軽装版 蒼路の旅人 (軽装版 偕成社ポッシュ)

著者 :
  • 偕成社
4.29
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本棚登録 : 650
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037500801

作品紹介・あらすじ

タルシュ帝国がせまり、不安がたかまる新ヨゴ皇国。皇太子チャグムは罠と知りながら、隣国の救援にむかう。海を越え、チャグムのはるかな旅がはじまる。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ7作目。
    いやぁ、おもしろい。ぐんぐん物語に引き込まれてしまう。

    チャグムがサンガル王国へ儀式のために出向いた頃にまかれていた火種(タルシュ王国のサンガル王国への侵略
    )が一気に燃え上がっていて、新ヨゴ皇国も大きな波にのまれていく。

    なんと、サンガルがどうにも持ちこたえそうにない、どころか、タルシュ王国の手に落ちていた・・・!あの快活な海の民が・・・!
    サンガルがタルシュの手に落ちたということは、新ヨゴ皇国にとっては南の城壁が崩れ去ったことになる。

    と、物語の序盤ばかりを思い返してしまったけれど、本書はなんといってもチャグムの成長が素晴らしい。

    父である帝から命を狙われ、タルシュのラウル王子(こいつがまた、憎らしい!)からは帝の命を狙い、チャグムが帝位につき、タルシュの枝国になるよう進言され・・・
    なんとも難しい立場にいながら、民を守ることを第一に考え、ひとりで悩み抜くチャグム(今回はシュガもバルサもそばにいない)。そして、大きな賭けともいえる決断をする。

    バルサに守られ、帝になどなりたくないと泣いていた少年がこんなにも成長したのか、と、シリーズを初めから読んできている読者にとっては胸熱必至!(←これって正しい日本語?)

    佐藤多佳子さんの解説にあったように、これまでのファンタジー色強めから、歴史色強めに少し舵取りが変わった本書だからか、物語でありながら、どこかの国の史実をたどっているような気さえした。

    また、新しい登場人物の、ヒュウゴやセナという脇役もとてもよかった。

    さぁ、これからシリーズ終盤だー。

  • (2015年1月25日 再読)


    シリーズ通して、この話がいちばん好きかも!やっぱり!
    チャグムがとても聡明で勇敢で清廉で、なのに弱くて危うくて青い。
    その強かさとナイーブさがたまらないです。

    実写ドラマ化という話を聞いてから、チャグムは神木隆之介くんのイメージしかないんだけど、どうにか実現しないかな。
    精霊の守り人からは無理としても、この蒼路の旅人は15歳...なんとかいけんじゃない?

    最初からチャグムが好きなので、むしろ旅人シリーズが好きなので、彼のこの成長と活躍はすごい痺れます。
    今回出番は少ないけど、シュガも好き!
    天と地の守り人も一気に読むぞー!

  • チャグムの捨身の計画が動き始める。

  • 2021.02.23.読了

    とてもよかった。

    解説で佐藤多佳子さんが書いていたが、
    バルサが全く登場してこなくても
    バルサの存在を感じられる
    素晴らしい物語りでした。
    そしてチャグムが成長していく姿を見られる私たちはなんて幸せなのか
    と思える巻でした。

    これからのことが気になって気になってしかたありません!

  • 今回はチャグムのお話。幼かったチャグムはもう青年になり、国の運命を背負っている。彼が帝に楯突いた時はせいせいしたけど、その結果ハルスアン閣下を亡くし、タルシュに捉えられてしまうことになった。それでも炎のような激しさを持つチャグムが大好きだ。ジンは、バルサに縋って帝になりたくないと泣いていたチャグムをずっと覚えていると言ったけど、きっと今回見た一人暗い海を一縷の望みをかけて泳いでいく姿もきっと忘れないだろう。その真っ直ぐさと激しさを抱えたチャグムがこれからどんな運命を辿っていくのだろか。

  • いよいよクライマックスに近づいてきた感じがしてワクワクする。
    バルサが登場してなくても、しっかりバルサの存在がある不思議。
    次は長編なので、一気読みだろうけど、終わっちゃう寂しさもあり、なかなか手を出せずにいる

  • このシリーズの中で、私は今のところこの本が一番好き。

  • なぜか人を引きつけるチャグム。バルサがどうしてここまで惚れ込むのか今までわからないところがあったが、今作ではなんとなくそのあたりを読者に理解させる描写が多い。ヒュウゴもそうだが、一緒にいた呪術師弟ソドクも「なんだか不思議なやつだ。肩入れしたくなる」みたいなことを言うのだけど、そのあたりが好きだ。p.250
    チャグムだけでなく、登場人物それぞれの立場からの正論、筋の通し方がとても面白い。リアルさとでもいうのか。
    旧ヨゴ皇国ってやつは地理的にもっと遠い存在で簡単には行けないところかと思っていたが、船で簡単?にたどりつけてちょっと想定外だった。
    それにしても新ヨゴは閉鎖的すぎる。外部の状況を知らなさすぎ。帝の志向が思いっきり反映されているのかもしれないけど。
    タルシュは強大すぎ。それなら、前作に出てきた「タルハマヤ」をタルシュにぶつければいいのに、とか思った。

  • チャグムは新ヨゴ皇国の皇太子という立場にありながら、父に疎まれ、宮廷では孤立しがち。
    頼りのシュガは星読み博士で教育係ですが、国のために働くには、チャグムだけに荷担するようなそぶりを見せるわけにはいかなくなっていきます。
    南方の大国・タルシュ帝国の脅威が迫り、サンガル王国から救援の依頼が。
    罠と知りつつも、かって訪問した縁もあって、救援に行きたいと望んだチャグム。
    捕虜になり、タルシュ帝国の圧倒的な力を見せつけられます。
    チャグムを護送するタルシュの密偵・ヒュウゴはタルシュに征服されて衰退したヨゴ皇国の出身。チャグムには見所があると感じるヒュウゴ。
    舟の上で、次第に心通わせる二人ですが…
    バルサに鍛えられてきびきびと働くことが出来て、ぞうきんを絞るのが上手だったりするチャグム。
    生き抜く道はあるのか?
    絶望的な状況の中でも、まわりの人を惹きつける素直な若さが光ります。
    背はだいぶ伸びてきたけどまだほっそりした体格という。清新な10代の少年が成長していく様子が、いきいきとみずみずしく描かれています。
    ええ?という所で終わりますが…
    さあ、次はバルサも出てくるのかな…?!

  • ああ面白かった。こんなに本に没頭したのは久しぶりです!

    この本を手に入れた当初は、国の行く末が中心の話であることと、バルサが出てこないことが理由で三分の一ほど読んだ所で放置していました。
    ところがもう一度最初から読み返してみたら、もう止まりません。一晩で読破しました。
    今回のお話は国と国との駆け引きという重厚で複雑な物語なので、守人シリーズのような幻想的で不思議な世界観は、あまり前面へ出ていません。
    しかし、だからこそ、このシリーズの綿密に組まれた勢力図や国の特色などの設定が、蒼路の旅人で十分力を発揮していると思います。
    しかも、相変わらず丁寧で優しさを感じる文章で心地よいです。もちろん食べ物もおいしそう!

    チャグムは大人になった私が過去に捨ててきたいろんな物を持ったまま、大人になろうとしています。捨てた物から目を背けた私には、大いに怒り、悩むチャグムがまぶしく映り、時には心をえぐられる気分になります…。
    帝に疎まれ命を狙われようとも、それでも父を死なせたくないと願うチャグムは、本当は父の愛を欲しているのでしょうか。心優しき皇太子に、ツアラ・カシーナの加護がありますように。

    あー、完結してから読んで良かった!続きが気になる!

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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