トンネルの森 1945

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  • KADOKAWA/メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040677132

作品紹介・あらすじ

1945年。少女はたった一人で世界と戦っていた。太平洋戦争さなか、幼くして母を亡くしたイコは新しい母親になじめぬまま、生まれたばかりの弟と三人で千葉の小さな村へ疎開することに。家のそばにある、暗く大きな森の中で脱走兵が自殺した噂を耳にする。耐え難い孤独感と飢餓感はトンネルの森のように覆いかぶさり、押しつぶされそうになった時、イコは兵隊の影を追いかけ森に入るが…。『魔女の宅急便』の著者角野栄子が、自らの戦争体験から描き下した、憫然で、美しい、珠玉の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 児童文学作家・角野栄子さんの自伝的作品。

    戦争の終わりが見えない中で、食べるものが手に入らなくなり、友達のお母さんが亡くなり、空襲でおばあちゃんが亡くなり、お父さんも行方不明に。

    9歳の主人公イコの心は恐怖と不安でいっぱいになっていく。「恐くて恐くてたまらなかった…安心が欲しかった」

    75年以上前の戦争の悲惨さ。
    今も世界各地でこんな思いをしている人達がいるという現実。胸が痛みます。

  • 小学生のイコはお母さんが亡くなって新しいお母さんと産まれたばかりの弟と疎開
    お祖母さんと住んでた時もあったけど、お祖母さんは戦争の空襲で犠牲に…
    疎開先では、今まで住んでいた東京とは喋り方も違うしなかなか馴染めない
    田舎の言葉を真似て、友達になろうとするも
    東京の言葉の方がいいと言われる
    それでも郷に入れば郷に従え精神で田舎の言葉を真似る

    東京に残してきた父親も空襲にあい
    記憶喪失に

    家の近所にある大きな暗い森は
    脱走兵が自殺した場所と言われ
    いつも通る時は、怖い思いを
    なぜかハーモニカの音が聞こえたり不思議な場所

    小さな子でも
    昔はよかったと思う戦時中

  • 国際アンデルセン賞作家賞受賞作品。

    角野栄子さん自身の戦争体験から書かれたもの。

    戦後70年以上がたち、戦争を知らない世代が政治を行っている時代。
    辛いだろう記憶をこうして後世に伝えようとしてくださる人がいることに感謝したい気持ち。
    そして、それをより多くの人に届けなければ、とも思います。

  • 角野栄子さんによる、自伝的作品。戦争をテーマにした本書が、遅蒔きながら角野作品初読みとなった。さすが角野さん、するすると読ませる筆力はさすがである。戦争真っ只中の日本、9歳のイコは継母と幼い弟と共に千葉の郊外に疎開する。不便な生活、馴染めない田舎の学校、なかなか距離の縮まらない継母との関係。天真爛漫なイコだけど、何とか学校に馴染もうと方言を使おうとしたり、必死な姿が涙ぐましい。時代が時代ゆえ、後から継母に気を遣わせるとわかっていながら目の前の食欲に負けたり、疎開仲間の友人と一緒の時間を作りたいがために、朝食の用意を買って出てしくじったり…。子供らしい失敗やわがままが出やすいイコだが、それでも彼女なりに遠慮し、ストレスがたまっているのはよくわかる。一方で、大人の自分から見れば継母の苦労もよくわかる…。(子供目線から読んだら、ちょっとイヤな継母かもしれないけど)。
    そんな二人が、ちょっとずつ歩み寄っていく過程がよい。その反面戦局は厳しさを増し、東京空襲など辛い出来事が続くのだが…。
    戦争のシビアさやるせなさ、時折ほんのり明るくしてくれるエピソード、そして疎開先の「トンネルの森」の、不気味ながらどこか不思議とイコを見守っているような存在感。全てがよくまとまっていて、一気読みでした。挿絵も可愛らしく、作品世界を見事に表現している。
    章立てされていればもう少し読みやすかったかと思うけど(敢えてかな?)、もっともっと世に知られてよい名作だと思う。角野栄子作品、これから少しずつでも読んでいきたい。

  • 前から読みたかった本。受験をする小学生におすすめしてた本だったんだけど、かなりいい内容だった。戦争ものだけど主人公が小さな女の子だから暗くなりすぎず。

    でも、リアルに書かれていてかなり怖かった。というか森の中の兵隊さんが私的には一番ホラーだったな。

  • 素晴らしい本だった。
    私は今のかわいらしい角野さんしか知らなかったけど、小さな栄子さんが実際に体験したことだと思うと胸が締め付けられました。
    こういうことを教えてくれる人もどんどん減っているし国も教えるつもりが無いし、今こそ意識して戦争のことを知らなければと思わされました。
    全学校に置いてほしい。
    大人にもたくさん読んでほしい。
    最近続編が出たようなのでそれも読もうと思います。

  • 良かったです。角野栄子さんにハマっていて、その一環としてなんとなく手に取った本でしたが、何度も目頭が熱くなりました。
    戦争とは比べ物にはなりませんが、コロナが蔓延したときに、「少し前までは、密な映画館で映画見たり、みんなで会食したり…世界がまったく変わってしまった。」と不安に思ったり、悲しい気持ちに押しつぶされそうになったりしたので、イコちゃんの平和だった頃がまるで嘘みたい、と思う気持ちな少しだけわかりました。

    イコちゃんの気持ちもとても共感できるけど、継母の気持ちも分かるような気がしました。継母が悪い人でなくて良かった。
    イコちゃんのお父さんと結婚して、イコちゃんを本当の娘のように育てる決意でいたんだろうけど、自分に余裕がないと、血の繋がらない子どもにそんなに優しくはできないよね。でも、振袖を試着するシーンは本当に心温まって、継母なりの愛情を感じました。

    脱走兵については結局何もわからないまま。飢餓で死んじゃったんだろうか。オバケだったんだろうか。わからない。けど、脱走兵の存在があったから、トンネルの森はイコちゃんにとって孤独の中で特別の存在であり、友達になれたのかな。

    戦争で家族が離れ離れになったり、生き別れたり、孤児になったり…本当に辛い時代があったんですね。
    今の平和に感謝するととともに、海の向こうでは戦争が続いている。1日でも早い平和を願います。
    色々なことを考えさせてくれる本でした。

  • 読まなければいけない話だと思い手に取りました。
    ただただ胸が痛い。イコちゃんはまだ救われたほうなのかもしれない。今後こんなことが二度と起きませんように。

  • 1945年。少女はたった一人で世界と戦っていた。太平洋戦争さなか、幼くして母を亡くしたイコは新しい母親になじめぬまま、生まれたばかりの弟と三人で千葉の小さな村へ疎開することに。家のそばにある、暗く大きな森の中で脱走兵が自殺した噂を耳にする。耐え難い孤独感と飢餓感はトンネルの森のように覆いかぶさり、押しつぶされそうになった時、イコは兵隊の影を追いかけ森に入るが…。『魔女の宅急便』の著者角野栄子が、自らの戦争体験から描き下した、憫然で、美しい、珠玉の物語。

  • #トンネルの森1945
    #角野栄子
    #角川書店
    イコちゃんという少女からみた戦争がえがかれている。子どもの思考や行動ってこうなんだろうなと、共感。子どもが子どもの面倒見たり、いつも空腹に苦しんでいたり、大切な家族を失ったり、苦しい毎日。願わくば映像化して多くの人に知ってもらいたい作品。

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著者プロフィール

1935(昭和10)年、東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、出版社に勤務する。25歳の時からブラジルに2年間滞在し、その体験をもとにしたノンフィクション『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』で作家デビュー。著書に『ズボン船長さんの話』『小さなおばけ』シリーズ、『魔女の宅急便』『ぼくびょうきじゃないよ』『おだんごスープ』『ラストラン』など数多くの絵本・児童文学作品がある。産経児童出版文化賞大賞、路傍の石文学賞、旺文社児童文学賞、野間児童文学賞、小学館文学賞、IBBYオナーリスト文学賞など受賞作品多数。

「2017年 『いろはにほほほ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

角野栄子の作品

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