影の王

  • 偕成社
3.78
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036315109

感想・レビュー・書評

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  • シェイクスピアが1599年ロンドンに作ったグローブ座は31年後(1644年)取り壊された。  
    このお話は、グローブ座ができてから、約400年後。
    1995年に建て直された新グローブ座で、「真夏の夜の夢」が上演されることになり、11歳の少年ナットが妖精パック役に選ばれた。
    ところがある朝、ナットが目を覚ますと、そこは400年前16世紀のロンドン。ナットはその時代の同じパック役の男の子と入れ替わっていた。
    ナットは、400年前の生活に戸惑いながらも、憧れのシェイクスピアと一緒に芝居ができ、夢のような時間をすごした。
    「真夏の世の夢」の上演は大成功をおさめ、お忍びできていたエリザベス女王一世にお褒めの言葉も頂いた。
    16世紀のその頃のロンドンの様子が生き生きと伝り、街の音や匂いまで感じらる。
    もう一人の400年前のパックは、ペストにかかっていたのだが、現代の医療で一命を取り留める。そのパックがナット入れ替わったおかげで、今、私たちがシェイクスピアの芝居を楽しめることになったとは・・・。
    歴史の if を自由に描くタイムファンタジーおもしろさを堪能した。

    両親を亡くしたばかりの孤独を抱えていた少年が、パックを演じることで、自分の殻を破り自由になっていく解放の物語だった。

  • シェイクスピアの時代が好き。
    タイムトラベルものも大好き。
    こんな作品があったとは!
    出会えて嬉しいです。

    ナットらは、シェイクスピア劇を上演するために、指導者アービーの訓練を受けていた。
    アメリカ全土から集められた、11歳から18歳までの少年俳優達とスタッフ24名はロンドンに渡る。
    シェイクスピアの時代のグローヴ座を再建した新グローヴ座で、400年前のままの様式での公演が行われるならという条件で、資金を提供してくれた人があったのだ。
    当時のままとは、女性の役は少年が演じるということ。
    ナットは、アクロバットが得意で、「真夏の夜の夢」のパックの練習をしていた。

    ある日、悪寒がして眠った朝、ナットは1599年にいた!
    一週間前に聖ポール少年劇団から来た同じ名前のナットという少年と思われていて、年恰好も似ているらしい。
    悪臭と喧騒、ろくなベッドもない生活。
    熊いじめといった当時の催しにも驚くが。
    憧れのシェイクスピアがいる宮内長官一座の舞台に立てるのだ!
    同じ少年俳優のローパーには嫌がらせをされるが。
    シェイクスピアはまだ30代。四大悲劇などの傑作を書く前だった。
    知られている肖像とはちょっと違う顔で、深みのある豊かな声をした威厳のある人物だった。
    ナットに何かを感じたのか、ローパーに困らせられる彼を家に引き取って住まわせてくれる。

    ナットは早く母を亡くし、それで気力を失った父が自殺するという悲しい経験をしていた。
    シェイクスピアと暮らすうちにそのことを話したナットに、シェイクスピアは美しいソネットを送ってくれる。愛は失われることはないのだと‥

    このまま傍にいたいと思うほどになったナットだが、突然、現代に‥
    入れ替わりに16世紀から来た少年は、現代でペストの治療を受けていたと知る。
    シェイクスピアとも突然別れることになったナットは苦しむが‥

    ナットの話を聞いた仲間が色々当時のことを調べてくれて、救いを見出す展開に。
    晩年の最後の芝居。シェイクスピアはずっと、あのナットのことを忘れなかったのだ‥

    スーザン・クーパーは、1935年イギリス生まれ。
    アメリカにわたって新聞の特派員として活躍。
    ハイ・ファンタジーのシリーズで高い評価を得ている。

  • Tomorrow, tomorrow... 目覚めたらそこは、エリザベス朝の演劇の都。こんな冒険ができたらな。

  • 20世紀のアメリカの演劇少年が、公演先の新生グローブ座でタイムスリップして(ほんとはもうちょっと複雑だけど)、シェイクスピアの時代のグローブ座へ行ってしまって、という話。
    最初はあまり面白そうとは思わなったけど、とてもよかった。さすがスーザン・クーパー、時代考証がしっかりしていて、当時のシェイクスピア関連や舞台関連の考証はもちろん、弱いエールを飲んでいたとか木のバケツとか食事とか服とか獣脂蝋燭とか、生活がリアルに描きこまれていて、本当にその時代にいるように感じられて楽しい。
    互いに愛する人を失った痛みを抱える少年とシェイクスピアの心の交流もとてもよかったし(ほんとにこんな良い人だったのかしらね?)。
    ただ、最後のdeus ex machina的な説明はちょっと疑問。シェイクスピアは確かに偉大な劇作家だけど、だからって、ねえ。蛇足っぽいかな。それだけ不満。
    井辻朱美さんの訳もとてもよかった。

  • シェイクスピア劇の上演のためロンドンへと来たアメリカの少年ナットは、目覚めると16世紀のロンドンにいた。そこでナットはシェイクスピアの元で新しくできたグローブ座の舞台で妖精パックを演じるのだった。

    タイムスリップものの面白さは、主人公とともにその時代を楽しむところでしょう。ここでも16世紀ロンドンの様子がこと細かに描写されています。生活や習俗の違いからからのショックをまず描き、その後過去世界に慣れていくにつれてその世界のよさも見えてくる。それはナットの目を通じて読者も同じように感じさせられ、世界に入っていきます。
    そしてナットのタイムスリップはただナットが過去に飛んだというだけでなく、16世紀の少年と入れ違いになったことが示され、それが大きな意味を持ちます。
    ナットとシェイクスピアとの出会い。それは歴史上の偉人に出会ったということ以上に、ナットに大きく影響します。憧れと安堵感。この人とと共にいたいという思い。それは父母を亡くしたナットの心に沁み入り隙間を埋めてくれるのです。
    ナットのタイムスリップには歴史的な意味があったことが後に示されますが、それよりもナット自身がシェイクスピアに出会う必要があったのでしょう。だから出会いと別れ、そして別れた後も常に影響し合うことの大切さや素敵さが響きます。

    これを読む前にもっとしっかりとシェイクスピア作品を読んでおけばよかったと思わされました。特に「真夏の夜の夢」は必読です。それによってより深く物語が楽しめるでしょう。

  • 幼い頃に母を亡くし、3年前に父が母を追って自殺をした孤独なナット・フィールド。

    少年劇団から、シェークスピアの「真夏の夜の夢」のパック役に抜擢されたナットは、四世紀前のそのままに復元された劇場に立つことになっていた。しかし、リハーサルが行われた夜が明け、朝になると生きたウィル・シェークスピアがいる時代に居た。シェークスピアと共に過ごす内に、ナットの孤独な心を癒していく。

    「まことの心の結婚に
    さまたげをゆるすことなかれ。愛は愛といえぬ
    変化あるときに、変化し
    ものごとのうつろいのときに、うつろうのであれば
    いな!それはつねにかわらぬしるしなり
    嵐のきたるときも、ゆさぶられることなし
    それはすべてのさまよう船のみちびきの星
    そのかがやきは感ぜられても、まことの値は未知
    愛は〈時)の道化にあらず、バラいろのくちびるやほおは
    いずれ〈時)の大鎌に刈りとられても
    愛はその短き月日とともにかわることなく
    夜の終わる日まで、まがらえるべし
    もし、このことがあやまりならば
    われは書くまじ、だれにも愛は起こることなし」

  • 図書館で一回も借りられていなかった。悲しい。。現代で、シェイクスピアの真夏の夜の夢のパックを劇団で演じる主人公が朝おきるとシェイクスピアが生きている400年前のイギリスにタイムスリップしてしまう話。真夏の夜の夢は、ガラスの仮面の知識しかない位なので、内容をもっと知っていれば、想像が膨らんだかもしれない。色々な人物がでてきて、名前を書かれた割には一回しか出てこない人などもいるので、現代ではギルとアービー位覚えておけばさして支障はないと思う。子供の本のところにあるけど、子供には少し難しいかも。。

  • 現代で「真夏の夜の夢」のパック役を演じている少年ナットが、シェイクスピアの時代にタイムスリップ。16世紀のロンドンで、シェイクスピア自らが演じるオベロンを相手に、パック役を演じることになる。
    心に深い傷を負っているナットと、シェイクスピアとの絆が胸を打つ。
    読了後、シェイクスピアのソネットや「真夏の夜の夢」、「あらし」などを改めて読んでみたくなった。

    「闇の戦い」シリーズなどで知られる、スーザン・クーパーの作品。

    2015年4月 再読

  • シェイクスピアの時代にタイムスリップしシェイクスピアと一緒に演じるナット少年。「真夏の夜の夢」、読みたくなりました。

  • 2013/07/21

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