騙し絵の牙 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041026427

作品紹介・あらすじ

■累計発行部数17万部突破!
■豪華キャストで2020年6月映画公開!
監督:吉田大八 キャスト:大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市ほか
■2018年本屋大賞ランクイン。前代未聞の小説が文庫化。文庫解説は大泉洋。

『罪の声』の著者・塩田武士が、俳優・大泉洋を主人公に「あてがき」。
圧倒されるほどリアルな筆致で出版界の<光と闇>を描く!&「速水=大泉洋」が表紙&扉ページの写真を飾る!

主人公は出版大手の「薫風社」で、カルチャー誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。
中間管理職でもある40代半ばの彼は、周囲の緊張をほぐす笑顔とユーモア、コミュニケーション能力の持ち主で、同期いわく「天性の人たらし」だ。
ある夜、きな臭い上司・相沢から廃刊の可能性を突きつけられ、黒字化のための新企画を探る。
大物作家の大型連載、映像化、奇抜な企業タイアップ。雑誌と小説を守るべく、アイデアと交渉術で奔走する一方、
巻き込まれていく社内政争、部下の不仲と同期の不穏な動き、妻子と開きつつある距離……。

交錯する画策、邪推、疑惑。
次々に降りかかる試練に翻弄されながらも、それでも速水はひょうひょうとした「笑顔」をみせる。
しかしそれはどこまでが演技で、どこからが素顔なのか?  やがて、図地反転のサプライズが発動する。
出版業界の現状と未来を限りなくリアルに描いた群像小説は、ラストに牙を剥く!

出版界の未来に新たな可能性を投じる「企画」で、各メディアで話題沸騰! 
吉田大八監督で2020年6月映画公開。

感想・レビュー・書評

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  • 大泉洋 脳内再生余裕でした。

  • ホントに三万二千円の本を出版してやっていけるのか?

    騙されました。映画を観て、めちゃ面白くて、幾つか確かめたくて本書を紐解いたのに、90%違う話でした。よって、冒頭の私の素朴な疑問の答は分かりません(映画のネタバレと言うなかれ。この一言で、映画ストーリーが予想できたら尊敬します)。映画と同じく、作家の大御所二階堂大作のパーティーが始まる。大泉洋にあてがきしたという速水「トリニティ」編集長が登場する。映画と同じなのは、ほぼ此処まで。

    いやあ、よくもこの「原作」から、あんな面白い「脚本」を作れるもんだ。小説の中でも大泉洋は章ごとの扉写真モデルとして頑張っていたけど、映画でも正に速水編集長をやっていた。薫風社という出版社名は一緒でも、役員名も設定も違う。高野恵、柴崎、久谷等と同性同名が数人出てくるけど、設定が違っていた。こんな設定の高野恵(松岡茉優)も観てみたかったかも。読んでる途中、彼らの豹変の瞬間を読み間違ってしまった。

    でも、出版業界が抱える底深い「紙産業衰退という」ジレンマは同じだ。あの「小説薫風」が廃刊に追い込まれる。映画では文藝春秋社屋がロケ地に選ばれていたので心配していたのだが、中身的にも「文藝春秋」とは別物の文芸誌でした。小説内とはいえ、「文藝春秋」を廃刊にしたらダメでしょ。それでも、3年間に9誌のうち4誌が廃刊に追い込まれ、2誌が電子コミック化になったらしい。この辺りは、どこかの出版社ではありそうな話ではある。

    私は雑誌の利益構造を見損なっていた。雑誌の収入源は、「販売」「広告」だと思っていた。実はそれに付け加えて、「コンテンツの二次利用」というのがあったのだ。速水編集長はこれを見据えて、「トリニティ」廃刊にならないように東奔西走する。それが時にどれほどの利益を生むかは、鬼滅の刃での集英社を見たらイチワカリだろう。びっくりしたのは、企画段階で、それを見据えての予算組をしているのだ。必要とあれば、大御所作家の新作のための取材旅行に一千万円の調達も無理して実現する。

    この小説自体が「企画段階でコンテンツの二次利用を企み、それを見事に実現したお手本」ではある。最初から、大泉洋あてがき、映画作成、を企画していた。KADOKAWAの「ダ・ヴィンチ」の編集者が大泉洋の「冗談」を実現したのだけど、その実現過程そのものが速水のやり方だろう。だとすれば、「トリニティ」のモデルは「ダ・ヴィンチ」か?確かにイメージが湧く。漫画も小説もあって、なんでもありの雑誌で、なんとまだ生き残っている。

    因みに最新号(5月号)目次を見たら、「コンテンツ二次利用」だらけ!
    ◎「マンガ×凪良ゆう」
    本屋大賞ノミネート作『滅びの前のシャングリラ』を浅野いにおがコミカライズ!
    ◎大反響!エッセイ集『THEやんごとなき雑談』刊行記念
    中村倫也ロングインタビュー


    小説読んで、あの場面を映像で観たいと思って映画を観るとガッカリする。映画を見て、深掘りしたくて小説を読むという順番を私はお勧めする。

  • 大泉洋さんをイメージした主人公ですね!
    読んでて、ホントに大泉洋だ!と納得

    編集者達のやり取りは生々しかったり、コミカルにボケを入れたり楽しく最後は驚かされたが

    正直もっともっと騙しあいの話と思ってしまっていたので…厚みのある本にしては…まだ始まらないのか?…となってしまった…

  • あてがきということですが
    主人公の速水さんはまさに大泉洋さんでした!


    映画は見てないので
    どんな演技をされるのか
    想像しながら読みました(^^)


    社内の派閥のような話はあまり得意ではないですが
    会社の上層部や、大物作家とのやりとりでの
    速水の切り返しの旨さに舌を巻き
    どうクリアしていくのかが
    面白かったです


    スマホがメインになりつつある
    出版業界の現状については
    本好きとしても
    気になる話でした

    私も電子より紙派なので
    紙がなくなったら本から離れてしまうかも…

    といっても図書館で借りてばかりいて
    全然売上に貢献してないので
    文句はいえないかもしれないですね


    ラストは確かに騙されたんですが
    もうちょっと速水の動きの詳細を知りたかったなー
    どうやって会社を立ち上げて
    みんなを連れてったのか
    速水サイドから読みたかったです

  • 私だって「存在のすべてを」を読みたい
    読んで待ちます塩田さん、4作目
    2018年本屋大賞ランクイン作品
    って、文庫裏に書いてあるから
    調べたら6位(…どう評価するかよくわからない)

    大手出版社で廃刊の危機に遭ってしまうカルチャー雑誌の編集長の奮闘
    出版業界、編集者の仕事と生活ぶり、クセ強めの作家達 面白く読みました
    創業者一族の社長の急逝
    どちらの会社でも起きそうな次期社長争い
    しっかりどっしり取材されたのでしょう
    主人公は俳優大泉洋さんに当て書きということで、軽妙な会話は、いかにもと思うことたびたび
    エピローグでも退社後の逆手劇まで楽しく読みましたが、タイトルはしっくりこなかったですかなあ
    映像化を意識されながら、とのことで、離婚となる夫婦関係とか 恵まれなかった生い立ちとか
    ちょっと過剰かなと思ったり。
    出版社業界小説で充分面白いので、

    • ゆーき本さん
      これ映画のラストと違うんだけど、私は映画の方が好きだった記憶
      これ映画のラストと違うんだけど、私は映画の方が好きだった記憶
      2024/04/25
    • おびのりさん
      きゃあ、たださん 勝手に名前出してごめんなさいです。
      レビュー書いた後で たださんのレビュー見て そうなのよ!と激しく同意してしまいまして。...
      きゃあ、たださん 勝手に名前出してごめんなさいです。
      レビュー書いた後で たださんのレビュー見て そうなのよ!と激しく同意してしまいまして。
      ついつい。
      どうぞどうぞ お許しくださいm(_ _)m

      ゆーきさん、kumaさんが英語褒めてたから気にはなっているの。あ、また、やっちゃた。
      2024/04/25
    • おびのりさん
      英語→映画 でした
      英語→映画 でした
      2024/04/25
  • 『騙し絵の牙』

    【A;購読動機】
    ずばり、「罪の声」の作家さんの執筆だから。グリコ森永事件をモチーフにしたフィクション小説に圧倒された。
    その記憶が消去できず、手に取ったのが「騙し絵の牙」である。
    映画化されていたことも知らず、先入観なしでの読了となる。

    【B;物語】
    ①主人公
    20年以上出版業界で働く編集長である。担当する雑誌は創刊以来赤字続き。多くの雑誌が廃刊に追い込まれる中、いよいよ自身担当の雑誌にその危機が迫る。黒字化必至。
    ②黒字化
    売り上げを伸ばすにあたり、出版部数そして広告の伸びは大きく期待できない。
    そこで作戦として考慮に含めたのが「著作物の2次利用」である。
    部員に対して売り上げ目標を与えるにあたり、著作物の強さ(消費者からの支持度)を考慮して設定する。
    ③編集長
    自らは、大物重鎮作家と女優兼作家の2氏との交渉にあたる。なぜ、彼にそれが務まるのか?それは、彼が、作家に対してのフォローがどの編集者よりも手厚かったらからに他ならない。具体的には、作家が執筆しやすいように資料含めた情報収集、提供を継続的に行っていることだ。

    【C;読み終えて。学び。】
    ①;
    ビジネスはすべて環境にあわせて変化させ継続させることが必至である。そのためには、利益/キャッシュを残すは必須である。書籍もそのほかビジネスも同様である。
    ②;
    目標設定をするにあたり、何を「因子」とするのか?その根拠を明確にすることによって、部全体の理解力が高まる。ゆえに統率しやすくなる。
    ③;
    誰が利益をもたらしてくれるのか?そう、利益の源泉。出版業界にあたっては、作家そして作家が生み出す作品である。
    それをわかって、行動しているからプロとして生きていける。本質、本筋を見誤まることなかれ。

    【D;調べてみた。集英社の売上変遷。】
    出版業界への理解を深めたいと考えた。そこで、集英社の売上変遷を調べてみた。
    2012年売上高
    1,260億円(雑誌820億円、書籍170億円、広告110億円、事業収入150億円)
    2022年
    1,950億円(雑誌506億円、書籍120億円、広告86億円、事業収入1260億円)
    ――――――――
    判断できること。売上増加は、事業収入の伸びであること。
    事業収入とは、デジタル化、版権ビジネスである。後者には、映画化、ゲーム化、コラボが含まれる。
    ――――――――
    さて、「騙し絵の牙」に話を戻す。
    主人公の編集者が、出版社を退職して、次に何を志したのか?また、その理由は、なぜなのか?
    集英社のビジネスの変遷を観察して、「なるほど」と腹落ちをしたのである。

  • 一応、僕も中間管理職(みたいなもの)なんで、速水に自分の姿を重ね合わせたりして。
    でも現実、なかなか速水みたいに上手くは立ち回れないし、隘路を軽快にすり抜けてはいけない。
    だからこその読書でのストレス解消。物語として、最後はスッキリとしてよかった。

    ところで大泉洋。
    どうなんだ大泉洋。

    この小説は、俳優の大泉洋さんを当て書きしたもの。作者の塩田さんは大泉さんを主人公にするため4年間取材し、振る舞いや喋り方などを分析したそうだ。

    つまり、この小説読めば大泉洋さんの人となりもわかる。大泉洋ファンにはたまらない小説、といったところか。

    俳優さんの当て書きで、こんな高いクオリティの小説書いちゃうなんてすごいなぁ、と感動。
    出版業界の裏側も垣間見えて満足度高いです。

    思う壷だが映画も見たいところ。

  • 6章まで、大変おもしろかった。公私にわたる様々な困難の中、奮闘する中年男の熱さと悲哀が描かれていて、とても満足。
    ただ、最後のエピローグの内容を、もっと充実して、速水視点で描いてもらいたかった。6章までで負けたストーリーを、逆転させるところの書き込みをもっとして欲しかった。このため、読後の痛快感は無く、モヤモヤ感が募る。ラストの客観描写で、逆転と騙しを際立たせたかったのだろうが、何が騙しなのかが分からない。ラストの会社設立は、速水に騙されたというほどの、裏切り行為にも思えない。会社員時代の人脈、ノウハウを活かして、編集や出版を推進する会社を立ち上げましたというのは、とても順当な行動に思える。このため、最後の速水の生い立ちや独白が、宙ぶらりんに感じられた。
    騙し絵とまでいうことで描くならば、もっと本当の悪業と思う様な対応にして描かれないと、狙った逆転劇としては今ひとつ。。。
    そして、前半で問いかけた『編集とは何か』『何のために編集者になったのか』という、仕事の本質に対する速水の答えが分からないママに終わった様に思える。その答えを、会社設立でどう答えを出したのか、もっと明確に示して欲しかった。前半が面白かっただけに、ラストが肩透かしを喰らった様で残念だった。
    ただ、ここまで引っかかったということで、星4つ。

  • 書店守った亡き姉とスクリーンで会う 話題映画のロケ地に 埼玉 | 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20210428/k00/00m/040/199000c

    【騙(だま)し絵の牙】出版社舞台の群像劇 | カナロコ by 神奈川新聞
    https://www.kanaloco.jp/news/culture/entertainment/article-446293.html

    映画『騙し絵の牙』公式サイト | 3月26日(金)全国公開
    https://movies.shochiku.co.jp/damashienokiba/

    騙し絵の牙 塩田 武士:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000408/

    • kuma0504さん
      げ、このURLの中に、私の書評で「32,000円の本を出版してやっていけるのか?」と書いて「この一言で映画のストーリーを予測できたら尊敬しま...
      げ、このURLの中に、私の書評で「32,000円の本を出版してやっていけるのか?」と書いて「この一言で映画のストーリーを予測できたら尊敬します」と書いた、その大きなヒントが載ってました。まぁネタバレはしていないですけどね‥‥。
      2021/05/06
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      なんと、、、
      鈍いから気付いてない猫。。。
      kuma0504さん
      なんと、、、
      鈍いから気付いてない猫。。。
      2021/05/06
  • 映画の公開をきっかけに手に取ってみた。
    読み始めてまず主人公、速水輝也のキャラクターにびっくり。すらりとした長身に柔らかいウェーブのパーマ、飄々とした人たらし、ポンポンと出てくるコミカルな返し。今度の映画で速水役を務める大泉洋のイメージそのもの。まるであてがきみたいだ、と思ったら本当にあてがきでした。巻末の大泉洋による解説を読んで初めて知った。

    内容は中年サラリーマンが主役の組織の論理や社内政治に翻弄される、いわゆる中間管理職の悲哀ものかな、よくある奴だな(十分エンタメとして面白いけど)と思って読んでいたらーーー。
    最後の最後に驚きの結末。そうか、これが『騙し絵の牙』の意味か。
    まるでミステリー小説のような展開。出版業界というあまり馴染みのない世界を舞台にしながらも、ストーリー展開は分かりやすくエンタメ性に富んでいて、速水をはじめとするキャラクター達も人間味があり映像化が映えそうな人達ばかり。

    ただ、エピローグの長さと濃さが尋常じゃない。むしろここからが肝要、と言っても過言じゃないくらい、終盤の畳み掛け方というかひっくり返し方がすごい。それは人によって好みが分かれるところかも。

    描かれている出版業界の現状はリアルなものに見えるし、作者の塩田さんはこの作品を通して業界の現状や課題、未来なんかに対するメッセージを発したかったのだろうと感じました。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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