- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040821740
作品紹介・あらすじ
第一章 最年少の新星・藤井聡太
藤井四段の自宅を訪ねる/盤に覆いかぶさった少年/両親は将棋を知らなかった/将棋のプロになるには/抜群の勝負強さ/語彙力豊かな藤井発言/豊富な読書量/得意科目、苦手科目/進学か将棋に専念か/シンギュラリティと藤井四段
第二章 藤井将棋の強さと凄み
強さの源となった詰将棋/デビュー後の幸運/順位戦という制度/内容もすぐれた藤井将棋/角と桂馬を使い方がうまい/将棋ソフトをめぐるジレンマ/藤井四段はソフトを活用
第三章 将棋の才能とは何か
周囲の人々の奇跡的な連携/中学生棋士に天才の家系はいない/何歳で将棋を始めるのがよいか/モンテッソーリ教育/よい指導法とは/好きなこと、得意なことを/将棋か東大か/子供の向き不向き/才能を社会に還元
第四章 自分が中学生棋士だったころ
史上二人目の中学生棋士・谷川浩司/住職だった父の教え/兄の存在と負けず嫌い/成功体験が才能を伸ばした/奨励会に入会/早くから詰将棋作り/阪田三吉と将棋のイメージ
第五章 中学生棋士たちの群像―羽生善治、渡辺明、加藤一二三
史上三人目の中学生棋士・羽生善治
局面を複雑にする羽生将棋/抜きんでた好奇心の強さ/ギアチェンジのうまさ/個性のないことの独特さ/羽生善治の弱点は?/勝負師、芸術家、研究者/羽生さんと私
史上四人目の中学生棋士・渡辺明
目立つ合理主義/渡辺さんの一貫した発言/羽生さんの永世七冠阻止
中学生棋士第一号・加藤一二三
揺るがない信念の人/序盤から大長考/ひふみんアイ/元祖将棋めし/藤井四段デビュー戦の相手に
感想・レビュー・書評
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藤井聡太君フィーバー(この言い方って古い?)の後、関連本がどっと出たが、考察の深さという点ではこれがピカイチではなかろうか。自らも中学生でプロ棋士になった谷川九段が、才能というものについて考えを述べているのだが、これが非常に説得力がある。藤井君みたいな「天才」って生まれつきなのかと思いがちだけど、著者は、はっきりそうではないと言う。
「才能というと、何かキラキラと輝くイメージがあるが、むしろ、どろどろとした情念的なものだという気もする。
情念や熱意に支えられ、継続的な鍛練を重ねたことで結実したものを、私たちは才能という言葉で説明しているのではないか。人間の才能を論じるときは、単に人には『向き不向きがある』ぐらいに考えた方がいい。
早熟な才能とは、幼いうちに自分に向いていること、やりたいことがはっきり見つけられる能力ともいえる。
一つのことを長く続け、知識や経験を積み重ねていくこと。それも単なるルーティンワークではなく、日々新鮮な気持ちで取り組めること。しかも、それが苦にならない。
才能といわれるものの本質はそういうところにあると思う」
なるほど、確かにそうかもしれない。「才能がある」人とは、天分があるだけでなく、自分に向いていることに出会い、それに並外れた情熱をもってとことん取り組める人のことを言うのだろう。将棋に限らず、スポーツや芸術の分野でも、幼い頃から鍛錬することの重要性が良く言われるが、打ち込めることに出会えるかどうかが大事なんだろう。「才能とは結局、自分が好きなことに時間を捧げることが苦にならない情熱の深さの度合いなのだ」ともある。紛れもない才能の持ち主が、実感的に述べている言葉だけに、深く腑に落ちるものがあった。
藤井聡太君に関して多くの筆が割かれているが、他の「中学生棋士」(加藤一二三・羽生善治・渡辺明)についても、著者にしか書けないだろうなという率直な記述があっておもしろい。羽生竜王が例外的に長くトップ棋士であり続けているのはなぜか、いくつかの要因を指摘しているところや、これに対して渡辺棋王が「自分の時代」を築けていないのはなぜかを考察しているところなど、非常に興味深かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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中学生棋士
谷川浩司
2018年5月1日読了。
谷川浩司。1962年生。
加藤一二三九段に次ぐ史上二番目となる中学生棋士であり、羽生世代の1つ上の代にあたる。21歳で棋界の最高峰である名人を獲得した記録はまだ破られておらず、97年には通算5期の名人位を獲得して十七世名人の永世称号を獲得。
終盤の鮮やかな玉詰めを評して「光速の寄せ」の異名を持つ。
谷川浩司九段から見た藤井聡太四段の一冊。
語彙力が豊富で文章力も高い
棋士は「自戦記」という自分の対局の内容を言語化して説明する記事のことだが、簡潔かつ迫力ある筆致で雑誌記者も「一字も直しませんでした」と言うほど。
才能とは
藤井聡太にしても羽生善治にしても、天才とは持って生まれたものではない。
才能とは、継続できる情熱を持てるかどうか。この点については羽生さんの「決断力」渡辺明の「勝負心」でも書いてあって谷川九段も全く同意見。
確かに、他にもプロゲーマーのときどの本にもサブタイトルでありますよね。情熱が大事であると。藤井聡太も将棋に傾けた時間と情熱は同じ年代の人よりも圧倒してると著者は語ってました。
アメリカの全米天才児協会
アメリカには天才児を6つの分野で分けて捉えている。詳細は石角友愛著書「才能の見つけ方 天才の育て方」がある。
知性、創造性、芸術性、リーダーシップ、特定の学問、運動能力
ここで谷川九段が将棋の才能には特定の学問をまず挙げて、プロには知性、創造性。トッププロには芸術性も必要な気がすると言ってたのは興味深い。
一万時間という目安
プロのレベルになるには約10年間。一万時間以上が必要。これは米長邦雄の本にも書いてありましたね。例えば1日3時間、年間1,100時間。9年で約一万時間の計算。小さい時に没頭するものが出来て継続できれば、10代で才能は開花すると。
渡辺明について
羽生世代に1人立ち向かう渡辺明に対して、期待しているという言葉を混ぜつつもかなり厳しい批評が多かった。ジェネレーションギャップや将棋に対する考え、姿勢もあるのだろうけど思う所ある。ってのが滲み出てました。
2017年刊行の本書。
終わりのほうにも書いてあったけど新たな時代を築けるかはこれからの藤井四段の精進次第なんでしょうね。
楽しく読めました。 -
2017年、三浦事案で谷川会長から佐藤康光会長への移行や佐藤天彦名人のポナンザ2連敗があったものの、全体としては藤井聡太四段の大活躍と羽生善治永世七冠の誕生で明け暮れた感があります。谷川浩司 著「中学生棋士」、2017.9発行です。加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、藤井聡太の5人の中学生プロの生い立ちと道筋を描きながら、将棋の才能と何かを探らんとした書です。著者は、将棋であれ何であれ、才能開花の鍵は、本人がいかに一つのことに情熱を傾け続けることができたかではないかと。この本の主役は藤井四段です!
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本当の天才は、その道が好きで好きで夢中になってそれ以外のことが目に入らなくても苦にならないものなのだと納得。
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親はごく普通でも、本人の負けず嫌い、好きさ加減というものが何かを成し遂げるにはとにかく必要ということなのだろう。
親として、出る杭を打たず、自由にやらせてみる寛容さを持っていたい。 -
好きこそ上手
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中学生出身の棋士、藤井聡太、羽生善治、渡辺明、加藤一二三、そして自身について分析した一冊。
最初、藤井聡太の家にまで行って調査しているところに、彼自身の本気度を感じた。
そして、他の中学生棋士に対する分析も、当事者だけあり、的確に思えた。