売り渡される食の安全 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 200
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040822983

作品紹介・あらすじ

(章構成)
はじめに
第一章 「国民を二度と飢えさせない」――先人の思いが詰まった法律はなぜ廃止されたのか
第二章 海外企業に明け渡された日本の農業
第三章 自分の畑で採れた種を使ってはいけない
第四章 市場を狙う遺伝子組み換えの米、そしてゲノム編集米
第五章 世界を変えたモンサント裁判
第六章 世界で加速する有機栽培
第七章 逆走する日本の食
第八章 日本の食は地方から守る
あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 『タネは誰のもの』という映画に合わせて読んだ。この中に出てくることが映画では実際に映されており、両方同時に見ると、農業初心者にも分かりやすい。
    遺伝子組み換えやゲノム編集などは報道にもなったから、よく覚えているが、種子法廃止や種苗法改正については噂程度でしか知らなかった。しかしながら、自分や今後の世代を育てる、命に直結する「食」の問題だったので、詳しく知りたいと思ってこの本も映画を見るのに合わせて手に取った。
    私たちはどうやら自分が何を食べているのかもわからないようなものを食べさせれている社会を作り出してしまっているようだ。それを変えるのは自分たちだ。

  • 知らないことだらけで衝撃ばかり。
    https://ciel-myworld.hatenablog.com/entry/2021/04/12/203000

  • 議員の立場から書かれており、なぜ日本がこの様な壊滅的な食料事情になっているのか、裏事情がよくわかった。
    諦めず小さな声でもあげること、食材を買う時にどういうものを選ぶのかが大切だと思う。

  • 色々引っ掛かる記述があるので、この人と反対側の本も読まないとな……。

  • 611-Y
    閲覧新書

  • F1種子と農薬で世界の農業を支配するアグリビジネスの実態とその日本への進出状況がまとめられている。

    世界の種子の70%は、モンサント(バイエル)、ダウ・デュポン、シンジェンタ(中国化工集団)によって生産されており、農薬や化学肥料とセット販売されている。

    1994年にNAFTAが発効すると、モンサントやデュポンなどがメキシコで栽培されていたトウモロコシの種子をゲノム解析して育種登録や応用特許を申請し、それを基にF1品種や遺伝子組み換えのトウモロコシをつくり出した。農家がそれを栽培するにはロイヤリティを払わなければならなくなった。2012年には、種子の一部を保存して翌年に栽培する自家採取を禁止し、種子を毎年購入することを義務付ける法案がつくられた。批判を込めてモンサント法案と呼ばれたこの法案は、農民の猛反対にあって廃案となったが、南米各国でも次々につくられ、コロンビアとグアテマラでは可決・成立した。

    アメリカはUSTRを通じて、日本の主要農作物の種子が公的なものとして保護され、民間に開放されていないとして、WTO協定が定める公正かつ公平な貿易の原則に反しているのではないかと外交圧力をかけてきた。2016年に日本がTPPを批准した時、日米で「投資家の要望を聞いて、それを規制改革会議に付託し、政府はその提言に従って必要な措置をとる」と書かれた交換文書が交わされた。その後、種子法が廃止され、漁業法と水道法が改定された。

    1952年に制定された種子法は、栽培用の種子を採取するために撒く原種と、原種の元である原原種を栽培・生産し、一般農家へ供給することを各都道府県に義務付けるもので、国がその予算を担っていた。2017年の安倍政権下で、種子法を廃止する法律案が国会に提出され、2か月後に可決・成立し、翌年4月に廃止された。同時に種子法に代わる「農業競争力強化支援法」が閣議決定されているが、286もある米の品種を絞り込み、最終的には三井化学の「みつひかり」と日本モンサントの「とねのめぐみ」など数種類に集約する狙いがあったと著者は考えている。しかし、種子法が廃止されて以降、2019年までに11の道県で種子条例が制定されている。

    日本では種苗法によって、農産物を新たに開発した人の知的財産権が保護されているが、自家採取は認められている。しかし、2018年には種苗の自家採取を原則禁止する方針に転じた。農水省は「優良品種の海外流出を食い止める」と説明したが、国内法では海外では効力を発揮できないため、的を射ていないと著者は言う。

    モンサントのラウンドアップについては、2015年にWHOの外部研究機関である国際がん研究機関が、主成分であるグリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」とするグループ2Aに指定した。2018年にアメリカで行われた裁判では、ラウンドアップががんを引き起こす可能性があることを、モンサントが十数年にわたって認識していたことを証明する機密文書が提示されたほか、政治家への献金、政府高官や科学者への賄賂、公的研究機関の買収も明らかになり、モンサントは敗訴した。その後、ラウンドアップはEU各国をはじめとする多くの国で使用禁止や規制対象となり、同年にモンサントを買収したバイエルは25億ユーロの特別損失を計上し、従業員の1割をリストラする結果となった。しかし、日本では野放し状態になっており、2017年にはグリホサートの残留基準が緩和されている。

    グリホサートは植物が光合成によってアミノ酸をつくり出すシキミ酸経路を破壊するが、人間にはシキミ酸経路が存在しないため、人体には影響を及ぼさないと、モンサントは説明してきた。しかし、人間の腸内細菌はシキミ酸経路を持っているため、間接的に健康への影響を与えてしまう。グリホサートはその日のうちに尿とともに排出されるため、体内に残留することはないとモンサントは発表しているが、市民の独自の検査では数人の体内からグリホサートが検出された。

    遺伝子組み換え作物に対する主な懸念として、人体への被害、生態系への影響、一部大企業による食料支配があげられる。日本への輸入が許可され、販売・流通が認められている遺伝子組み換え作物は、大豆、トウモロコシ、菜種、綿など8品目。これらを原材料とする加工食品で安全性審査に合格したものは320種類で、世界で最も多い。このうち、表示が義務付けられているのは33種類のみ。

    ゲノム編集の技術クリスパー・キャス9を開発したダウドナ教授は、「ゲノム編集を食べ物に施すのは危険」と警告している。遺伝子組み換え作物に対して否定的な立場をとってきたEUの司法裁判所は「ゲノム編集は遺伝子組み換えと変わらない」と判断している。アメリカ農務省は「ゲノム編集は遺伝子組み換えに該当しないが、改変の仕方によっては遺伝子組み換えである」としている。日本の環境省は、「ゲノム編集は遺伝子組み換えではない」との見解を発表し、2019年には厚生労働省に届け出るだけで市場への流通を認めた。

  • 3.93/173
    内容(「BOOK」データベースより)
    『私たちの暮らしや健康の礎である食の安心安全が脅かされている。日本の農業政策を見続けてきた著者が、種子法廃止の裏側にある政府、巨大企業の思惑を暴く。さらに、政権のやり方に黙っていられない、と立ち上がった地方のうねりも紹介する。』

    『売り渡される食の安全』
    著者:山田 正彦
    出版社 ‏: ‎KADOKAWA
    新書 ‏: ‎240ページ
    発売日 ‏: ‎2019/8/10

  • 前安倍政権が「種苗法」という法律の改定案を
    国会に提出して、2020年12月に可決されまし
    た。

    実は別名モンサント法と呼ばれ、他国では絶対
    に受け入れられなかった過去を持つ法律なので
    す。

    その前に2018年4月には「種子法」も廃止さ
    れてしまいました。

    それは国が率先して、米、麦、大豆の苗を品種
    改良したり、毎年安全な苗を農家に販売してい
    るという農業の根幹です。

    農家はそれらを植えて、コメなどを栽培してい
    るのです。

    この「種子法」廃止の理由は民間業者が参入
    できるようにするという、なんとなくそれだけ
    を聞けば規制緩和で良さそうに思えますが、
    苗業界にはモンサントというメジャー企業が
    日本市場を虎視眈々と狙っているのです。

    モンサントは遺伝子組換えや、人体に影響ある
    と言われる農薬を売る悪名高き企業です。

    政治家に強いつながりを持っているのと、
    米国の強い圧力もあって、日本はコメの輸入
    ではなく、何とその手前の苗から市場の開放
    を実施しているとも言えます。

    元農水大臣による危機意識を高めるには必読
    の一冊です。

  • 1ページ半しか読んでいないが、誤り4か所、非常に不適切な記述2箇所あり。
    凄いクオリティーです。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/482079239.html

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著者プロフィール

1942年、長崎県生。弁護士。2010年6月、農林水産大臣に就任、12年反TPP・脱原発を掲げ離党。現在は、弁護士の業務に加え、TPPや種子法廃止の問題点を明らかにすべく現地調査や講演を行う。

「2023年 『子どもを壊す食の闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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