ミュシャから少女まんがへ 幻の画家・一条成美と明治のアール・ヌーヴォー (角川新書)
- KADOKAWA (2019年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040823140
作品紹介・あらすじ
「本文では明治三〇年代、あるいは世紀末の日本におけるミュシャ受容の細部を追うことを中心とする。そして一九七〇年前後のミュシャの再発見の過程を終章で描く。それ以降のことは少女まんがの読者にとって自明であり、まんが史の歴史的系譜としてそれぞれが自分の敬愛する創り手の中に(時に作者は意識していないかもしれないが)見出すことが可能だからである。」(本書より)
感想・レビュー・書評
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少女まんがとミュシャの関係を、明治時代にさかのぼって、紐解いています。
ミュシャ って少女まんがっぽい、いやいや、少女まんががミュシャっぽい。
経験として知ってきたことのうらには、おじさん文人と少女読者の共依存?共犯?関係があったとは。ちょっと気持ち悪かった。
ただ、大塚さんの分析は析対象を客観的に切り込むだけでなく、『少女民俗学』とか『彼女たちの連合赤軍』などを発表してきたご自分の思考・指向にも向けられているように思う。
男性による少女文化研究として、白眉だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
借りたもの。
日本におけるアール・ヌーヴォーの普及と、少女マンガにそのテイストが取り入れられた理由を紐解いていく。
2019年『みんなのミュシャ』展関連書籍。
雑誌『明星』がアール・ヌーヴォー様式を積極的に取り入れたことは有名だが、その挿絵画家だった一条成美の存在と明治の情勢が絡んでいることを指摘。
ヨーロッパで一世を風靡したアール・ヌーヴォーは、ジャポニズムの流れを汲んでいることもあってか、日本人の琴線に触れ、西欧に通用する“日本的なるもの”として日本で積極的に用いられたようだった。
そして大衆文化面では『明星』が文学において少女の内面を写す抒情的な描写を試みる作風であったことと、そのヴィジュアル化としてアール・ヌーヴォー様式が採用されていたことで結びつく。
それは明示を経て大戦の機運が高まることで禁止され、一度は廃れるのであるが……戦後、少女マンガ界において再発見され、取り入れられてゆく。
『みんなのミュシャ』の会場に展示されていた、60年代カウンター・カルチャーと「花の24年組」など少女マンガに絡む話は、最終章にちょっと触れるくらいだったが、何故、少女マンガにミュシャ…というよりアール・ヌーヴォーの意匠が選ばれたかという点で、明治からの日本人のイメージに内在したものがあったのではないかと考えさせられる。
『みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ――線の魔術』
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