エムブリヲ奇譚 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 622
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037164

作品紹介・あらすじ

旅本作家・和泉蝋庵の荷物持ちである耳彦は、ある日不思議な”青白いもの”を拾う。それは人間の胎児であるエムブリヲと呼ばれるもので…。迷い迷った道の先、辿りつくのは極楽の温泉かはたまたこの世の地獄かーー

感想・レビュー・書評

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  • ああ、いいなぁ、これ。

    まるで期待せずに読んだ。
    この人の作品はハマるときはハマる。
    中には「はぁ?」と首をひねりたくなる著書もあるのだが、今作はすべて良い。
    短編集というものは、気に入ったものが1つか2つあればいいかとおもっていたが、9作品のすべてが好きだ。
    これは自分的には結構珍しい。
     
    時代はいつ頃だろう?
    ざっくりと、江戸と明治のあいだくらいかな。
    今で言うところの、旅行ガイドブックを書くのを生業としている和泉螂庵と荷物持ちの耳彦が各地をまわり、奇妙な体験をする物語。

    まるであの「乙一さん」のような余韻の良さ。
    奇妙で、悲しくて、怖くて、せつない。
     
    ちなみに表題にあるエムブリヲとは、人間の胎児の、まだ赤ん坊の姿に成長する前の状態らしい。
     
    続編も出ているそうなので、ぜひ手に入れようと思う。

    • megmilk999さん
      土瓶さんの5星を見つけました!
      読んでみます。期待大です!
      土瓶さんの5星を見つけました!
      読んでみます。期待大です!
      2024/02/04
    • 土瓶さん
      なんか……、責任重大。
      あんまりハードル上げないで、さらっと読んでください。
      なんか……、責任重大。
      あんまりハードル上げないで、さらっと読んでください。
      2024/02/04
  • フォローしている方々が次々に読んでいて、じわじわ読みたくなってきていた乙一さん(山白朝子という筆名もあるんですね!)をついに読む。
    結果、とっても好みだった!奇妙さと切なさが絶妙なバランス。

    『湯煙事変』『顔無し峠』『「さあ、行こう」と少年が言った』の少し温かみのある切なさが、特に好きだった。
    グロ多めの『〆』『地獄』も、怖いもの見たさで読み返したくなる。

    • ロッキーさん
      aoiさん

      コメントありがとうございます!!
      乙一さん、遠ーーい昔に『ZOO』読んで以来で、すっごく久しぶりでした。
      山白朝子さん名義、と...
      aoiさん

      コメントありがとうございます!!
      乙一さん、遠ーーい昔に『ZOO』読んで以来で、すっごく久しぶりでした。
      山白朝子さん名義、とても良きですね!

      「切なさの漂う心地よいホラー」まさにでした!
      次何読もうかなーという感じですが、『私のサイクロプス』はぜひ読みたいです\( ˆoˆ )/
      aoiさんが読まれた、装丁ステキバージョンの本書も気になります!
      2023/04/15
    • ロッキーさん
      1Q84O1さん
      コメントありがとうございますー!

      もちろん1Q84O1さんの感想も読ませていただき、面白そうすぎてこの本を手に取りました...
      1Q84O1さん
      コメントありがとうございますー!

      もちろん1Q84O1さんの感想も読ませていただき、面白そうすぎてこの本を手に取りました!
      『〆』『地獄』グロいんですけど、めちゃくちゃ心に残りました…小豆ちゃん…!!

      続編もぜひ読んでみたいです!
      輪ちゃんがまた出てくるということで楽しみです。
      2023/04/15
    • 1Q84O1さん
      ロッキーさん
      私の推し小豆ちゃんがぁ~(TдT)
      耳彦!
      許さないぞ!ですw
      続編は輪ちゃんがメインキャラに昇格ですよ!
      楽しみに読んでみて...
      ロッキーさん
      私の推し小豆ちゃんがぁ~(TдT)
      耳彦!
      許さないぞ!ですw
      続編は輪ちゃんがメインキャラに昇格ですよ!
      楽しみに読んでみてくださいね(≧∇≦)
      2023/04/15
  • 耳彦の話が多かったですね。
    やはり上手い、怪談はかくあるべしというお手本のような作品です。褒めてますからね。最近のホラーは当たりが悪くて(T ^ T)

  • 奇譚集。予想通り変な話ばかりだが、読み進めていくと、味わい深い。

  • 主人公の和泉蠟庵の設定が、方向音痴、わりと空気読(ま)めない、体力は鬼、しかしながら小柄、最終的に禿を気にし始めた時点でもう脳内配役が確定いたしました(……。)
    そして長髪などという全くありがたい設定です。
    大変けしからん。

    耳彦は山田孝之さんが似合いそう。
    濱田岳も合いそうだけれど蠟庵とバランス取れなさそう。

    とはいっても実写じゃなくアニメ向きの話ではある。
    ライトといえばライトか。

    「ラピスラズリ幻想」の構成が好き。
    しかし、繰り返すことはどちらかというと呪いに近いものも感じる。
    それが故の結末なのだろうと思う。
    何かを満たせば何かが満たされない。苦しい。

    「〆」はなんとも言えず後味が悪い。
    弱肉強食というか、諸行無常というか。
    このあとの櫛〜じゃないけど羅生門的な切なさがある。
    その世界で普通(と思われる)ことと、自分の中での普通とがブレたときに人はどう行動するのか。

    「地獄」は全く違った意味で無力。
    人も鬼もあまり変わらないのかもしれない。
    「〆」の中でかたくなに守り何かを喪ったというのに、その信念は「地獄」の中ではいとも簡単に崩れさる。
    しかし描写がなかなかである。
    怖いというよりは気持ち悪いの方が近い。

    「櫛を拾ってはならぬ」が一番いい感じにゾワゾワした。
    怪談とはこういう物だ!というワクワク感もあり。
    長い髪の毛はなんでかわからないけど怖いものの一つ。
    髪の毛は抜けた途端に唯の髪の毛になってしまって、怖く感じる。

    「「さぁ、行こう」と少年が言った」
    これも設定がいい。「ラピスラズリ幻想」に通じる何か。
    希望と切なさが交じる。
    和泉蠟庵のまだわからない部分がわかる話の一つでもある。蠟庵少年がいい。

    他にも何編かあるけれど、特にこれらが好きだった。
    続編も読みたいけど文庫化はまだ先の様なので気長に待ちたい。

  • シリーズ第2作『私のサイクロプス』を先に読んでしまったので、本作(第1作)に遡って読んだ。基本的には耳彦と和泉蠟庵の道中記で、第2作のメインメンバーである輪が一話のみ登場する。

    人情味、ユーモア、ホラーのバランスが素晴らしい。
    弱者に対して、ほのかな、あたたかい情愛が積み重なっていく過程を描くのがうまいと思う。
    耳彦と和泉蠟庵の掛け合いも息がぴったりで、クスッと笑える。
    人の交わりの温もりを描く一方で、肉親を犠牲にしてでも生き伸びようとする人の本能も炙り出す。美しさと醜さが同居して、双方を引き立てている。
    「正しい文章」というのとは少し異なり、時々ねじれを感じるが、繊細な感情を汲み取って、はっとするような表現を生み出している。

    <好きな話>
    輪が主役の「ラピスラズリ幻想」が白眉で、あまりに切ない彼女の決心に号泣してしまった。
    「「さあ、行こう」と少年が言った」では、少年時代の和泉蠟庵が登場する。家族に虐待される女を救う蠟庵少年は、まさに天使か救世主のよう。黄金に輝くススキの野の風景が、いつまでも頭から離れない。第2作ではいまいち影が薄い彼だが、この一篇を読んで大好きになってしまった。

    <苦手な話>
    「地獄」は、縦穴の閉塞感や腐臭があまりにもリアルで、夢に出そうで怖かった。結末がまさにタイトルどおりで、再読はしたくない。
    「〆」は好きな話だが、家も食材もあらゆるものが人間の顔に見える地獄は、想像しただけで気が狂いそうだ。

    本作が素晴らしかった分、第2作があれ程つまらなく感じたのが不思議だ。かと言って、もう一度第2作を読もうとも思わない。第3作の刊行に期待したい。

  • 絶妙な非日常感。
    奇妙で不気味な話ばかりだけど、合間に入る耳彦と和泉蠟庵の歯切れのよい会話でクスッと笑えて好きでした。

  • 山白朝子の短編集.
    すごく良い.

  • かなりおもしろかった。
    短編集。

    ラピスラズリ幻想
    何度も人生繰り返して強くなる系の話は好き。トムクルーズ主演のあの映画も然り。ラストは切ない。この作者の切なさエンドは効くね。


    これもお気に入りの話。目に見えるものだけを嫌がったりするようなことは多い。スマホには便器並みの菌がいるとかそういう話に近い。ラストがいいんです。

    顔無し峠
    かなりグッときた。最近出会った人なのに…と登場人物本人も言っていたが、自分も同時にかなり感情移入してしまっていた。不思議な感覚だ。

    「さあ、行こう」と少年が言った
    家での仕打ちに、血管ブチ切れそうになるほどイライラした。これもラストがいい。


    全体的に漂う雰囲気と、ラストがいい。

  • 奇妙で不気味で後味の悪さがあるが、読むのをやめられない。

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著者プロフィール

怪談専門誌『幽』で鮮烈デビュー。著著に『死者のための音楽』『エムブリヲ奇譚』がある。趣味はたき火。

「2023年 『小説家と夜の境界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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