軽装版 炎路を行くもの 守り人作品集 (軽装版 偕成社ポッシュ)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037501501

作品紹介・あらすじ

タルシュ国の密偵アラユタン・ヒュウゴの少年時代と、女用心棒バルサの少女時代を描いた中編2編。人気シリーズ軽装版。

感想・レビュー・書評

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  • あのヒュウゴの少年時代の物語。タルシュ国密偵アラユタン・ヒュウゴ。やたらと気になる存在だったあのヒュウゴ。
    バルサやチャグムにとって、敵対する関係のはずなのに、完全な敵ではない。
    ラウルを説き伏せた能力の持ち主。

    なぜ、あんなにもヒュウゴという人物が心に残ったのか、本作の上橋さんのあとがきで納得。ヒュウゴのこの少年時代の物語は、ヒュウゴが登場した時点で出来上がっていたとのこと。だから、ヒュウゴがあんなにも、登場人物の中でも際立つ存在となっていたのだ。

    本作は守り人シリーズのスピンオフみたいな位置づけなのだろうけど、もはやひとつの物語として完璧に出来上がっている気がする。
    ヒュウゴが家族全員を奪われるという辛く厳しい体験から、どのようにしてタルシュの密偵になっていくのか。ヒュウゴの心の変化がありありと伝わってきて、その心情描写に舌を巻く。
    リュアンとヨアルとの交流は本当に胸熱で、なんなら守り人シリーズで一番というほど涙が込み上げてくるし、ならず者として生活を送らざるを得ないヒュウゴの状況も痛いほどよくわかった。
    上橋さんは人間の醜い面、守り人シリーズでいえば、暴力に酔って快感を得てしまう人間の残虐な一面も隠すことなく、フラットに描く。そこに特別な感情はなく、「人間ってこういうところがあるんだよ」と諭されているようで、どんなに「暴力はダメ」と言われるより、心に響くものがある気がする。

    国が滅ぼされるって何なんだろう。生き残った者は侵略者に頭を垂れてはずかしくないのか。いや、見えていないのだ。なぜ、どこかに生き残っているはずの帝は侵略者により苦しめられている民を救わないのか。そう、自分には、見えていないのだ。色々なものが・・・・

    と顔をあげ、前に進むヒュウゴがまぶしかった。

    あと、バルサの15歳の頃のお話も収録されていたけれど、ヒュウゴの話の感想で力尽きたので、こっちの感想は割愛・・・(笑)

  • 短編だが、ヒュウゴが家族を殺されてからの物語とバルサがジグロとの旅が書かれてる。

  • 図書館で。
    新ではないヨゴ帝国出身の密偵さんの過去話。
    教育ってのは洗脳と一緒ですね。育てられた環境で是として教えられたことを人は往々にして正しいと思い込むわけですがその常識が根本からひっくり返った時に何を思いどういう行動に出るのか。彼は世の中の裏の裏まで知るような仕事に就いた訳ですが何ともなあ…。切ない話です。
    自分の世界だけしか知らず、近視眼的にその日その日を精一杯生きるという生き方も別に不幸な訳ではないんだけどな。という訳で色々考えさせられました。

    バルサの短編は15歳のバルサの失敗話というか父娘の情の強い話。そういえばバルサも実の息子ではないけれどもチャグムが息子のようなものだしある意味似た者父娘なんだろうなあ…

  • 精霊の守り人外伝

  • ヒュウゴ。
    これを読んだら、チャグムにかけたくなった理由がよくわかる。

    十五の我:作中に出てくる詩がいいな。
    シリーズの他のものもだけれど、ぐっとくるものがある。
    例えば10代だとかそれ以前に読んでいたらどう感じたんだろうな。

    英語圏の出版業界では児童文学の主人公が子供でないといけない
    なんて知らなかったな。小学生も大人が主人公のドラマや映画を見ることは
    あるから、そういう話でも楽しめそうではあるけれど。
    考えてみると、児童文学の定義って知らないな。

  • タルシュ帝国のヒュウゴの物語。
    王の楯の長男として育ったヒュウゴが、タルシュ帝国にすべてを奪われ、底辺を生きながら、様々な出会いから自分の生きていく道を選ぶまでの物語。

    バルサが用心棒として成長していく姿が、悲しいけど、その強い生き方が素敵だ。

  • 先日、『風と行く者』を読んだときに、巻末の既刊本紹介のページで本書の存在を知り(不覚!)、急々図書館から借りてきました。
    本書は『蒼路の旅人』に登場した、ヒュウゴの若き日の姿を描いた「炎路の旅人」と、十五歳の頃のバルサを描いた「十五の我には」の2編構成になっています。
    上流武人の家に生まれながら、タルシュ帝国との戦で人生を狂わされたヒュウゴの、叫びたくなるような焦燥が手に取るように伝わってきますし、少女のバルサが“ジグロのお荷物になりたくない”という思いからくる苦悩も、その後のバルサを形成する一過程だったと思えます。
    世界観も見事ですが、人物像もしっかり掘り下げる、上橋ファンタジーの奥深さを感じさせる一冊でした。

  • 上橋 菜穂子の作品は、たしかに面白いのだが、途中で読むのが馬鹿らしくなっってしまった。
    それでも、ヒュウゴはなぜ・・・? バルサはどうして・・・?につられて読了。
    あとがきを読んで分かったが、守り人シリーズをよんでから、この番外編を読むのが正しい!順序だったらしい。
    著者もそのことを配慮して本書の出版を控えていたとのこと。
    ヒュウゴがどんな役回りかを知らずに本書を読んだのは、失敗だった。( T o T; ) 

    TV番組「精霊の守り人」実写編は、2016/3/19にスタートに一段落。 
     → URLはこちら http://www.nhk.or.jp/moribito/ 『精霊の守り人|NHK放送90年 大河ファンタジー 』 : 
    引き続き、2016/4/29 URLはこちら http://www6.nhk.or.jp/anime/program/detail.html?i=moribito 『アニメ「精霊の守り人」 』 :  再放送 スタート
    『放送90年 大河ファンタジー「精霊の守り人」は、第1シーズンが4月9日に最終回を迎えました。
    総合テレビではドラマの好評を受けて、2007年に制作、NHKBS2で放送したアニメ「精霊の守り人」全26話を4月29日から放送することが決まりました!』 

    2016/03/15  予約 4/26 借りる。4/28 読み始める。5/7 読み終わる。

    内容と著者は

    軽装版 炎路を行くもの 守り人作品集 (軽装版 偕成社ポッシュ)

    内容 :
    ヒュウゴはなぜ家族を殺した国の王子に仕えることになったのか。
    バルサは養父ジグロとの放浪の旅の中で、どうやって成長していったのか。
    守り人シリーズ「番外編」にあたる「炎路の旅人」「十五の我には」の2編を収録。
    内容紹介
    タルシュの鷹(ターク)アラユタン・ヒュウゴはなぜ、自分の祖国(そこく)をほろぼした男に仕えることになったのか。
    そして、バルサは養父ジグロとの旅の中で、どうやって成長していったのか。
    「天と地の守り人」で語られることのなかった、アラユタン・ヒュウゴとバルサの2つの物語を収録(しゅうろく)。

    著者 : 上橋 菜穂子
    立教大学大学院博士課程単位取得(文学博士)。専攻は文化人類学。
    オーストラリア先住民であるアボリジニを研究。川村学園女子大学特任教授。
    「精霊の守り人」で野間児童文芸新人賞などを受賞。


    絵 :
    佐竹美保
    二木真希子

  • 8:久しぶりの守り人シリーズ。読みそびれていたのを借りてきました。どの作品でも、エッセイでも、上橋さんの文には難しい言葉がなくてシンプルなのに、ぐさりと刺さるものがあります。変に凝っていないから、純粋だからこその力。
    暴力という強大な魔物、その快楽に溺れかけた若き日の二人がその過ちに気づいたときの恥じらいや後悔がまざまざと感じられて、やっぱり上橋作品はスゴイ……とため息しか出ません。

  • ヒューゴの生き様がよくわかる。それにしても作者はこのような設定と世界観をどうやって作り出すのか?神の才能としか思えない

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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