なめとこ山の熊 (日本の童話名作選)

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784039632807

感想・レビュー・書評

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  •  熊を獲って暮らす猟師の小十郎。恨みも憎しみも無いのに殺生をせねば生きて行けない小十郎はやがて、彼に恨みも何も無い熊の手に掛かり……。


     図書館本。
     宮沢賢治の物語は他の本でいくらでも読めるので、この絵本では絵のみに集中して良いかと。
     木の肌や木目だけで表現された精緻な絵が見もの。1枚完成させるのにどれほどの時間がかかるのか……。

     荒物屋の主人が膝に乗せている猫の柔らかさは、木で出来ているとは思えないほど。
     小十郎の死に関する場面や雪の表現なども、凄いとしか言いようが無い。

     中村道雄の組み木絵本は何作かあるが、私はこの「なめとこ山の熊」が最高傑作だと思う。

  • 生きてゆくということはこういうことなのかな。と思いました。親子熊の会話がたまらない。

  • 「ほかに生きていくてだてを持たぬがために、しかたなく熊を殺して生計をたてていた熊うちの名人が、やはり、人を殺したくて殺すのではない熊のために命をおとします。人間世界を修羅と見て、その克服を求めた賢治のこれは未完成ながら名作の一つ。これを、数10種類の木の肌合いと木目とを選んで絵の各部分をかたぬきし、組み合わせていく中村道雄独得の手法の“組み木絵”で絵本化。」

  • 息子と読んだ。難しい話しだったとのこと。

  • 熊の胆、淵沢小十郎

    熊、漁師、旦那

    たまたま熊に殺されてしまい、最後は熊たちが死体を囲む


    レビュー登録をしたのは25日だけれど、読んだのは3月23日。

  • 熊とマタギとのお互い立場を理解しての戦い、つらいわね…

  • この物語のように
    今生きている命も
    死んでいく命も
    お互いに敬意を払う関係が切ないけど
    すごくきれいで理想的だと思った

  • ぜひ、声に出してよみたい。最期の「許せよ。」がたまらない。彼は目いっぱい、彼の世界を生きたと思う。幾つもの命と同様に。

  • やめとこ山の熊のことならしっている。

  • 05-04-05
    白樺、青空、南風

    こぶし咲くあの丘 北国のああ北国の春



     4月のはじめに、白い花を咲かせるのがコブシです。研究所の通用口の前に植栽されています。

     コブシはモクレン科の落葉高木で、葉が展開する前に花弁が6枚の花を咲かせます。コブシとよく似た樹木にタムシバがあります。タムシバはコブシと花期を重ね、同様な白い6枚の花弁をもちます。コブシは花のつけねには1枚の葉がついていますので、タムシバと区別することができます。

     コブシの花を目印としたことわざがあります。農業にかかわったものが多いようです。

     「コブシの花が咲くと畑豆*1をまかねばならぬ」(佐渡)

     「コブシの花が咲いたら種芋をおこす」(栃木)

     「コブシが咲くともみまきせにゃならぬ、散ると田植えを始めにゃならぬ」(石見)

     「コブシの花の多い年は豊作」(全国)

     

     コブシはサクラとも花期が重なるので、東北地方ではサクラと呼ぶ方言もあります。宮沢賢治の作品『なめとこ山の熊』の中に登場する子熊と母熊の会話の中にコブシが出てきます。さて、どこに出てくるのでしょうか。



    「どうしても雪だよ。おっかさん。谷のこっち側だけ白くなっているんだもの。どうしても雪だよ。おっかさん。」

    すると母親の熊はまだしげしげと見つめていたがやっと言った。

    「雪ではないよ。あすこへだけ降るはずないんだもの。」

    子熊はまた言った。

    「だから溶けないで残ったのでしょう。」

    「いいえ、おっかさんはあざみの芽を見に、昨日あそこを通ったばかりです。」

    小十郎*2もじっとそっちを見た。

    月の光が青白く山の斜面を滑っていた。そこがちょうど、銀の鏡のように光っているのだった。しばらくたって子熊が言った。

    「雪でなけぁ霜だねえ。きっとそうだ。」

    ほんとうに今夜は霜が降るぞ、お月さまの近くで胃(コキヘ)もあんなに青くふるえているし、第一お月さまのいろだってまるで氷のようだ。と小十郎はひとり思った。

    「おかあさまはわかったよ、あれねえ、ひきざくらの花。」

    「なあんだ、ひきざくらの花だい。僕知っているよ。」

    「いいえ、お前はまだ見たことありません。」

    「知っているよ、僕この前とって来たもの。」

    「いいえ、あれひきざくらでありません。お前とって来たの、きささげの花でしょう。」

    「そうだろうか。」子熊はとぼけたように答えました。



     月夜の晩に、雪が残っているように見えるコブシの林ってあるのでしょうか。そんな風景を眺めてみたいものです。



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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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