シベリア抑留 最後の帰還者 家族をつないだ52通のハガキ (角川新書)
- KADOKAWA (2018年1月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040821757
作品紹介・あらすじ
終わらなかった戦争を、家族は生き抜いた。
最後の帰還者が持ち帰った、奇跡の一次資料。
未完の悲劇、シベリア抑留。最後の帰還者の一人、佐藤健雄さんが妻とし子さんらと交わした葉書が見つかった。
ソ連は国際法違反である抑留の実態を知られぬために、文書の持ち出しを固く禁じていた。
しかし、佐藤健雄さんは妻たちと交わしたハガキを密かに持ち帰っていた!
一つの家族がつないだ奇跡の一次資料を元に、終わらなかった戦争を描く。
<目次>
はじめに
第一章 佐藤家の人びと
第二章 抑留される
第三章 抑留生活の日々
第四章 命のハガキ
第五章 見えない出口
第六章 帰国、再会まで
第七章 ソ連研究の専門家として
終章
おわりに
参考文献
感想・レビュー・書評
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戦争終結に際して、日本人の労働をある程度の期間、提供するっていう約束をソ連と交わそうとしてたんだ…。
この夫婦は、最終的にはまた一緒に暮らせて良かったけど、子どもの成長を見守ることが出来なかったんだよね。奥さん、一人で5人も育てたのすごい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずっと前に読了していたのにきちんと記録に残せていなかった。反省…。
残された手紙をみたときに一級の歴史資料だと判断できる筆者の洞察はすばらしいものながら、一朝一夕になりたったものではないこともその本人の談により明らかにされている。まったくもってそのとおりだ。
奇しくも本書を読み進めていた頃、仲代達矢主演の「人間の條件」(1959-61) を劇場で(日は分けたが)一気に鑑賞できる機会を得たがため、ただならぬ感情でもって読み進めることになってしまった。簡単なことではないがこの「セット販売」、機会があれば続けてゆきたい(計9時間超…)。きっと重みが何倍にも変わってくるし、まさに人間として生きる条件とはなんなのかとうことが分かりやすく伝わってくるはずなので。 -
東2法経図・6F開架:289.1A/Sa85k//K
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シベリア抑留の本は何冊か読んでいたので、本書も似たようなものかと思い、最初は手があまり出なかったが、たまたま見つかったという「家族との52通のハガキ」に心動かされ読んだ。それでも最初のうちは、なにかどこかで読んだような内容だと高をくくっていたが、それもそのはず、栗原さんはぼくが先に読んだ『シベリア抑留』(岩波新書)の著書だったからだ。だから、本書はやはり家族とのハガキの内容に触れたところで生き生きしてくる。ぼくが少し気になったのは、主人公健雄の妻としこが、娘3人と息子、それに義母をかかえ、健雄をときおり批難することである。たとえば、長女は家計をささえるため、嫁にもいかず頑張っている。早く帰ってきてくださいといったことばハガキに何度も書かれるが、それはいつ帰れるともわからない健雄には酷な要求ではなかったろうか。健雄はもともとロシア語を学び満鉄調査部で働いていた。だからこそ、スパイ容疑でつかまり、一番最後の便まで帰してもらえなかった。60万の抑留者のうち、50万人が帰還したというが、そのときの健雄の体はあと半年遅れていたら死んでいたろうといわれるほど弱っていた。歯もぼろぼろだったそうだ。それでも健雄は子どもや孫たちに囲まれ94歳まで生きた。本書では日ソ間の交渉、それに左右される抑留者たちの運命が、家族の52通のハガキの背景を説明するかのようによく描かれている。血肉のあるシベリア抑留史である。