死者のための音楽 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 458
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041010761

作品紹介・あらすじ

教わってもいない経を唱え、行ったこともない土地を語る幼い息子。逃げ込んだ井戸の底で出会った美しい女。生き物を黄金に変えてしまう廃液をたれ流す工場。仏師に弟子入りした身元不明の少女。人々を食い荒らす巨大な鬼と、村に暮らす姉弟。父を亡くした少女と巨鳥の奇妙な生活。耳の悪い母が魅せられた、死の間際に聞こえてくる美しい音楽。人との絆を描いた、怪しくも切ない7篇を収録。怪談作家、山白朝子が描く愛の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 二年振り以上に帰省。フェリーで十五時間。
    電波も来ない、途中下車できない状況は自分にとって読書に最適。
    ゆらゆらと波に揺られながら、暗い海を眺めつつ手に取った一冊。
     
    怪談、というよりファンタジー短編集。
    とんでもなくすばらしいわけでもなく、つまらないわけでもない。
    表題作も良かったが、「鳥とファフロッキーズ現象について」のほうが良かった。
    読後、乙一作品の「しあわせは子猫のかたち」をなぜかおもいだしました。

  • 怪しく、切なく、淡いしっとりとした情緒のあふれる短編集。話のジャンルとしては怪奇系の小説なのですが、それぞれの短編ごとに描かれる、死と様々な愛の形が、大仰でもなく、どこか静かに、染み入るように語られていきます。
    その語り口が織りなす空気感と、情緒が生々しい話であっても、どこか静謐で幻想的な雰囲気に物語を変えていく印象を持ちました。どことなく恒川光太郎さんっぽい雰囲気があるかも。

    収録作品は7編。一番印象的だったのは、生き物を黄金に変えてしまう廃液を流す工場を描いた「黄金工場」
    語り手である少年と年上のお姉さんの淡い交流と、人間の欲であったり嫉妬であったりが、残酷かつ寓話的に描かれていて印象的。少年の語り口がどこか懐かしく、一方でもう戻らない悲哀も感じられ、そうした情緒的な面もとても好みでした。

    「鬼物語」は巨大な鬼に襲われる村と姉弟を描いた短編。
    暴れまわる化け物の恐ろしさと、姉弟のそれぞれを想う心が作中終盤に描かれる桜の鮮烈かつ、幻想的なイメージと調和します。

    「鳥とファフロッキーズ現象について」
    何者かに父を殺された少女と、親子で世話をしていた鳥の奇妙な生活を描いた短編。
    鳥と少女のユニークな生活模様のイメージが面白かったのと、ラストの切なさが心に残る。

    表題作「死者のための音楽」は死に瀕した母と娘の対話を描いたもの。
    臨死体験で綺麗な花畑が見えた、という話はよくあるけれど、この短編はそれの音楽版。音楽のイメージ、そして母親の人生と娘への想いが優しく美しい語り口で描かれます。

    山白朝子というのは、ある有名作家の別名義。解説ではOさんと呼ばれています。
    そのOの作品も読んだことがあるのですが、O作品は映画『CUBE』や『SAW』を思わせるスリラーから、不気味なミステリ。
    はたまた、切ないものや古風な語り口まで色々あったので、この山白朝子名義で、そうしたバリエーションの豊かさを抑えて、テーマを統一して描かれている印象がありました。

    一方でO名義で発表されている『CUBE』『SAW』っぽいスリラーと、この話に収録されている「鬼物語」が、同じテーマを宿しているようにも感じます。それでも切り口や設定を変えるとこうも物語の雰囲気が変わるかと、そういう意味でも面白く読めました。O作品はだいぶご無沙汰なのですが、名義別で作品を読み比べてみたくなります。

  • どれも面白かったが、設定された時代が少し古いものが多くてあまり好みではなかった...かな。
    「鳥とファフロツキーズ現象について」が1番好きだった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    死にそうになるたびに、それが聞こえてくるの――。手首を切った母が搬送された病室で、美佐は母の秘密を知る。幼い頃から耳が不自由だった母は、十歳のときに川で溺れて九死に一生をえた。その後、川底で聞いた不思議な音楽を追い求める。夫に先立たれ、一人で美佐を育てた母。彼女に贈られた、美しい音楽とは。表題作「死者のための音楽」ほか、人との絆を描いた怪しくも切ない七篇を収録。怪談作家、山白朝子が描く愛の物語。

  • 面白くなかったわけではないけど、なんだかピンとは来ず…
    山白さん2作目。
    乙一は好きだけど山白さんはあんまり好みじゃないのかもしれないと、ふと……………

    未完の像には火の鳥を感じる

  • 死の間際に聴こえてくるという美しい音楽。
    どれだけ綺麗な音色を奏でてくれるのだろうか。

  • 趣味は焚火のOさんの別名義。
    Oさんの作品は巧みだが青臭い。
    本作品集は巧みさが前面に出て、スマートだ。

    @@@@@

    長い旅のはじまり ※時代物。
    父を殺された娘が、処女にして懐妊。(略……あとは読書メモに。)

    井戸を下りる
    私は若いころ、井戸の底の畳の部屋で暮らす雪と知り合った。(略……あとは読書メモに。)

    黄金工場
    ぼくは工場廃液のそばで黄金のコガネムシを拾う。生き物が黄金に変化するらしい。(略……あとは読書メモに。)

    未完の像 ※時代物。
    仏師修行中の私のもとに、人を殺した償いに仏像作成を教えてくれと少女が来る。(略……あとは読書メモに。)

    鬼物語 ※時代物。
    少女と弟は父なし子。気の触れた母、祖父と暮らし、村から疎まれている。熊のごとき鬼の言い伝え。(略……あとは読書メモに。)

    鳥とファフロッキーズ現象について
    父と私は怪我した鳥を屋根裏で飼う。(略……あとは読書メモに。)

    死者のための音楽
    手首を切った母と駆けつけた美沙とが互いに語り合う。と思いきや、(略……あとは読書メモに。)

  • あの世とこの世の境界を曖昧にする、不思議で切ない7篇。時代も場所もさまざまな設定なのに違和感がなく、どこか懐かしい昔話のような世界が広がっている。
    特に好みだったのは「井戸を下りる」「黄金工場」「未完の像」「鬼物語」「鳥とファフロッキーズ現象について」。もうほとんど全部好みだった。
    どの物語も、読んでいて悲しい予感がある。きっとこの先悲しいことが起こると分かっていて読み進めるのは辛いけれど、その予感を裏切らないで最後にしっかり切ない気持ちにさせてくるところが良かった。
    この切なさは登場人物たちの愛情によるもので、どの物語にもみんなが生きた証があった。余韻に浸っていたい。

  • 1長い旅のはじまり
    2井戸を下りる
    3黄金工場
    4未完の像
    5鬼物語
    6鳥とファフロッキーズ現象について
    7死者のための音楽

    再読..再々読?
    最初に読んだのは5年くらい前の気もする。
    話が分かってて読むのに、またそうだからこそ、心して読まざるを得ない。
    1、2、4、7の輪廻というか永遠というか、なんとも言えない絶望感..
    3は人間らしいところが乙一さん見え隠れしてて好き。
    5、やっぱり怖い。何回読んでも。
    6で今回号泣したのが自分でも意外だった。年取ると感性も変わってくるのかなと。

    2021/06/06

  • 井戸、鬼、巨鳥の話が個人的に好きだと思いました。
    井戸の中で彼らは今も彷徨っているのでしょうか、自分が普段歩いている地面の下でうごめく影を思い浮かべました。
    鬼の話は、かなりなまなましく感じました。血に濡れたような桜の花弁、鬼の気を引いて異世界へ行ってしまった気弱な弟のことを考えると切ない気持ちになりました。
    最後に、巨大鳥の話。何でも願いが叶うというのも考えものだなあと思ってしまいました。鳥はただ恩返ししたかっただけなのでしょうが。ラストはかなりショックでした。

  • 鬼などの不思議な話

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著者プロフィール

怪談専門誌『幽』で鮮烈デビュー。著著に『死者のための音楽』『エムブリヲ奇譚』がある。趣味はたき火。

「2023年 『小説家と夜の境界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山白朝子の作品

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