罪びとの手

著者 :
  • KADOKAWA
3.14
  • (4)
  • (15)
  • (36)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 164
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041065983

作品紹介・あらすじ

廃ビルで中年男性の死体が発見された。身元が判明しない中、葬儀屋が遺体を引き取りにくるが、葬儀屋・御木本悠司は、その遺体を目にした瞬間、刮目した。「これは俺の親父だ」。その偶然に疑問を持った刑事・滝沢圭は、単なる事故死と判断する本部に反発するようにその遺体に固執する。世の中を賑わす幼女連続殺人事件、葬儀屋の葛藤と苦悩、不遇な警察官を親に持つ刑事のトラウマ・・・・・・様々な要素が絡み合う中、意外な犯人と動機が明らかに! 平和な生活を犠牲にしてでも守らなければならない、刑事と葬儀屋の誇りとは・・・・・・慟哭の社会派ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  •  死んだ男は誰だ。死んだとされた男はどこにいる。
     父親から葬儀屋としての矜持を引き継いだ男は、死体を父親と認めて盛大な葬儀を執り行おうとする。一方、父親から刑事としての矜持を引き継いだ男は、死体を別人と見て単独で捜査を続ける。
     2人の男の矜持がぶつかり合うサスペンスミステリー。本編4章とプロローグに当たる零章の5章からなる。
             ◇
     廃墟となったビルで見つかった男性の遺体。警察は事件性なしと判断し身元不明のまま葬儀屋に引き渡すことにした。

     ところが遺体を引き取りにきた葬儀会社の御木本悠司社長は遺体を見た瞬間、思わず「殺したか」と呟いたあと、遺体は自分の父親の幸大だと言い出した。

     知らせを受け駆けつけた悠司の兄の昇一は、遺体を見て違和感を覚える。顔は確かに父親だが、どこかが違う。
     さらに生前の父親の希望に反して大々的に葬儀を執り行おうとする、弟の強硬な態度にも不審を感じていた。

     一方、事故死という本部の結論に釈然としない川崎署の滝沢が引っかかりを覚えたのは、遺体の壊れた腕時計だった。
     止まった腕時計が指し示す時間と検視官の出した死亡推定時刻にある2日間の差に注目した滝沢は、捜査終了という本部の指示に従わず、単独で調べることにした。

     この事件は本当に事故なのか、それとも殺人なのか。そして、そもそもこの遺体は誰なのか。
     葬儀が終われば遺体はすぐに火葬されてしまう。タイムリミットが迫るなか、滝沢の地道な聴き取りが続くが……。

         * * * * *

     これまで読んだ天祢作品とは違う作りです。

     まず主人公の1人である滝沢圭という刑事について。やたら眼光の鋭いニコリともしない表情と捜査優先の不躾ともとれる態度。いかにもハードボイルド風でイケメンっぽい。

     けれど、その滝沢にさほど魅力を感じませんでした。滝沢の言動は、タイムリミットが迫っていたとは言え、あまりに余裕がなさすぎる。

     天祢作品における刑事の代表格は真壁警部補でしょう(仲田蛍は別格)。
     愛想のなさは滝沢と同じですが、真壁の方が懐の深さがあります。いかつい顔をどうにか笑顔にしようと努力するなど柔軟性もあります。
     対して滝沢は直線的で融通がまったく利かない。一度、仲田巡査部長の薫陶を受けたほうがいいのではないかとさえ思うほどです。

     また、滝沢は女々しい。
     有能な現職警察官である父親に対する尊敬と反発が、滝沢の心を二分しています。父親を理解したいと同時に父親を超えたいという気持ちを捜査のモチベーションにするのは違うと思います。
     こんな器の小さい主人公にはエールを贈れません。

     もう1人の主人公は御木本悠司という葬儀会社の2代目社長。常に微笑を湛えたような穏やかな表情と冷静沈着で落ち着いた物腰など、滝沢とは対照的な人物として描かれています。

     傑物の父親の影響を大きく受けている点では滝沢と同じですが、御木本の方はエディプスコンプレックスなどとっくに卒業したようで、反発どころか逆に父親をフォローしようと動いているし、リスクを受け止める度量もあります。
     終盤まで御木本の正体がわからないため敵役としての役割でしたが、彼の魅力でこの作品は持っていたようなものだと思います。

     クライマックスシーンも大仰に過ぎました。
     葬儀会場内。衆人環視のなか滔々と披露される滝沢の名推理。固唾を飲んで聴き入る聴衆。まるで舞台劇を見るようでリアリティに欠けます。仲田蛍の謎解きとはあまりに違いました。

     そんなこんなで、少し引き気味のまま読了しました。こんな展開は他の作家ではアリかも知れないけれど、天祢涼さんの作品としては異質だったと思います。

  • ★3.5

    廃ビルで中年男性の死体が発見された。
    身元が判明しない中、葬儀屋が遺体を引き取りにくるが、
    葬儀屋・御木本悠司は、その遺体を目にした瞬間、刮目した。
    。「これは俺の親父だ」。
    その偶然に疑問を持った刑事・滝沢圭は、
    単なる事故死と判断する本部に反発するようにその遺体に固執する。
    世の中を賑わす幼女連続殺人事件、葬儀屋の葛藤と苦悩、
    不遇な警察官を親に持つ刑事のトラウマ…。
    様々な要素が絡み合う中、意外な犯人と動機が明らかに!
    平和な生活を犠牲にしてでも守らなければならない、刑事と葬儀屋の誇りとは…。


    身元不明のご遺体の引き取りに来た葬儀屋が
    このご遺体は自分の父親だと言う…。
    その時の態度…言葉に何か違和感を感じた刑事の滝沢…。
    とてもショッキングな出だして惹きつけられた。
    頁を捲る手が止まらずワクワクした読み始め。

    葬儀屋を舞台に、家族の絆。
    葬儀屋の矜持・刑事の矜持が緻密に描かれていた。
    時々、刑事の滝沢が作中の大きな4つの謎を
    丁寧に描いてて、それが何度も何度も続いた。
    ちょっと鬱陶しいなぁって感じてしまった

  • 葬儀社の息子が遺体引き取り時に、自分の父親だと気づくところから始まる‥読んだ記憶はあるけど、内容はイマイチ思い返せない。でも、確実に最後までは読めたので、☆3つです。

  • 面白かったんですよ。結末がわかるまでは。

  • 着眼点が諸々目新しく珍しく期待が膨らんだが、ムリクリ過ぎて後半急失速。

  • 使われてないビルから男の死体が発見され、身元がわからないと思ってたら死体をとりにきた葬儀屋が自分の父だという。そして「殺したか」と言った言葉に他殺説が抜ききれず1人捜査をする滝沢と殺したと言った御木本悠司。そして滝沢と同級生の悠司の兄昇一が死体を見て父じゃないと言い出して、、、
    幼女連続殺人事件とも絡まって犯人が誰?って思わせるところもおもしろいのに詰めが甘い気がしました。

  • 最後まで動機やトリックが読めないが、ちゃんと伏線が張ってありしっかり回収されます。
    登場人物にも魅力がありミステリーとしてハイレベルな素晴らしい作品。

  • 変死体が発見され身元不明のまま、葬儀社が遺体を引き取りにくる。遺体を目にした葬儀社の社長から「遺体は前社長で自分の父だ」と判明する。父ではないと疑う兄と、盛大な葬儀を執り行うとする弟。事件を追う刑事といい、何となくスッキリしない感じが残りました。何だかしつこいし、誰にも共感できなかった。

  • 廃ビルで見つかった遺体を、自分の父だと言う葬儀屋。事件性無しに違和感を抱く刑事。暴かれた真実とは…。天祢涼さんの「罪びとの手」を読む。

    廃ビルで、男性の遺体が発見された。
    警察は事件性のない事故と断定するが、
    遺体を引き取りにきた葬儀社の社長、悠司が、
    遺体を見て、自分の父親だと断言する。
    だが、その兄は、父親に似ているが、他人ではないかと
    疑いを持つ。

    そんな中、刑事の滝沢は、この死に事件性を疑うようになる。

    2カ月まえに起きた、少女連続殺人の犯人が、
    逃亡し、そして死んでいる。

    事件性なしに、異常に執着する滝沢と、父親の希望に逆らって、
    盛大に葬式を行おうとする悠司。
    その真意は、何なのか。

    二人とも、読者のほうが違和感を抱く、
    おさまりの悪い雰囲気を醸し出している。

    どこへ連れていかれるのかわからないままなのだが、
    ちりばめられていた謎が、一つに収束していく。

    オチは、今一つ、納得がいかないものだったが…。

  • 終わりが残念

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著者プロフィール

1978年生まれ。メフィスト賞を受賞し、2010年『キョウカンカク』で講談社ノベルスからデビュー。近年は『希望が死んだ夜に』(文春文庫)、『あの子の殺人計画』(文藝春秋)と本格ミステリ的なトリックを駆使し社会的なテーマに取り組む作品を繰り出し、活躍の幅を広げている。

「2021年 『Ghost ぼくの初恋が消えるまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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