ぼくの嘘 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041015872

感想・レビュー・書評

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  • 誰かを好きなあなたに恋をした。

    笹川勇太は親友・古賀龍樹の恋人・森せつなに恋をしている。彼女の忘れた上着を抱きしめた瞬間を,学校一の美少女・結城あおいに目撃され,証拠写真を撮られてしまった。弱味を握られた勇太は,あおいの友人であり想い人である小桜かすみとその彼氏の動向を探る協力をさせられることに。

    誰かを恋する横顔に惚れてしまう勇太。実は彼の父親は離婚歴があり,浮気相手との間に生まれたのが勇太で,その母親と結婚することになった。精神的に不安定な母親との関係も一筋縄ではいかない勇太だが,あおいとは憎み合うような関係から,少しずつ意識し始める。この作品は勇太とあおいの視点が交互に採用されており,どちらの考えていることも読者にはわかるのだが,その少しずつの歩み寄りがなんだかストレートにむずがゆい。最終的に勇太のとった選択は,なかなか難しいというかまるで映画というか,なるほどフィクションの世界を愛好していた勇太が選びそうではある。実現するのはなかなか難しいが。

    バイプレーヤーとして,図書委員の八王子さんがなかなかよい味を出している。彼女があおいに薦める「これは読んでおくべきという恋愛小説の古典的名作」は,あまりにもスタンダードだが,なかなか鋭い読みであおいのリクエストに応えている。

    実はこの『ぼくの嘘』は,龍樹とせつなの物語『わたしの恋人』の続編だそうで,とても面白かっただけに,続編から読んでしまったことをちょっと後悔した。

  • 終盤に差し掛かって二作目だということが分かり一旦停止。さて、一作目から通して読んで確かに正解だった。あおい、勇太の性格に深みが増した。この手の小説を読むとき、自分が若かったころを連想して読む読み方の他に、自分の子どもたちが高校生になったらこういうことするんだろうなという目線で読めたことが新鮮だった。一作目と視点が変わったことで、あおいのことをより知ることができた。地味だが可愛い子だとか清楚系でナチュラルっぽくて簡単に落とせそうとか。周りから見るとそういう評価の子だったのか。勇太の闇の部分とかもね。『わたしの恋人』では、この手の本にしては珍しく、家族の話に結構食い込むなと思っていたけれど、このシリーズのテーマの一つだった。美少女と地味男子の身代わりデートって定番のシチュエーション。不倫上等の親と、ケンカばかりしていてでも別れない親はどちらが不幸だろうか。あおいママの意見は仕事本や自己啓発本に書いてあることのようでことごとく正しくてこれは強敵。服なんてどれでもいいという考え方や、眼鏡は複数持って使い分けるのが普通、試着して買わなくてもいい、靴を買ったら古い靴は処分してもらえることに驚いたりするところが、同じ年ごろだったころの自分に重なって見えた。せつなと違ってあおいは社交的で自分の考えもしっかりしているから、意外と(と言ったら失礼だけど)人の痛みが分かるし気いつかい。石田さんがかすみを電車で助けたのも石田さんの自作自演かと疑ったのだけれど勘ぐりすぎだったか。親の不倫話は振りで、二人の人を好きになったらどうするの?というのがもう一つのテーマだった。どう決着させるのか予想がつかないままラストへ。これにはまんまとやられた。この展開で納得のいく結末はこれしかないと思えるようなきれいな決着の仕方。

  • 普通の学園生活では交わることのないオタクの男の子と、モデルも務めるハイスペックな女の子の話。

    終盤までは、それなりに楽しみつつもありきたりな内容って感じでしたが、最後の展開はちょっと驚きつつよい感じでした。

  • 「わたしの恋人」と対になる青春恋愛小説で、必ず前作の「わたしの恋人」から読まないといけない本です。
    前作の主人公の古賀龍樹の親友でオタクの笹川勇太が本作の主人公です。前作のもう一人の主人公の森せつなに密かに想いを寄せています(やっぱりか!)。そんなある日、学校一の美人の結城あおいに弱みを握られ、遊園地ダブルデートで恋人のふりをするように命じられます。勇太はいつの間にかあおいに心惹かれていきます。
    あおいが心寄せる人に絶交され心を痛めますが、最後には感動で涙してしまいました。

  • わたしの恋人はニヤニヤドキドキしながら読めたけど、こっちはハラハラドキドキしながら読んだ感じ。
    途中がめっちゃ切なかっただけに、最後はしあわせな終わり方でよかったです。

  • 本作品は、先に文庫化されている『わたしの恋人』(角川書店,2014年)の続編である。
    今回の主役は、前作の主人公・古賀龍樹と森せつなの名アシスト役だった、オタク少年・笹川勇太くん。
    親友として二人の恋を静かに見守ってきた笹川くんだが、実は人知れず切ない片想いをしていたわけで…。
    そしてそのことが、同じクラスの美少女・結城あおいに知られてしまったことから、笹川くんの受難の日々(?)が幕を開ける――というのが、本書のあらすじ。
    前作に引き続き今作も、勇太:ぼく/あおい:あたし~という風に、語りの視点(一人称)が交互に入れ替わるシンプルな構成で話が展開していく。(ちなみに前作は、龍樹:おれ/せつな:わたし~だった。)

    なんといっても、あおいちゃんのキャラが良かったな。
    自分が美人だって自覚してて、自信に溢れてて…ともすれば、一見ワガママな女王様みたいに見えるけれど、本当は周りとの調和を考えて気を配れる子だし、クラスで目立たない人のこと(せつなとか笹川くんとか)もちゃんと見てるし。
    なにより、フェアなところがいい。笹川くんの弱味を一方的に握るだけ~じゃなくて、自分も弱点を晒す潔さがね、いいよねw
    最初は渋りながらも、結局は素直にあおいちゃんの命令に従ってしまう、笹川くんの振り回されっぷりも楽しかった♪

    そんなわけで私は終始あおいちゃんびいきだったもんだから、終盤はもう本当にハラハラさせられたー!
    それでもラストは笹川くんが頑張ってくれたお陰で、感動の結末が……!?

    なるほど。『ぼくの嘘』って、そっちだったか!~ということも含めて、意外性(?)もあり、とても納得のいく終幕だった。
    やっぱ恋愛はタイミング勝負、タイミングを逃さない人だけが掴めるものなのねん☆
    このタイミングで合ってることを祈る~って、お伺いを立てちゃうところが、なんとも笹川くんらしいけど。でもそこがまた良いんだよねw

    個人的には、前作よりこちらの方が面白かった!!
    龍樹とせつなのその後には触れられてなかったけど、二人も幸せだといいな♡

  • 人を好きにならずにすむ方法があるなら教えてほしい。なぜなら彼女は、親友の恋人だから。笹川勇太は恋する相手をめぐって、学内一の美少女・あおいに弱みを握られてしまった。そんな彼女も、恋となると思うようにはいかない。好きな人と会うため、勇太に恋人のふりをしデートしてほしいと頼んで来 きた。振りまわされながらも、次第にあおいに心惹かれてゆく勇太。そして複雑な関係の二人に時間が。恋と友情を描く青春小説!

  • こちらのほうが面白いと聞き、早速読んでみました。
    面白いどころか、これを書くための前作では?と思ってしまうほど良かった!
    ラブコメな軽いノリは相変わらずなので、あまり深くつっこんではいけませんが
    読んでよかった!

  • 一気に読めた。ラストが最高にグッと来て、声が出そうになるくらい!
    主人公たちの胸中の描写が、イメージしやすい上に共感できることが多くておもしろい。とにかくラストがよかった!

  • 今日マチ子さんの青が美しいカバーイラストに惹かれて「ぼくの嘘」を購入した。
    それはまるで漫画のようなみずみずしい青春小説なのだけれど、それは物語の展開だけでなく、登場するふたりもまたくるくると表情を変えているような気になるほどきちんと描かれていて、心地良ささえあった。
    久しぶりに甘酸っぱくて気持ちの良い小説を読んだなと思っていたらこの作品は続編だったということを知って少し沈んだ。カバーにそんなことは一言も書いていない。
    解説を読めば読むほど、まだ見ぬ第一作「わたしの恋人」にとても焦がれてしまった。
    けれど本を閉じた時、ふと、ああ、これはあの場面なのだなとじんわりまた甘酸っぱい気持ちになった。

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。2004年、第2回ジュニア冒険小説大賞を受賞した『ねこまた妖怪伝』でデビュー。児童文学のほか、ミステリーや恋愛小説も執筆する。著書に、「2013年 文庫大賞」(啓文堂大賞 文庫部門)となった『ハルさん』、『初恋料理教室』『おなじ世界のどこかで』『淀川八景』『しあわせなハリネズミ』『涙をなくした君に』、『きみの傷跡』に連なる青春シリーズの『わたしの恋人』『ぼくの嘘』『ふたりの文化祭』などがある。

「2023年 『初恋写真』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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