博物館の少女 怪異研究事始め

著者 :
  • 偕成社
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本棚登録 : 931
感想 : 92
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784038145100

作品紹介・あらすじ

運命に導かれ、文明開化の東京にやってきた少女イカルは、上野の博物館の古蔵で怪異の研究をしている老人の手伝いをすることになる。日本に誕生して間もない博物館を舞台に、謎が謎を呼ぶ事件を描くミステリアスな長篇。

明治16年、文明開化の東京にやってきた、大阪の古物商の娘・花岡イカルは、親戚のトヨの用事で上野の博物館を訪れた際、館長に目利きの才を認められ、博物館の古蔵で怪異の研究をしている織田賢司(= 通称トノサマ)の手伝いをすることになる。
トノサマの指示で蔵の整理を始めたイカルだったが、目録と収蔵品の照合を終えた後、黒手匣(くろてばこ)という品物だけが何者かによって持ち去られたことが発覚した。いったい誰が、何の目的で盗んだのか? 隠れキリシタンゆかりの品とも噂される、この匣に隠された秘密とは?

感想・レビュー・書評

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  • 主人公は、古物商の家に生まれ育ったイカル、13歳。相次いで両親を亡くし、東京の遠縁を頼って上京するところから、彼女の人生が動き出します。
    そして、その遠縁で、河辺暁翠こと15歳のトヨと出会います。
    しずくさんに紹介していただき、「星落ちて、なお」のトヨに、再会しました。他の作品で、出会うって、新鮮な感じですね。ありがとうございました。
    時代は明治中頃、舞台は上野美術館界隈。
    イカルは、古物商で養われた目利きをかわれて、博物館で、働けることになります。二人の少女は、目まぐるしく変化する東京で自分仕事を得て、元気に生活していきます。
    タイトルにもあるように、ちょっと不思議な現象があったり、盗難事件のミステリーを物語に入れたり、子供達に興味を持たせてくれています。もちろん、大人も楽しく読めます。
    日本画、骨董、キリシタンと内容は豊富です。歴史好きな女の子に読書好きにもなって欲しいなあ。

  • 明治初期、古物商の娘13歳のイカルは、両親と死別したため、単身東京の遠縁大澤家で暮らすことになった。旧家の老夫婦は行儀にうるさく気詰まりな思いをしていたイカルだが、ひょんなことからその家の孫のトヨと博物館に行くことになった。そこで出会った館長は、イカルの幼少期を覚えていた。イカルの身の上を案じる館長に、イカルは、博物館の博物館の初代館長、当代随一の目利きと言われる町田に弟子入したいと願い出る。イカルの鑑定眼が確かなものだと気づいた館長は、長期不在中の町田の伝言に従ってイカルを”トノサマ”に預けるという。大澤夫婦から許しをもらったイカルは、週に5日博物館の「古蔵」で助手として働くことになった。初仕事は錠前が壊された折になくなったものを調べるというものだったが、なくなったものは唯一つ、「黒手匣」だけだった。しかしそれは、工芸品としては二足三文の値打ちしかないもの。錠前を壊してまで侵入したのに、他の高価なものには一切手を付けなかったことに疑問を感じたイカルたちは、工芸部から、それが祟り神の匣として祀られていたものだと聞く。そんな折、たまたま通りかかった古物商で、イカルは古蔵のものと対ではないかと思われる飾皿を見つけた。調べてみると総務部から古蔵に回されてきたものは二枚一組だったが、古蔵では一枚しか受け取っていないことになっていた。しかも、他にも受け取り時に紛失したものが多数あると判明し、イカルたちは、美術品の横流しを確信する。そんな折、館長から、ロッシュというフランス人が黒手匣を大金を出してでも買い取りたがっていたことを聞く。

    鑑定眼を持つ好奇心の強い少女が、その洞察力と機転を使い、周りの人たちと黒手匣の謎を解いていく物語。





    *******ここからはネタバレ

    しっかり者で目利きの少女が、両親亡きあと窮屈な家に引き取られ、その鑑定眼を活かして博物館で起きた怪異に取り組んでいく物語です。

    このイカルは、かなりのしっかりものですね。
    目利きに加えて、年長者とのやり取りもしっかり的を押さえています。論理的思考力も充分あるので、目の前の矛盾を見逃しません。
    現在の13歳といえば中学1~2年生。やっぱり明治初期は今とは子どもの成長スピードも子どもに求められるものも違っていたんでしょうね。

    イカルが博物館に来ることを見越して、「西から鳥が来たらトノサマに」という伝言を残した初代館長の町田にはでき過ぎ感を持ちましたが、それを除けば博物館ミステリーとしても楽しめるお話です。

    さらに、不老不死についても考えさせてくれます。「死」とは良いものなのか、忌むべきものなのかについても。
    これについては、シェリー・ケーガン著の「「死」とは何か」でも論じられていましたね。

    一番残念に思ったのは表紙の絵。着物を着たイカルが描かれているんですが。右脇になぜかスリットが入っています。よっぽどよっぽど身幅の小さい着物を着ない限り右脇から長襦袢が見えるようなことにはならないはずなんです。
    イカルの世話になっている大澤家はきちんとした身なりをするように言っていたので、こんな着物を着せるはずがないんですよ。
    挿画は禅之助という方のようですね。編集担当さんもお気づきにならなかったんでしょうか。
    気に入った本だけに、表紙を見るたびに残念な気持ちになります。

    ちょっと謎解きに頭を使いますが、刺激的な表現もほとんどないので、読める子なら中学年からいけます。

  • 明治時代のお話。
    主人公、花岡イカル。
    角に鳥と書きイカル、美しい声で鳴く強い鳥から付けたらしい。
    古道具屋で育ったというだけあって、
    十三の頃にはものを見極める目を持って
    しまう。
    だが両親が亡くなる。母親は自分が亡くなっても、イカルの身の立つように整えておいてくれた。

    イカルは大阪から、東京へやって来た。遠い親戚だというその家では、母親に返しきれぬ恩がある、という。イカルにお茶、お花、お裁縫、どこへだしても恥ずかしくないように、しかるべき家に嫁がせる、と言う。
    イカルは、大変な家へ来てしまった、とうんざりする。

    この後、この家の孫娘トキと仲良くなり、イカルはトキの用事に連れられて
    来た博物館に強く興味を持つ。
    トキの紹介で、博物館の館長に出会い、
    博物館の蔵の手伝いをすることになり、
    古道具屋の娘の力を発揮する。


    イカルはお裁縫などから開放され、ほっと一安心といった感じ?
    蔵から紛失した収蔵品などの事件がこのお話の目玉。

    富安陽子さんの新刊、というので興味を
    持った。
    富安さんというと、シノダシリ―ズ!
    良く、夢中になって息子と読んだ。
    このような本もあることに、新鮮さを
    感じた。でも、ジュ二ア版のようだ。
    図書館本のバ―コ―ドは、一般書と色が
    違う!


    2022、3、11 読了

    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、博物館にまつわるお話しですね。古道具屋と博物館、確かに見せ方とかは似ていそうですね。息子さんとの共読、楽しそうだけど★3か。。...
      ゆうママさん、博物館にまつわるお話しですね。古道具屋と博物館、確かに見せ方とかは似ていそうですね。息子さんとの共読、楽しそうだけど★3か。。。お疲れ様。
      2022/03/15
  • 富安陽子さんは、古事記から伝説、あやかしなどを現代の物語にうま〜く融合させる作家さんだ。
    面白い本ありますか、と生徒に聞かれたら富安さんの「天と地の方程式」を勧めることも多い。
    古事記と謎解き脱出ゲームが詰まったような、スピード感のある作品で、リピート率はすこぶる良い。

    そんな富安さんの新作とあって、ネットギャリーで早速読んだ。
    主人公の少女イカルの生い立ちと、東京で暮らし始めるまでの序盤が少し長い気もしたが、イカルが上野の博物館にたどり着いてからは、スピード感のある展開で、ハラハラドキドキ。この人味方なの?え、犯人だれ?と、どの人も怪しく見えてきたり、忍び込んで大丈夫なの?見つかる〜!とページをスクロールする手が止まらない。

    自分と地続きのようでいて、見知らぬ景色が現れる妖の気配が残る明治時代の物語。
    博物館をテーマにした小説や、中学生が大好きな文ストシリーズなどとコラボして展示企画しても面白いかな、と思う。
    発売されたら、購入したい。
    2021.11.23

    • 地球っこさん
      ロニコさん、おはようございます。

      今日発売日ですね。
      わたしも富安陽子さんは大好きなので、ロニコさんのレビューを読ませていただきながら、楽...
      ロニコさん、おはようございます。

      今日発売日ですね。
      わたしも富安陽子さんは大好きなので、ロニコさんのレビューを読ませていただきながら、楽しみにしてました。

      「天と地の方程式」は、わたしも大好きで、手元においてます。
      2021/12/06
    • ロニコさん
      地球っこさん、おはようございます^_^

      コメントを頂いていたのに、気が付かず本当にごめんなさい。

      最近読む方に追われて、ブクログをあまり...
      地球っこさん、おはようございます^_^

      コメントを頂いていたのに、気が付かず本当にごめんなさい。

      最近読む方に追われて、ブクログをあまり開いておりませんでした。
      ブクログを見ると、また読みたい本が増えてしまい強迫観念にとらわれてしまうというか…。ネットギャリーという書店や図書館関係者がアクセスできるアプリも入れたので、本当に読みたい本が山積みです…( ̄ー ̄ )

      ところで富安陽子さんですが、地球っこさんもお好きな作家さんと伺い、とても嬉しいです!
      5年ほど前になると思いますが、富安さんの講演会に参加しました。お話が本当に面白く、もっと聴いていたい!と思ったことを覚えています。
      子どもたちは小さい頃、「やまんばあさん」シリーズが大好きでした。

      最近、「愛の不時着」を時間のある時に、ちょこちょこ観ております…竜巻で不時着無理だろ!とツッコミを入れながら^_^
      2021/12/18
    • 地球っこさん
      きゃあ、ロニコさん、おはようございます♪
      お久しぶりです、お元気でしたか?

      ブクログ強迫観念、わかります。それに加えてロニコさんはお仕事の...
      きゃあ、ロニコさん、おはようございます♪
      お久しぶりです、お元気でしたか?

      ブクログ強迫観念、わかります。それに加えてロニコさんはお仕事の関係からも読みたい本が増えていきますものね。
      本は楽しくマイペースで読むのがいちばんですから、コメントのことなんて全然気にしていただかなくて大丈夫ですよ。

      そんな私も、富安さんのこの本も早く読みたいと思いながら積読本がなかなか減らなくて、まだ読めてないんです、悲しい~
      そのなかに斉藤洋さんの『クヌギ林の妖怪たち』という富安さんの『クヌギ林のザワザワ荘』を考察した本もスタンバってます。

      富安さんの講演会ですか!
      うわぁ、私もぜひとも聴いてみたいです。面白そう!

      ところで『愛の不時着』のロニコさんのツッコミ、笑っちゃいました。
      私はどっぷりハマってしまいましたが、さてロニコさんはどうでしょうか。また感想聞かせてくださいね。
      私はNetflixでは『ヴィンチェンツォ』にハマって、そこからソンジュンギさんの『太陽の末裔』にキュンとなり、しばらく余韻に浸っておりました……
      時代劇は『花郎』観ましたよ。もうこちらにもどっぷりで、沼から沼へ渡ってはハマり続けておりまする 笑
      朝鮮王朝だけでなく、今は新羅のことも知りたくてたまりません。
      2021/12/18
  • 【発売前から絶賛の声続々!】富安陽子が描く、上野の博物館を舞台にした明治時代✖︎あやかしミステリー|株式会社 偕成社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000026693.html

    博物館の少女 怪異研究事始め | 偕成社 | 児童書出版社
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784038145100

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ベスト 『博物館の少女 怪異研究所事始め』 | 教文館ナルニア国
      https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/...
      ベスト 『博物館の少女 怪異研究所事始め』 | 教文館ナルニア国
      https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/weblog/33847
      2022/02/18
  • 富安陽子さんだ!
    たくさんの児童文学を楽しませていただいた
    少し前の発行だけれど、是非にと図書館予約

    明治の風俗を切り取って楽しく読んだ
    道具屋 
    博物館
    キリスト教会 
    不思議な島と黒い箱

    『あやかし』を優しく描く作者
    少女花岡イルカの成長も楽しい

    ≪ おかあちゃん うち飛んでみる 青い空 ≫   

  • 主人公は、美術品の審美眼を持つイカルちゃん。
    両親との別れで孤独になる運命になりながらも、
    力強く生きていく♪
    イカルちゃんがとにかくいいコで可愛い♡

    舞台は明治時代の上野。
    軽快で読みやすい文章で、
    賑やかな当時の上野の姿が色鮮やかに思い浮かぶよう。

    イカルちゃんの活躍で骨董品の謎解きをするも、
    謎が解けてスッキリ!
    というより、
    切なさがじわ〜と滲むラスト。

    うーん、こういうの、好きかも。

    イカルちゃんのほんのり恋模様も気になるところ♡


    富安陽子さんの作品はこれが初めて。
    他の作品も読んでみよう〜と思いました☆

  • 謎解き冒険譚の一冊。

    時は明治、ランプが灯る時代。
    上野の博物館で手伝いを始めた13歳の花岡イカルが、冒険心ほんのり、盗難事件の謎解きをするストーリー。

    YAに分類されながらも大人が手にしても充分惹きこまれる。

    自分の知らない時代の東京、上野の雰囲気を味わい、博物館はもちろん動物園の様子までうかがえたのが楽しかった。

    仕事を覚えるイカルの胸の高鳴り、なぜ?どうして?と黒い手匣を追う好奇心も心柔らかに掻き立てる気持ちよさ。
    そしてさりげなく盛り込まれた響く言葉が良かった。

    青空見上げたくなるような読後感も清々しくて好き。

  • 両親を亡くし、大阪から母方の親戚の家へ移った、イカル。
    ひょんなことから、上野の博物館の古蔵で、〈トノサマ〉の助手を務めることになり……。

    道具屋で育ち、目利きのイカル。
    好奇心旺盛で、東京で出会った一流のものに、素直に感嘆するイカルが、子供らしい魅力でさわやか。

    博識だけれど偏屈で、振り回されることもあるけれど、根は悪い人ではない。
    〈トノサマ〉こと織田賢司の存在も、おもしろかった。

    奉公人アキラとのちょっと甘酸っぱい協力関係や、河鍋暁斎の娘・トヨとの友情など、子ども同士の関係性もあたたか。

    古蔵からなくなった、黒手匣の謎を追うイカルたち。

    怪異がすっきり解決するのかと思いきや、不思議な力は不思議なままだったのは、意外。

    キャラや設定がよく、続編があってもいい終わり方。

  • 明治時代,花岡イカルは親を亡くし上京。博物館で御蔵掛のトノサマの助手になる。盗難事件で紛失した黒手匣に纏わる怪異。不老不死を求める人間。限られた命だからこそ尊い。「死は忌むべきものではない」

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著者プロフィール

1959年生まれ。1991年『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房)で第24回日本児童文学者協会賞新人賞、第40回小学館文学賞を受賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社)で第15回新美南吉児童文学賞を受賞、2001年『空へつづく神話』(偕成社)で第48回産経児童出版文化賞を受賞、『盆まねき』(偕成社)により2011年第49回野間児童文芸賞、2012年第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、2021年『さくらの谷』(絵・松成真理子 偕成社)で第52回講談社絵本賞を受賞。絵本に「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(絵・降矢なな 福音館書店)、「オニのサラリーマン」シリーズ(絵・大島妙子 福音館書店)などがある。

「2023年 『そらうみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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