ふたりみち

著者 :
  • KADOKAWA
3.91
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本棚登録 : 220
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047453

作品紹介・あらすじ

元ムード歌謡の歌手で、今は函館の小さなスナックのママ野原ゆかりは、本州をめざし津軽海峡をフェリーで渡っていた。ある事情で抱えた借金返済のため、昔のつてを頼ってコンサートツアーと称したドサ回りの旅に出たのである。船内で偶然知り合った同じ名前の森川縁は、12歳なのになぜかゆかりの唄に興味を持ちついて来てしまう。彼女が母親と喧嘩して家出してきたことを知ったゆかりは、親に連絡させ最終目的の東京まで連れて行くことになる。しかし、彼女のコンサートツアーは、行く先々でトラブルが起きことあるごとに中止になってしまう。なかなかステージに立てないゆかりを支える縁。2人は55歳の歳の差を超えていつか、固いきずなで結ばれていく。そしてついに最後の会場、東京に着いたふたり。ゆかりは、ここだけは絶対に唄い上げるつもりだった。そこには、ゆかりの悲しい過去が刻まれていたのだ。
笑って笑って笑って、そして……ラスト一行に号泣! ピアフの『愛の賛歌』に乗せて描かれる、切なくて人生のすばらしさに打たれる、山本幸久の最高傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 67歳の元歌手ゆかりと、12歳の家出少女縁のドサ回りの旅。
    何故か行く先々でトラブルに巻き込まれ、なかなか思うように公演はできないながらもただでおきない二人が頼もしい。
    悲しい過去にも負けずにすすむミラクル·ローズことゆかりを応援したくなります。

  • 人は必ず死ぬ。けど、どう生きるのか。人と人が出会い関わるかによって生き方が変わる。主人公に思い入れて泣ける。

  • 元ムード歌謡の歌い手ミラクル・ローズことゆかりは、函館からの連絡船で家出娘の縁と出会った。
    ゆかりの数日間の個人的なツアーに、スタッフとして同行することになった縁。
    行く先々でトラブルに見舞われる二人。
    ツアーの目的は?

    前半、今ひとつ入り込めずにいましたが、ローズさんの過去が少しずつ分かってくるにつれ、一気に面白くなりました。

    最後に登場人物を一気に回収する感じは、とても好きです。
    そして、遊さんとのこと。
    今回の旅があって初めて、遊さんの気持ちを知ることが出来たローズさん、ハッピーエンドに涙腺が緩みました。

    お約束の他作品との繋がり。
    思わず、うふふ♡


  • チャップリンのキッドを思い浮かべます。
    自分だけかな。
    ほのぼのして癒される感じがします。

  • かつてミラクル・ローズという名でムード歌謡で一曲だけヒットを飛ばしたけれど、今は喫茶店のオーナーをしているゆかり。最後の「全国ツアー」と称した旅に出ることになったが、道中で中学生の女の子と出会い……。思わぬことの連続で、読んでいて楽しかった。

  • 昭和のムード歌謡歌手としてほんの一時活躍したミラクル・ローズことゆかりは、30年ぶりに全国のドサ回り巡業をはじめる。
    唯一のヒット曲『無愛想ブルース』をひっさげて函館を旅だったゆかりは、ひょんなことから女子中学生の縁と出会い、ふたりの凸凹グランドツアーがはじまる。

    ふたりのキャラクター(特にゆかり)がなんともよく、次から次へとおこるありえないトラブルも愉快で、楽しく読んだ。
    読了後に気持ちよく何か新しいことをはじめたくなる物語だ。

  • 67歳の元歌手。ミラクル・ローズという名前で7曲を出し少しだけ売れたのは1曲。現在では知ってる人が少ない過去の人。現在は本名のゆかりでスナックのママ。そのゆかりが12歳の少女縁(ゆかり)と出会うとこから始まる。過去に少しだけいい時があっても今は誰も知らない。自分の歌で人の心が動き、人生が変わる。そういう人を目の当たりにしてようやく今の自分を肯定できるもの。過去の自分と今の自分の確かなつながり。誰か一人でも覚えてくれている人がいるということ、出会えてよかったと思える人がいること。誰の人生にだって自分だけのドラマがあるということを鮮やかに描いている。本当にいい小説。

  • +++
    函館から津軽海峡をフェリーで渡る67歳の野原ゆかりは、元ムード歌謡の歌手。借金返済のため、営業の旅に復帰したのだ。その船内で知り合った12歳の家出少女森川縁が、なぜかゆかりの後をついて来る。旅先で起きるトラブルや55歳の歳の差を乗り越えて、いつしかふたりは固い絆で結ばれていく。そしてたどり着いた最後の会場、東京。そこにはゆかりの悲しい過去が刻まれていた…。
    +++

    67歳と12歳、ゆかりと縁(ゆかり)の「ふたりみち」の物語である。それぞれに事情を抱えた利の差55歳の二人は、津軽海峡を渡るフェリーで出会い、なぜか一緒に旅をすることになる。歌を、音楽を通して、二人のなかにある何かが響きあったのかもしれない。行く先々でトラブルに見舞われ、ろくに歌うこともできずにいるミラクル・ローズ(=ゆかり)だったが、縁がいつも支えになってくれている。12歳らしい幼さと、12歳とは思えない逞しさを持ち合わせた縁がいたからこその、ゆかりの旅なのである。ゆかりにとっては、人生の来し方を振り返る旅にもなっており、縁にとっては、人生の行方を探す旅でもあるのだろう。切なさ、ほほえましさ、人情のあたたかさ、一筋縄ではいかないやりきれなさなど、さまざまな感情を呼び起こされる一冊でもある。

  • 大ヒットが出ないまま引退したムード歌謡歌手のゆかりは、67歳にして借金返済のために昔のつてを頼って営業の旅に出る。その旅の初めに出会った少女の縁(ゆかり)は、何故かゆかりの後をつけまわす。行く先々でコンサート中止というトラブルに巻き込まれる内に二人の”ゆかり”の絆は深まって行く。

    キャラが良いですね。
    何と言っても縁。無鉄砲で、純粋で、可愛くて、しょっちゅうお腹を減らしてる少女。そして、聞く人誰をも感動させるシャンソンの実力があり、いざとなると腹が座ってラップバトルで人気ラッパーを打ち負かしてしまう67歳のゆかり。ゆかりが巻き込まれるトラブルに、縁は怒り、泣き、笑い、そんな縁をゆかりは「私の本心」と思い絆を深めて行くロードムービーです。
    山本さんの作品は、高級食材でグルメを唸らせるようなものではありません。いわば定食屋さん。でも、飛び切り美味しい定食はとても良いものです。

    山本作品のもう一つの楽しみは他の作品の登場人物がちょい役で出演すること。ただ、この作品ではゆかりが最初に就職した会社がアヒルバスだったという事しか気づきませんでした。他にも居たのかな?

    • しずくさん
      67歳が主人公という設定だけでトキメキます!(笑)
      心に留め置いてていつか読んでみようかな?
      67歳が主人公という設定だけでトキメキます!(笑)
      心に留め置いてていつか読んでみようかな?
      2018/04/29
    • todo23さん
      山本さんといえばお仕事小説ですが、これは良くある子供と大人のロードムービーです。
      少女の縁(ゆかり)ちゃんが可愛らしくて、良かったですよ。
      山本さんといえばお仕事小説ですが、これは良くある子供と大人のロードムービーです。
      少女の縁(ゆかり)ちゃんが可愛らしくて、良かったですよ。
      2018/04/29
  • 引退から40年近く、昔お世話になった人に連絡して「全国ドサ回り」を始めたのは、「ミラクル・ローズ」こと野原ゆかり。19歳でミラクル・ローズは19歳でデビュー。持ち歌は「無愛想ブルース」、最も自信があるのはフランス語で唄う「愛の讃歌」、「イムヌ・ア・ラムール」。引退後は、函館でスナック「野ばら」を営む。

    旅の初めに出会った12歳の縁(ゆかり)と、行動を共にすることに。しかし、公演はなかなかうまく進まず。

    旅先それぞれで、お世話になった人に会い、当時のことを想い出し、考え。うまく行かないこと、苦労ばかりだったが、後悔はなく、「運命に逆らうのよ」と言って、当時から生き抜いてきたところが格好いい。そのクライマックスは、若い女性ラッパーとの対決シーン!

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著者プロフィール

山本幸久
一九六六年、東京都生まれ。中央大学文学部卒業。編集プロダクション勤務などを経て、二〇〇三年『笑う招き猫』で第十六回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。ユーモア溢れる筆致と、魅力的な登場人物が読者の共感を呼び、幅広い世代から支持されている。主な著作に『ある日、アヒルバス』『店長がいっぱい』『大江戸あにまる』『花屋さんが言うことには』『人形姫』などがある。

「2023年 『あたしとママのファイトな日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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