池上彰の「経済学」講義1 歴史編 戦後70年 世界経済の歩み (角川文庫)

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  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041048924

作品紹介・あらすじ

テレビの放送でも話題になった池上彰の愛知学院大学・2014年「経済学」講義を文庫化。その第1巻・歴史編。戦後社会の歴史と仕組みを経済の視点から読み解く。

戦後の資本主義VS社会主義、東西冷戦、日本の敗戦からの復興・高度経済成長・バブル経済、社会主義の失敗などを池上解説。いまの日本と世界の状況をよりよく理解するためには、その前にさかのぼってみることが大切。歴史を学ぶことで未来が見えてくる。

トランプ政権誕生後の世界を読み解くカギにもなる!

感想・レビュー・書評

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  • 戦後の日本経済史についてとても分かりやすく書かれている。

    取り上げられている題材は世間の一般常識的なことばかり。しかし、知っているつもりになっていることでも改めて問われると説明できないことが多く、池上さんの易しい解説は勉強になる。

  • 池上彰さんは、TV番組などの解説でおなじみ。
    とても分かりやすい話し方をするなーと思っていましたが、書籍を手に取ったのは初めてでした。

    愛知学院大学での講義をもとに書籍化された本書の、文庫版を読みました。
    私は「経済学」の基本のキも知りませんが、とてもわかりやすい内容だったので、引き込まれてサクッと読めてしまいました。
    講義形式の語り口調だったから、余計にわかりやすかった。
    経済学って面白そう~という感想を持ちました。
    時事的にはちょっと古い内容ですけど、話の内容が戦時中の話だったりして、最新の時事ネタを扱うものではありませんから見劣りはしませんでした。

    経済学に関して基礎的な知識が欠落している社会人の方には、背伸びをせずに本書のような本から入ることをおすすめします。
    自分にとって馴染みの無い分野の本を読む時というのは、このような「通俗本」(というか易しい本)から入って興味を持ち、徐々に専門的な本に進んでいくのが正しい道筋だと感じました。

    いきなり、小難しい本を買ってみたところで、きっと挫折してしまう。

    教養を付けるために本を読むにあたっては、決して背伸びをせずに、自分のレベルと同じか、自分より少し上を行く内容の本を手に取って地道に読むことが大切。

    私は、この著者の本を一通り読んでみようと思いました。
    そんなキッカケとなった一冊。

  • 戦後の日本経済やソ連崩壊後のロシア、戦後の中国の歴史について、池上彰氏の大学生向け講座を書籍化したもの。
    とてもわかりやすい。

    日本の高度経済成長時の当時の様子(マナーの悪さ、公害問題、空気汚染)や、大戦後のロシアや中国の経済についての話は非常に面白い。

    社会主義の失敗について少し学ぶことが出来る。

  • 語り口がとても平易でソフトで軽妙で、さすが言葉で情報を伝えることを生業にしているひとの文章だと敬服。内容はすとん、と、こちらに届いて収まりました。
    あまりTVは見ない口ではあるものの、それでも時折りTV番組で見かける池上氏の発言や振る舞い、立ち位置などから判断する限り、私の政治信条と池上氏のそれはおそらく相容れない。そういう意味で、油断ならないと警戒しつつの読書でしたが…。

    まったくの偏りがないわけではない。しかしながら一般に、ものの見方、歴史観、信条や主張、分析、そういったものに偏りがまったくないという状況は成立しないだろう、とも思えます(数学や物理などの自然科学であれば、偏りもぶれもない、完全な中立性は保てるのでしょうか)。社会科学分野で見られる偏りとしては、このくらいなら許容範囲ではないかな? と私には思えました。

    興味深いエピソードも各所に散りばめられ、ついつい先を読みたくなって「今日はここまで」と思いながら次のページをめくってしまったところも。読みやすいというのはそれだけで充分に好印象で、ひとの心に入り込める武器なのだなぁと本筋とは違うところで感心したりもしました。

    まだ部屋に積読本は山をなしている状況で、それでも続刊であるニュース編を買い求めてしまいそうです。

  • 毎度のことながら、池上さん、凄いです!
    経済の知識ほとんどゼロ、新聞の経済欄を開いても下の方の雑誌広告ばかり読んでしまう私。
    そんな私に「経済学って面白い!」と思わせてくださいました。

    池上さんが愛知学院大学の経済学部商学経営学部の二年生以上に行った15回の「経済学特講」。
    社会人も参加。
    その計画を聞いたKADOKAWAが「講義内容を本にしましょう」。
    さらにテレビ東京が「テレビ番組にしましょう」。
    こうして2014年に出された本を、加筆修正して文庫化したのがこの本。

    デフレ脱却のためにどのようなことがなされてきたか?
    戦後の復興、高度成長、バブルとはどのようなものだったのか?
    高度成長によって噴出した公害問題とは?
    東西冷戦、そして社会主義の失敗とは?
    戦後70年の歴史を通して経済学を学びます。

  • 池上彰さんが愛知の大学で15回経済学の講義を行った記録の内、戦後の日本や世界の経済史の部分が本になったもの。400ページを超え、脚注も充実しているのでボリュームはたっぷり。印象深かったのは、社会主義陣営の失敗の話で農業を知らぬ指導者の指導と、それに反対できず媚びへつらいしかしようのない民衆が何千万人と餓死した経緯は唖然もの。

  • 高校生までが生徒、大学は学生。
    行動経済学では、買い物は夕方によくされる。
    経済学で言う「期待」とは予想のこと。
    太平洋戦争後、軍隊の身分を失った兵隊さんたちには退職金が支払われた。
    三菱鉛筆はスリーダイヤの紋章も使っているが三菱グループとはなんら関係ない。
    明治安田生命は三菱グループだが、人が死んで設けるとは何たることとして、当初三菱の名前を付けられなかった。そして今に至る。
    朝鮮戦争時、ソウルまで攻めてきた北朝鮮軍から逃れるため、ソウル南の漢江にかかる橋を超えて人々は逃げたが、北朝鮮軍が通ってはいけないということで、まだ人々が橋にいる間に橋が爆破された。今でも、北朝鮮による進入に備えて橋には爆薬があり、ソウル北の国道沿いにはたくさんのトンネルがあってそこに爆薬が仕掛けられている。
    東西冷戦の初期の時代、アメリカは砂漠に長大な地下トンネルを掘り、地上に多数の穴を開けて、トンネル内を核ミサイルを積んだ列車が走りどこの穴から飛んでくるか分からないような仕掛けをした。
    北極海のしたでは、ソ連とアメリカの潜水艦がよく接触事故を起こしていたが、マスコミには伏せられていた。
    水爆は強力すぎて兵器としては使えず、今の核ミサイルはすべて原爆。水爆は、いわば原爆を爆発させたエネルギーで核融合を起こす仕掛け。すごい。
    ベルリンの壁が崩壊したとき、東ドイツの放送局がまず放送したがだれも従わなかった。信用されていなくてみんな西ドイツの放送を聞いていた。西ドイツのラジオ局がベルリンお壁がなくなったことを放送してやっと東ベルリンの住民は確信した。
    神武景気より好景気が来たので、神武より高い名称をつけないといけず、岩戸景気とした、さらに好景気が来て、国つくり神話までさかのぼろうとし、いざなぎ景気とした。
    日本はインフラがぜんぜん整備されていなくて、太平洋戦争中もゼロ戦は作るが、名古屋から飛行試験場の各務原までは牛車でぼこぼこ道を引いていった。
    第1次世界大戦中、日本は製品をヨーロッパに輸出したが、シャツのボタンは糊付けとか、魚と鉄の釘を一緒に入れて重さを増していたなどをして、メイド・イン・ジャパンは粗悪品と同義語になってしまった。
    戦後、預金しましょうという一大キャンペーンが行なわれて、預金を刷り込まれてしまった。
    東京オリンピックの最中はし尿の汲み取りをやめましょう、みっともないから、ということになり、ありとあらゆるところにハエがたかった。
    ロバート・ケネディが来日した際早稲田大学で講演して、エネルギッシュの源はアイスクリームだと述べたときに聴衆は驚いた。なぜなら当時に日本でアイスクリームは色のついたジュースを凍らせたもので、どうしてそんなものがエネルギーになるのか分からなかった。アメリカでアイスクリームというのは乳脂肪分が8㌫以上あるものを言う。日本でも食品表示をきちんとしようということになり、基準がこの頃から整備されていった。
    通勤ラッシュ時、学生アルバイトがあって、ドアごとに尻押し係と剥ぎ取る係りがいた。
    会社にはクーラーがあるが家にはクーラーがないので、社員は遅くまで会社に残った結果猛烈社員に。
    スターリンは本名ではない。
    スターリンは背が低いことがコンプレックスで、ヤルタ会談でもひときわ背の高い椅子に座っている。

  • 「賢い人は、難しいことでも簡単に説明できるものだ」という言説がある。
    この「俺が説明を理解できないのはお前の頭が悪くて説明が下手だからだ」と言わんばかりの、自分から理解する努力を一切放棄した老害的主張を、自分は大変醜いと思う。

    しかし、この本を読んで思った。
    いるものだ、世の中には。
    複雑なことを頭の悪い自分にもわかるレベルで簡単に説明できてしまう人が。

    池上彰といえばこどもニュースや選挙特番の顔だが、大学で授業をすることもあるとは知らなかった。
    その説明はものすごくわかりやすいの一言で、加えて取り上げられるトピックがどれも大変興味深い。どんな隙間時間でもサクサク読める。
    朝鮮戦争、ソ連崩壊、バブルなど、いまいち判然としなかった現代史を経済の切り口でざっくりやってくれており、大変痛快。


    個人的に高ポイントだったのが、近頃何かと過剰に美化されがちな昭和の時代を
    「街は今よりずっと汚かった」「昔から日本人が礼儀正しかったわけではない」「今の中国の公害はかつて日本でも起きていたこと」としっかり明言していたこと。

    最近ではNHKも体制側のプロパガンダ装置じみてきており政権ともども歴史歪曲甚だしいが、
    池上彰個人としてはそういった勢力とは距離を置いているらしい。
    逆に語り口が中立過ぎて、この人の意見はどこにあるんだろうと考えてしまう。
    池上彰という人がポジショントークではない本音を出したときにどこまで中立中庸な人間なのか、どうにかして知る手段はないだろうか。

    なんにせよ、この人の他の本も読んでみたい。

  • 登録番号:142117、請求記号:332.107/I33

  • あんまり学校でも習わず、よく知らなかった戦後の経済史をしっかり学べる本。日本だけでなく、社会主義など世界の経済の歴史もよく分かります。

    日本は、高度経済成長やバブル経済で、環境問題や融資のやりすぎなど、後々大問題となったこともありました。また、中国・ソ連など、社会主義国家は、生産性低下や大飢饉など、いろいろな問題が噴出しました。そのような失敗談をそのまま語ったり、批判したりするだけでなく、そこから学べる教訓や生かせることなども、同時に話されており、池上さんらしい解説で、学びが深まった感じがしました。

    今までの経済学は合理的にしか考えていませんでしたが、実際は人間の心理までしっかり考えないと、成功しないことを感じました。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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