていないと思っている。そして、他の人の前では優しい顔を見せているが、ジェマと二人きりの時はジェマを馬鹿にし本当の顔をのぞかせている。ジェマが誰にもそれを伝えられないことをわかっているから。
    そんなジェマの近所で殺人事件が起こる。そして大好きなサラが行方不明になる。ジェマは、その犯人がダンであることに気づきどうにか皆に知らせたいと思うのだが…。

    ほとんど動けないジェマが息を吸う事でパソコンを操り会話ができるようになる。実際に今、そういった装置が開発されているという。ちょうど、この本を読んでいるころに参院選で舩後靖彦氏が当選し、眼で指し示すことで会話をすることが大きく取り上げられていた。
    そういった技術開発もすごいけれど、様々な障害を持つ子どもを積極的に里子として受け入れる英国の制度に関心した。
    日本はまあまだだなあ、と思ってしまう。

  • 脳性まひで体を動かすことも意思疎通もできない14歳の少女ジェマ。優しい里親のもとで幸せに暮らしていたが、ある日、介護ヘルパーのサラの彼氏ダンが、自分が犯した殺人を打ち明けた。そのことを誰にも伝えられないジェマ。苦悩しているうち今度はサラが行方不明となり…。
    サスペンスとしても上質。そして私たちが抱きがちな偏見を痛快に打ち破る作品。

  • 伝えたいことが溢れているのに、何一つ伝えられないもどかしさ。両親とサラの存在がなければ絶望していたかもしれない。オリビアやフィンの行動もリアルで良い。

  • 脳性麻痺で体が殆ど動かせない少女が殺人犯を知ってしまう。発信出来ない障害を乗り越え、犯人を伝えるまでのサスペンス風物語。

    少中学生くらいがターゲットなのかな。文章はかなり易しく、さくさくと物語が進みます。
    ハッピーエンドで終わりますが、自閉症やかんしゃく持ちの子供のエピソード等ちょっとしんどいシーンもあります。大人が読んでも学ぶことできる良書だと思います。読書感想文にぴったり。

    最終的に主人公は鼻呼吸で意思を伝える手段を獲ます。
    この本を読んだ後には、実際に閉じ込め症候群に陥った患者がまばたきのみで書き上げた『潜水服は蝶の夢を見る』もおすすめです。

  • 重度脳性まひで自分の意思を伝えられない14歳の少女ジェマが主人公。ある日、大好きなヘルパー・サラの恋人から恐ろしい秘密を聞かされる。

    ものすごくスリリングだった。一気読み。
    ジェマの一人称で進むので、ジェマの葛藤やもどかしさが、無知な私に障害への理解を直接響かせる。

    本筋ではないのだけれど、全然完全ではないジェマの里親のママが弱くてがんばってて尊敬する。障害のある子の3人の里親、それを支える制度こそが成熟した国家の証明。技術の発展に出会うチャンスを得て、コミュニケーションの手段を得ることができたジェマの幸運が当たり前の社会になりますように。


  • 脳性まひで自分の意思では何一つ体を動かせないジュマ。でも知能はあるため、頭の中ではおしゃべり。話せないので、ジュマに重大な秘密を打ち明けてしまう人もいる。それこそ殺人すらも。
    ヘルパーのサラが行方不明になって、怪しい人物を伝えたいけど…。推理ものとしては途中展開が進まないのがモヤモヤしたが、意思が伝えられる手段や、自分の未来に希望を持った姿が描かれていたので爽やかに終われていたと思う。

  • 自分のハンディに対する絶望と希望、殺人事件に関するサスペンス、里親や生き別れた姉妹という人間関係、わたしが自分を取り巻くものに打ちのめされながらも前に進んでいくのにすごく力をもらう作品。
    発売3年なのに絶版…!勿体ない〜〜涙

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著者プロフィール

いまイギリスで、最も注目を集めている新人作家。10代から重度障害者を支援するボランティア活動をはじめ、現在は、障害を持つ児童を教える養護学校の教諭をつとめる。障害を持つ人々が、知能や知覚に問題がないのに、ただコミュニケーションができないというだけで人格を認められず、差別を受ける現状に心を痛め、障害者のことをもっとよく知ってもらいたいと児童小説の執筆を決意。2017年に本作を発表後、高い評価を得て、今年また別の作品を発表する。イギリス、ハートフォードシャーで、夫と子どもとともに暮らしている。

「2019年 『秘密をもてないわたし I Have No Secrets』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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