ヒトラーの試写室 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 480
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041066850

作品紹介・あらすじ

1935年、20歳の柴田彰は活動写真の俳優を夢見るが、大工の父親は猛反対し勘当されてしまった。家を飛び出しオーディションを受けるが箸にも棒にもかからずあえなく挫折。だが、人手不足だった日独合作映画「新しき土」の特殊撮影助手の仕事にありつく。主任の円谷英二の情熱に触れるうち彰も仕事にのめり込み映画は見事に完成。ベルリンにも運ばれ、映画で人心の掌握と扇動を狙っていたナチス宣伝大臣ゲッベルスの心に刻み込まれる。日本は41年、ついに太平洋戦争に突入。軍部の要請から戦意高揚をねらった映画「ハワイ・マレー海戦」が製作されることになり彰も特殊撮影で参加。この作品もベルリンに運ばれ、丁度イギリスの権威を失墜させる為に映画「タイタニック」を製作したが、どうしてもクライマックスの沈没シーンが上手く撮影できないことを悩んでいたゲッベルスが目をつけ、彰がドイツに招聘されることになる。環境の違いから撮影は苦戦。日本に残した妻子を想う柴田だったが、ベルリンは戦火に……。意外すぎる歴史秘話に基づく、一気読みと感動必至の傑作エンタメ小説。

書評家から熱い賛辞が続々!

「すでに八〇年近く昔の話とはいえ、ネット上に巧妙につくられたフェイクニュースが流布している現在、映像によるプロパガンダは古くて新しい問題だと言える。この物語が単なる歴史を題材にした小説に終わっていないのは、このテーマに今日性があるからだ。」
タカザワケンジ(書評家) (解説より)

「特撮の舞台裏を描くことで戦争の舞台裏を描く、その試みには明らかに「ポスト・トゥルース」に象徴される現代社会の潮流――信じたいものを信じるために、事実に目をつぶる――が反映されている。あるいは、先の大戦を語ることへの過剰な情熱、過剰なフォビア(恐怖症)が渦巻く日本の空気が、ありありと。この小説が二〇一七年の今書かれたことには、意味がある。」
吉田大助(ライター)(「本の旅人」2018年1月号より)  

感想・レビュー・書評

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  • 松岡圭祐の作品はハマれるかどうかが全てだ。
    一番の理由は博識な情報量ゆえにある。その作品の世界に入り込めてワクワクしながら読み進められる時は、なるほどこういう背景があるのかなどと感心してしまう。逆に面白くないと思ってしまうとその博識ぶりが鼻について、物語はつまらないのに情報だけ満載してどうするんだよと思ってしまう。

    本作は残念ながら後者のつまらない方。戦前の日本映画の特撮のハシリが円谷英二と共に展開し、ドイツの絶頂期から敗戦までの変遷がゲッベルスを中心に描かれているが、どうにもワクワクしなくて面白くなかった。
    原因は主人公や他キャラクターの描き方がショボいからだろう。全然魅力的でない。いくら歴史上の有名人が何人も登場したところで、キャラが立っていなければ情報過多なだけの退屈な物語だ。

  • 松岡ファンとしては ハラハラ ドキドキで 一気に 読んでしまいました。

    歴史ものは 結果を知っているので ずるいとも 思いますが。

    でも 面白かったです。

    ナチスの最後
    長崎への 原爆投下。
    円谷さんの 戦後の 活躍など

  • 日本の特撮技術黎明期、父親に勘当された柴田彰は、日独合作映画「新しき土」の火山製作助手を皮切りに、特撮主任の円谷英二のもとで、戦意高揚映画「ハワイ・マレ-沖海戦」の戦闘シーン撮影助手を務め、映画は無事完成した。 その技術に目を付けたナチス宣伝相ゲッペルスは、敵国イギリスの権威を失墜させるプロパガンダ映画「タイタニック」製作のため、柴田彰をドイツに招聘することに・・・。<松岡圭祐サン>書下ろしの本作は、第二次大戦前夜から敗戦までの史実を背景にした、映画ファン注目の怒濤のエンタメ小説。

  • どこからが史実でどこまでがフィクションなのか不明だけど、細かな作業を得意とする日本人は特撮技術に優れてるんだろうな。海外にも認められて素直にうれしく思う。誇りに思う。
    寒天とか鰹節とか面白い。そんな技術で作られた映画、観たかったなー。

  • 題名のヒトラーはもちろん、彼の取り巻き、それに特撮の神様円谷英二、さらに原節子も登場。
    史実をもとにしたフィクションというが、どこまでが史実でどこからがフィクションだろうか。
    日本で特撮に携わった技術者の青年が、戦時下のドイツに渡り、ナチスの映画つくりを手伝うという数奇な運命をたどる。青年の特撮技術による映画には、ナチスの悪辣な陰謀が隠されていた。
    その陰謀を知ったドイツの映画人たちと青年の、ナチスに対する抵抗と戦い、そして彼らの家族に対する愛情の物語は、熱い感動とともに一気読みをさせる。

  • 第二次世界大戦中の日本とドイツの映画界を舞台にした小説。
    実際にあった史実と実際に作られた映画、そして実在する人物が登場する。とても緻密で大胆な物語だった。映画の特殊効果が民衆の心理操作に悪用されるという設定は、現代のフェイクニュースに通ずるものがあり単純な過去の話として片付けられない重みを感じる。
    松岡圭祐という作家はどこまですごいのだろう。好きになったのは最近だが、これからも作品を楽しみに待ちたい(もちろん旧作も読んでいかないと)。

  • 松岡圭祐さんの本は面白い。
    たまたま、米内光政を取り上げた本を読んだ後だったので、第二次大戦に突入する日本そしてドイツ、イタリアとの同盟のきっかけのの知識があったので、なお面白く読めた。
    今の時代も超えそうだが個人のメンツ、上の顔色を伺うこと無く、本当に日本のことを考え、未来を導き出してくれるリーダーに巡り会いたい。
    極小に拘らず、大局を見極め、冷静、且つ、大胆で適格な行動を取りたいものです。

  • ミステリとは言い難いが、寒天の輸出禁止の謎は目から鱗でした。そっかー。
    「キングコング」に「カサブランカ」。戦時下の映画製作の裏舞台は、理想と情熱と現実と打算のせめぎ合い。国家と組織と個人の思惑が巧妙に絡んでて、映画そのものよりよっぽどドラマティックだ。

  • 戦時中ナチスがタイタニックの映画を作っていたこと、ナチスと日本の合作映画もあったという史実をもとにこの小説が作られたらしい。相変わらず松岡さんは文庫で質が高い。ナチスの、イギリス軍機に病院船を反ドイツの鉄十字に偽装し襲わせ、特殊技術を駆使して鉄十字を赤十字に変換しその映像を上映し、集まった世界中の記者に嘘を吹き込む。そのアイディアは円谷のもとで働いていた日本人の技師の彰だった。ここでどのように難を逃れるのか、手に汗を握る展開でどんどん引き込まれ一気に読んでしまった。CGのない時代、寒天、鰹節まで使うとは!

  • またもや松岡圭祐の近現代ものの傑作。全く知らなかった史実にかなり興奮した。

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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