政府は必ず嘘をつく 増補版 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040820606

作品紹介・あらすじ

「国民に真実が閉ざされる中、これからの時代をどう生き抜いていけばいいのか」。
 9・11以降、貧困化が加速するアメリカの惨状に3・11後の日本が酷似し、「ショック・ドクトリン」により格差が進んだアメリカを検証しながら、悪い情報は隠ぺいされる中、いかに真実に近づけるかを追った『政府は必ず嘘をつく』。東日本大震災から1年後の2012年2月に刊行した同著で警告した懸念事項の数々が、次々に現実となっている。原発事故・放射能に関する情報隠ぺい、ISDS条項(投資家対国家間の紛争解決条項)の怖さも知らずに推し進めるTPP、日本が世界に誇る医療制度である国民皆保険の存続危機とジェネリック医薬品をめぐるアメリカの狙いなど。2012年以降に起こっている諸問題に早くから警鐘を鳴らしていた同著は、その原点をとらえたものとして、今こそ読んでもらいたい内容といえる。
 さらに増補版では、巻末に袋とじで、安倍政権下でついに調印されたTPPの国民に知らされていない真相、導入後も否定的な意見が後を絶たないマイナンバー制度の危険な罠などについて緊急レポート。
 国政選挙を控え、与党が3分の2を占めた後に進めようとしている強権的な政治に対して、国民は何を考え、どう行動をとればいいのか。真実の情報を見抜くことの大切さと、国民が今やるべきことは何かについてまとめていく。

感想・レビュー・書評

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  • 「ルポ貧困大国アメリカ」等、主にアメリカの現状を取材している著者の、日本への警告書。
    執筆は2012年といささか古いが、タイトルに示された言葉は、その蓋然性がより増すばかり。
    3.11を例に、国民がパニックになって国民の眼が政治からそれている時の政府には気を付けるように。国民のためにならない政策がいつの間にか成立していることがあると。
    コロナの現今も、同じことがいえるだろう。
    執筆当時日本が参加表明した、TPPについて論じ、報道ではあまり眼にしなかったISDS条項の危険性に紙数を割いている。
    世界中のどの国もISDS条項の裁判に勝ったためしはないと。勝つのはいつも国籍企業だそうだ。
    グローバリゼーションで恩恵を受けたのは、多国籍企業だけ。そして、グローバリゼーションの波はメディアにも押し寄せている現在、ニュースを見る場合も立ち位置の違うメディアの内容を見比べて真実に近づく必要がある、と著者は強調する。
    外国のジャーナリストたちに取材し、著者が導き出した答えは、
    「大切なのは一つの情報を鵜呑みにせず、多角的に集めて比較し、過去を紐解き、自ら結論を出すこと」
    増補版では、マイナンバーについても批判の手を緩めない。
    「政府は必ず嘘をつく」という言葉は決して誇張ではなく、カギとなるのは知識より、相手側の意図を読みとる想像力と直観力だろうと、最後に述べている。

  • 2012年2月に出されたもの(9・11以降のアメリカ、3・11に直面した日本の実態を取り上げた)に、マイナンバー制度とTPP交渉に関する内容を加えた増補版。国民に真実が閉ざされている社会であるということを具体的な事実を取り上げ解明し、この時代をどう生き抜いていけばいいのかを投げかけた本です。

    前作を発売時に読みましたが、改めてアメリカをめぐる状況の深刻さとそれと同様なことが日本で進行していることの恐ろしさを感じました。マイナンバー制度とTPP交渉、その具体的なこととして出されていることを、深く理解する必要を感じました。ショック・ドクトリンについては、熊本地震の発生を受け、今後起こってくる事態を注視していきたいと思いました。

    「おわりに」に、著者がNHK「課外授業 ようこそ先輩」に出演し、子どもたちに出した「将来暮らしたい社会について創造し、その国のリーダーになったつもりで憲法前文を書く」という授業内容が紹介されています。街で大人たちの意見を聞き、グループで真剣に話し合い、自分たちの頭で考えた文章がとても素晴らしいです。
    「そこでは、みんなが安心して暮らせ、毎日家族一緒に安全でおいしいご飯を食べ、学校には笑い声が響き、一人ぼっちで寂しい人は一人もいなく、動物が大事にされ、世界から信頼され、知らない人同士が『ありがとう』と言い合える。そんな幸せな国をつくることを、ここに誓います」。
    胸があつくなりました。

    政治に無知・無関心であってはならない、みなさんにお勧めの一冊です。

    ・「違和感を覚えた時は資金の流れを追う」
    ・「試されるのは知識よりその取捨選択」
    ・「頼れるものは迷ったときに〈本質〉に戻る〈想像力〉と〈他者への優しさ〉」
    ・「ほんの数歩後ろに下がってみるだけで、世界は違って見えてくる。そしてそこから未来は変わる。自らの頭で考え、意思をもった国民は、簡単に騙せないのだ」
    ・「政府は嘘をつくものです。ですから歴史は、偽りを理解し、政府が言うことを鵜呑みにせず判断するためにあるのです」(ハワード・ジン)

  • 何ということだ。これらの情報を、今まで知らずにいたなんて。政府は真実を教えてくれない。平気で嘘を流す。テレビや新聞の情報を鵜呑みにするのは危険。というか信じちゃいけない。他国の情勢が不安定だとか、政府が国民を騙してるとか、他人事と思っていたけれど、日本は政府が国民をコントロールしているわけがないって思いこんでいたけれど、日本も他国と変わらない。変わらないどころか、もっとひどい。本当にひどすぎる。でも国内にいると、それに気づかない。洗脳されているから。どれだけ極悪非道なのかがわからなかった。
    先に同じ道をたどってきた他国の歴史に学びながら、日本の現状を知ることができる。今起きている問題は、国と国の話ではない。グローバリズムというのは、金が全ての商人の世界観。金の前には命なんて無価値に等しい。金を持つ商人が政府を、メディアを支配下に置き、コントロールしている。お金の流れを見れば、表面だけでは分からないことが見えてくるという教えは、とても参考になる。正しい情報に触れることができ、目が覚める思いです。

  • TPP締結で私たちの生活が脅かされることについて一切言わない政府、そしてありのままの真実を報道しない主要マスコミ。私たち日本人は美徳として公的権力を信じる国民性ですが、政府とは元来、嘘をつくものであるし、主要マスコミは偏向報道が基本ということが本書で納得しました。私たちはイラクやリビヤ、シリアが歴史上、最も中東や北アフリカで安定した国だったのを知らされずに偏向報道のシャワーを毎日浴びさせられています。複数の媒体に触れ、自分で判断することの大切さ、そしてその判断するための前提知識を身につけることの大切さを痛感しました。

  •  この本と続編の「政府はもう嘘をつけない」の2冊を読んで学んだことが3つある。まず、世の中で起こっていることは、最早「国」という単位で考えていては本質はわからないということだ。アメリカは1%の超富裕層と、貧困者を含むその他99%が暮らす国と言われるが、この1%は自分の儲け以外のことを考える能力を持たず、永遠に食い続ける化け物のようなものである。彼ら・彼女らはある種の異常者なので、自分以外の人の幸せ、心情を想像し、思いやることができない。もちろん、自分が住む国の行く末もだ。国境を越えて商売することで自分たちが更に潤うなら、国内の労働者がどうなろうと、その結果国そのものが亡びようと、知ったことではない。こうした連中が「愛国者」でいるのは、その方が商売に都合がいいときだけであり、国家など商売の一要素でしかない以上、邪魔ならば斬り捨てるだけである。彼ら・彼女らにとっては、政治家も国家も私物であり、道具なのだ。
     第二は、本の題名にある通り、政府は必ず嘘をつくということだ。選挙には金がかかる。例えばオバマ大統領は、最初の選挙で750億円、2期目の選挙では1000億円を集めたそうだ。スポンサーはグローバル企業がずらりと名を連ねる全米貿易協議会。こんな風に金をもらって政治家になった人間が、スポンサーである大企業の利益に反することなど実行できるはずがない。オバマが、当初掲げた政治時献金問題も軍縮も、結局実行できなかったのはこうした構図がある以上、当然のことであった。こうして、困窮している人のための政策を掲げた政治家はそれを実行できず「嘘つき」になり、最初からスーパーリッチのためだけの悪政を実行するつもりの政治家は、そうは言えないため、あたかも民衆のための政策のように見せかける嘘をつく。いずれにしろ、政府は必ず嘘をつくことになる。
     そして三番目は、あらゆる条約や協定、政策は、その結果儲かるのは誰か、どの企業かという金の流れを見ればその本質がわかるということだ。例えば、2011年、当時の石原慎太郎都知事は、都民の反対を押し切って強引に、被災地からの瓦礫受けいれを表明した。受け入れた瓦礫の処理は高度な技術を要するということで、特別なフィルターを備え、1日1000トン以上の処理能力を持つことを条件に業者の入札を募ったのだが、この条件に適う業者は「東京臨海リサイクルパワー株式会社」一社しかなかった。こうして事実上入札なしで、処理はこの業者が受注し、税金3年間で280億円がこの業者に支払われることになったのだが、実はこの会社は東京電力の子会社だった。
     要するに東京電力は、自社の殺人的不始末からくる瓦礫処理の費用を一切支払わず税金を使わせただけでなく、その税金による仕事から生まれる利益まで自社で回収するということになる。東京電力は東京都幹部の天下り先であり、また、東京都は東京電力の大株主である。表では絆だの復興だのという情緒的な言葉が躍ったが、金の流れがわかればそんな美辞麗句はすべてまやかしであることがわかる。
     以上のようにこの本とその続編「政府はもう嘘をつけない」の2冊は、物事の本質を見抜くヒントを与えてくれる大変有益な本である。著者にはこれからも我々を啓蒙し続けていって欲しい。繰り返すが、超富裕層もそれに叩頭する政治家も、心の底から体の隅まで冷酷なのだ。TPP、東京オリンピック、米軍基地、原発、高速増殖炉、カジノ、リニア新幹線、武器輸出、大学入試改革、こうしたことについて我々がまず考えなければならないのは、政治家や経済人の並べる理屈ではなく、これらを実行することによって儲かるのは誰か、金はどこへ流れるかである。私は個人的には、上に列挙した事項の中に、理のあるもの、真に普通の人間の幸せにつながるものは一つもないと思っている。
     最後に、この2冊にはこうした醜い流れに抗して成果を収めたアイスランドの例なども紹介されていて、それが希望を与えてくれる。

  • 米国の民主党も石油業界、ウォール街、製薬会社、軍産複合体やアグリビジネスから大口献金を受けざるを得なくなり、その本質は大資本(多国籍企業であり、99%を搾取する1%)のコントロール化にあるという意味では共和党と同じ、日本では、原発を推進してきた自民党、原発事故が起きたときに隠蔽した民主党と、何れも二大政党制とは名ばかりで全てはマスコミも含めて大資本の支配下にあると弾劾し、リビアやイラクなどアラブ諸国の民主化にも疑問を呈する目から鱗の一冊です。グローバル化する世界でどのようにビジネスを推進するかなどの情報は豊富に流通してますが、それが大資本を利する世界であるとの情報はあまり目にすることがありません。特に医薬品の知的所有権や原発の利権構造などは身近な問題でもありとても興味深く読みました。

  • やっぱり、と言った事が書かれていました。国際機関もそんな状況かと思い暗い気持ちになりました。

  • 2021年末の大掃除で発掘した本です、この本は2021年の間に読む本の様ですね。読みかけになっていたために、評価は「★一つ」にしております。内容が不満足だったわけではありません。

    2021年12月29日作成

  • 増補版というように、以前に出版されているものだ。堤氏の得意なネタ。米国追従である限り、嘘をつかざるを得ない状況だ。

  • グローバリズムがもたらしたものは何だったのか。
    企業、投資家が競いたくなる新しい指標は何だろう。
    1%と99%の格差や再分配について知ることから。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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