人殺しの息子と呼ばれて

著者 :
  • KADOKAWA
3.72
  • (12)
  • (25)
  • (16)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 260
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041067345

作品紹介・あらすじ

悲しい過去を背負いながら、彼はいかに生きたか。
殺人者の息子に生まれた25年の人生とは?

凄絶ゆえに当時報道も控えられた「北九州連続監禁殺人事件」。
その加害者の長男が「音声加工なし」で事件のありさまや、その後の苦悩の人生を語り、全国的な反響を呼んだ。
彼の人生を支えた後見人への取材などを加え、番組プロデューサーがこのたび完全書籍化。


<目次>

序章 生きている価値

第一章 鬼畜の所業――北九州連続監禁殺人事件

第二章 「消された一家」の記憶

第三章 やっとなんとか人間になれた

第四章 冷遇される子供たち

第五章 消えない記憶と、これからの人生

終 章 俺は逃げない

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 凶悪殺人犯に育てられた息子さんのお話なのですが、
    自分もこのようなことをされたらたまったもんじゃないと深く共感出来ました。
    自分がどれだけ幸せに人生を過ごしていたかがよ〜くわかる本です。

  • 虐待・無戸籍、差別や不条理…それだけではなく少年自身が犯罪を犯した場合には存在する受け皿が、犯罪者の家族にないというパラドックス。ある意味で彼らは犯罪者よりも冷遇されている。彼は、親の血が流れているという恐怖や過去へのトラウマを抱えながらも困難を乗り越えて、死ぬことや親・環境のせいにすることは逃げだとし、生きていて良かった、という。「みんな多分忘れている…当たり前に帰れる家があって、当たり前にご飯が食べられて、当たり前に仕事ができて…その当たり前の日常・時間が、実はものすごく大切なものなんやってことを。」

    「彼」の考え方の明るさや前向きさもさることながら、彼の未成年後見人となった教師の言葉からは学ぶことが多い。子供は親を選べず、問題を起こす子供は、育った環境や体験に基づき考えや価値観を持っている。だからこそ、頭ごなしに叱り、価値観を押し付け、こちら側の正義を振りかざすことはせず、まずは彼らの考えを認めてあげる必要がある。重要なのは、自立できているかどうかであり、こちらから施してあげること、積極的に関わってあげることはしない。困ったときに相談ができる相手がいる、というそのこと自体が大事なのだと。

    「自分の家族環境が複雑やから、恵まれないから、周りの環境が悪いからって言っても、そこから先、自分で頑張って生きていく時間の方が長いわけでしょ。人生話四分割で見た時に、4分の1程度の出来事で、残りの4分の三を損するようなことにして欲しくない」という言葉には、自分がいかに甘えているか、乗り越える努力をしていけるのは自分しかいないのだという現実を突きつけられる。彼みたいに、新しい自分なりのページを作っていくポジティブな強靭さと優しさを忘れないでいたい。

  • 【殺人者の息子に生まれた 25年の壮絶人生】


    親ガチャ失敗。そんな言葉が一時期話題になっていた。

    世間を賑わした北九州連続監禁殺人事件。その犯人が逮捕される裏で犯人の子どもたちが警察に保護されていた。
    本作はフジテレビ『ザ ノンフィクション』のチーフプロデューサーである著者が、この番組の収録で兄に行ったインタビュー内容をありのままに記した1冊である。
    そんな彼の人生は親ガチャ失敗なんて言葉では言い表せないほどの壮絶な内容だった。

    彼は被害者達と同様に別宅で監禁、虐待されており、戸籍もなかった。
    学習能力も読めるのがひらがな、カタカナだけ。
    しかし世の中を知らない彼にとってはそれが当たり前だったため、何も疑問を持たず生きていた。
    その後保護された彼らは学校に通うことになるのだが、学力の問題で1学年下の3年生からスタートすることになる。
    幼少期に自然と学ぶであろう対人関係を経験していない彼は学校の集団に馴染めずにいた。
    どこからか彼の境遇を知った同級生から心無い言葉を投げられたこともあったという。

    その彼も高校生になり里親の元で暮らすようになるのだが、後に退学し里親からも飛び出してしまう。
    身寄りのない彼はホームレス同然の暮らしで仕事を点々とした。
    現在彼も成人になり一般企業に務め、結婚している。

    インタビューに答えることになったキッカケは、被害者でもある自分に無断で事件を特集した事へのクレームだったのだが、著者とやり取りを重ねていく中で信頼関係ができ、彼が自分の言葉で語ることができたことは結果よかったものの、中には数字の為に取材をするメディアもある為、複雑な気持ちを抱いた。

    親を選べなかった子どもが経験した人生と、強く生きようとする姿が描かれている。ぜひ読んでほしい一冊だ。


    こんなひとにおすすめ
    ・社会派が好きなひと
    ・子を持つ親
    ・ルポルタージュが好きなひと
    ・ノンフィクションが好きなひと

  • 子供は親を選べない。
    辛い子供時代を過ごした息子さん
    その弟さんとの考えと思いは違うと思うのですが、まだ20代 これから先の人生も見せて欲しいなと思いました。

  • 冷遇されている現状を変えるため、一例として学問的検討が必要だと感じた。
    その意味で弟の話も聞きたいと思った。

  • ノンフィクションも観ました。
    安易に感想や彼に言葉をかけるようなことはできません。
    ただこの先に明るい光があればいいなと願うばかりです。

  • ぱっと目をひくタイトルだ。「北九州一家監禁殺人事件」については、以前詳しく取り上げた本を読みかけたことがあったが、あまりに凄惨な内容に耐えきれず、三分の一も読めずにやめてしまった。本書によって、自分が読んだ部分よりもっとおぞましいことがまだまだ起こったのだと知り、愕然とした。

    まさに悪魔の所業としか言いようのないことを行った、その犯人夫婦の長男。何を思ってどう生きてきたのか。テレビ番組の長時間インタビューに応じるまでの経緯、発言内容、放映後のこと。番組プロデューサーによってわかりやすく丁寧に書かれている。簡単に「わかった」などととても言えないが、深く心に刺さるものがあった。

  • 壮絶だった。おもしろい、と言うのは憚られるけど、とにかく夢中になって一気に読んだ。
    もしかしたら私の記憶の中では一番と言ってもいい狂った事件で、その衝撃を今でも覚えているし、インタビューの番組もたぶん見ていたと思う。
    彼が父親と母親に対して持つ感情、ああこれが「血」というものなのかと思った。
    事件を理解してもなお心が狂わずに、むしろ健やかと言えるほどの慈悲を抱く彼の聡明さ。そしてそれすらも父親に似ていると悩み抜いて、、脱帽する。

  • この事件は酷すぎて胸やけがします
    親は選べないにしても運が悪すぎました
    生きづらくて苦労する子供が悲惨

  • 『子は親を選べない』
    たびたび耳にするその言葉を今までで一番強く感じる事となった読書時間だった。

    2002年の「北九州連続監禁殺人事件」
    事件当時まだ9歳だった少年は成長するに連れ、事件の全貌を知る事になる。

    殺人事件の内容についても記載されているが、はたから見ても凄絶極まりない内容で彼の心中を想像しただけでどんなにか辛く苦しかった事だろうと思う。

    現在25歳の彼が親を反面教師と捉え、思い遣りを持った青年になってくれた事が嬉しい。

    親子とは言え別々の人間だ。
    彼の真摯な生き方を静かに見守ってあげたいと心から思えた作品。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

フジテレビ情報制作局情報企画開発センター専任局次長。1967年、北海道生まれ。90年、NHK入局。報道番組のディレクターとして、『クローズアップ現代』や『NHKスペシャル』を担当。2004年に放送した『NHKスペシャル「調査報告 日本道路公団~借金30兆円・膨張の軌跡~」』で文化庁芸術祭優秀賞受賞など受賞多数。05年、NHKを退局し、フジテレビ入社。『とくダネ!』やゴールデン帯の大型特番を担当し、現在は、『ザ・ノンフィクション』のチーフプロデューサー。

「2018年 『人殺しの息子と呼ばれて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

張江泰之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×