軽装版 風と行く者 (軽装版 偕成社ポッシュ)

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037502003

作品紹介・あらすじ

つれあいのタンダとともに、久しぶりに草市を訪れたバルサは、若い頃に護衛をつとめ、忘れ得ぬ旅をしたサダン・タラム〈風の楽人〉たちと再会、その危機を救ったことで、再び、旅の護衛を頼まれる。
シャタ〈流水琴〉を奏で、異界への道を開くことができるサダン・タラム〈風の楽人〉の頭は、しかし、ある事情から、密かに狙われていたのだった。ジグロの娘かもしれぬ、この若き頭を守って、ロタへと旅立つバルサ。
草原に響く〈風の楽人〉の歌に誘われて、バルサの心に過去と今とが交叉するとき、ロタ北部の歴史の闇に隠されていた秘密が、危険な刃となってよみがえる。

感想・レビュー・書評

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  • 前作「炎路を行く者」に収録されている「十五の我には」で、サダン・タラムという人たちが出てきて、「はて、こんな人たち、今まで出てきたっけな?」と思っていたら、本作で出てきた。

    あとがきによると、本作を書き始めたものの行き詰って、本作の一部として「十五の我には」が先に出来上がったそうな。
    毎度のことながら、上橋さんの頭の中はどうなっているのか。あれやこれやと辻褄が合わなくならないほど、世界観が完成しているのかと、ため息が出る思いだった。

    タルシュとの戦後、タンダと向かった草市で偶然にもサダン・タラムを助けることになり、さらにそのまま旅を護衛することとなったバルサは、20年前ジグロとともにサダン・タラムを護衛したことを思い出す。話は20年前のサダン・タラムとの旅をたどりながら進む。

    なんといってもジグロのかっこよさよ。一流の護衛士というだけでなく、思慮深く、全てを俯瞰した作戦をとれる賢さ、他人の気持ちを汲むことのできる温かさ、申し分のない男ではないか。サリとの関係、むふふふふ・・・・。

    そして、バルサもそんなジグロに育てられただけあって、立派な大人になったねぇ(どこのおばちゃん?)。
    終盤、バルサが、エオナに、もうだいぶ前に逝ってしまったジグロの声が聞こえる気がするときがある、と語ったとき、人が生きるって、命があるときだけのことではないんだな、としみじみと感じた。

    しかし、サダン・タラムの頭を狙った今回も20年前も、端的にいえば、民族同士の争いが発端。現実に目を向けるとロシアとウクライナも・・・。アール家とマグア家の長い長い緊張状態に少し驚きをもって読み進めた。これ、バルサが護衛しなかったら、両家の争いはずっと続いてたんでないかと思う。

    バルサを誇らしく思い、ジグロがまたさらに身近に感じられるお話だった。

  • ジグロと旅をしていたころに 出会った 芸能を生業とするサダン・タラムと再会し、今再び、護衛を頼まれるバルサ。
    在りし日のジグロの姿が、今の自分を作っていることをあらためて確認するバルサの話と平行して、近しい二国間関係がちょうど良い距離・間柄を保っていくことの難しさもテーマになっている。

    ちょっとてんこ盛りすぎて、説明過多になってしまっているかなぁ ...........
    仕事の依頼の仕方が云々、というのは上橋さんご自身のことが投影されてますね。
    ギャラの話ね。
    ジグロの艶聞はあってよし。

  • 私の人生を象ったのは小野不由美著の十ニ国記シリーズなのだと思うが、その布石として本の世界を開いてくれたのは間違いなく、上橋菜穂子著の守り人シリーズだと思う。守り人シリーズに小学校2年生に出会っていなければ、十二国記に中学1年生で出会えていなかっただろう。

    この外伝は出ていることを知らず、ふと手に取った。瞬時に物語の中に入って、特に今回はジグロとバルサ、サリとエオナ、オリアとルミナの親子の関係が胸を打ちすぎて、ああ上橋さんの文章、関係性、そして行間にある余韻がとても好きだと改めて思った。子供の頃はそれが物足りなく感じることもあったのだけど、今読むとこれでいいな、十分雰囲気が語りきってると思いました...この20代後半になったからこそわかること、胸が痛いこと、心でしか会えない人の存在を感じることの温かさと悲しさが本当に胸にきました...これは守り人シリーズ改めて読み直したいと思います。もともと闇の守り人が好きだなと思っていたけど、さらにその想いが強くなりそう。

    • workmaさん
       小学生の時に上橋菜穂子さんの本と出会われたのですね! 

       自分は、上橋菜穂子さんも、十二国記も、ゲド戦記も…(ファンタジーの名作の数々)...
       小学生の時に上橋菜穂子さんの本と出会われたのですね! 

       自分は、上橋菜穂子さんも、十二国記も、ゲド戦記も…(ファンタジーの名作の数々)…20代以降に読んだので、うらやましいです。
      自分の10代の頃は、アニメ・まんがのファンタジーに ハマっておりました。

       守り人シリーズは既読ですが、この外伝は未読なので、コメントを見て読みたくなりました。ありがとうございます。
      2021/03/22
  • 精霊の守り人シリーズのあと、あのバルサとタンダは結ばれ、大きな戦いで片手を失ったタンダの腕になり助けています。
    ある薬草市で、昔ジグロとともに、用心棒になって旅した「風の楽人」旅芸人集団サダンタラムと再び縁が。

    その旅は、ある二つの部族の悲しい物語が。
    暗躍する暗殺集団。

    それはなぜか?謎を解いてゆくうちに、新しい道が拓けて。。。

    あの懐かしいファンタジーの世界が再び!
    上橋菜穂子ファン必見!

  • 守り人シリーズ外伝。

    守り人シリーズを読んだのが数年前なので、前の戦の事情とか、殆ど覚えていなかったのですが、さすが上橋さん。物語の世界へずんずん引き込まれていきました。
    サダン・タラム〈風の楽人〉の頭の護衛を請け負ったバルサ。過去にもサダン・タラム〈風の楽人〉達と共に旅をした時の話が挿入されている構成です。
    まだバルサがジグロと共に旅をしていた頃、10代のバルサとジグロとの厳しくも固い絆が素敵です。ジグロは本当に“プロ中のプロ”という感じでゆるぎないものを感じますね。
    バルサもこの頃の感情の揺れを乗り越えて、その後のブレないカッコイイバルサに繋がってゆくのですね。
    ジグロとサリのロマンス(?)や、話の本流にある民族間の確執など、読み応えも満足です。やはり『守り人』好きですね~。

  • また守り人の世界に浸れた。
    ジクロがバルサのことをとても大切に思っていることが見えて胸が温かくなった。
    全てを捨てて逃亡生活をする中でジグロがどんなことを思っていたか想像して、この世の不条理をすごく感じた。

  • 「読書メーターの本のプレゼント」でいただきました。久しぶりの守り人シリーズの作品に、読み終えるのがおしいと思いながらも、面白くてやはり一気読み。若くて尖りまくってるバルサと、あの大戦の後タンダと穏やかな時間を過ごしてるバルサ、両方を読むことができる作品でした。

    • workmaさん
      読みたくなりました。ありがとうございます。
      読みたくなりました。ありがとうございます。
      2021/03/22
  • 少女時代のバルサとジグロが護衛したことがあるサダン・タラムを再び護衛することとなったバルサ。
    これに絡む氏族間の因縁。久々に、あの世界に浸れた。

  • 新潮の100冊フェアより。
    フェア用小冊子には1冊しか紹介されてませんが、シリーズ合わせて10冊以上(100冊フェアあるある)。
    メイン対象の小中学生の邪魔をしたら悪いので、図書館で借りて→即読みしてました。

    読み応えのあるシリーズで面白かったです。

    世界観をゼロから書いてる作品は久しぶり。
    例えば、シェアードワールド作品・なろう系作品などはユーザの読書歴(ゲームプレイ歴)を拝借することで、世界観の構築や描写を省き、書きたいものをダイレクトに書いてるかと思います。
    あるいは、現代〜歴史物も馴染みのある世界と言葉が登場します。
    それらに比べて、「守り人シリーズ」は地図や食べ物、着るもの、言葉の違いや風習の違いを丹念に書いて世界観を構築してます。だから、読んでる最中に自分が旅をしている感覚、「この言葉は何?」「どんな食べ物?」という迷う感じや新鮮さがありました。読んでて楽しいです。

    (最高に分からなさを感じたのはル・グウィン『闇の左手』かなあ。ほんとうに異星人の気分。)

    人生のあれこれの書きっぷりも良いです。
    キャラクターの年表とか細かいプロフィールとかありそうだなあと、その裏側の作業の深さが感じられます。
    なんというか、いわゆる「深イイ話」ってそれを狙って書くと薄っぺらくなることが多く。守り人シリーズはその逆で、キャラクターと世界の描写から滲みでる感じ、本当に生きてる人みたいな必死さ、切なさ、いじらしさがあって胸にきました。

    読み終わってしまって残念です。

  • つれあいのタンダとともに、久しぶりに草市を訪れたバルサは、若い頃に護衛をつとめ、忘れ得ぬ旅をしたサダン・タラム〈風の楽人〉たちと再会、その危機を救ったことで、再び、旅の護衛を頼まれる。シャタ〈流水琴〉を奏で、異界への道を開くことができるサダン・タラム〈風の楽人〉の頭は、しかし、ある事情から、密かに狙われていたのだった。ジグロの娘かもしれぬ、この若き頭を守って、ロタへと旅立つバルサ。草原に響く〈風の楽人〉の歌に誘われて、バルサの心に過去と今とが交叉するとき、ロタ北部の歴史の闇に隠されていた秘密が、危険な刃となってよみがえる。

    守り人シリーズは随分久しぶりなんですが、読み始めたら一気にあの世界の中へ引きずりこまれてました。作り込まれた世界観と相変わらず食事の場面が細かくてとても美味しそう!(笑)バルサとジグロの旅が回想として描かれていて、キイやサンサたちとの会話など、小さなところで若きバルサが背負った苦しみの深さが現れます。つらい中でもバルサのことを心から大事に思って気にかけていたジグロの気持ちもサリの目線から描かれていて、血は繋がっていなくとも2人は親子だったんだなあと実感するエピソードでした。どんな人生でもすべてをやりとげることは難しく、その先は未来へ託すしかないと言いながら、それでもできることを一つ一つ積み重ねていく彼女の生き方に読者たちは共感するのかもしれません。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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