きつねの橋

著者 :
  • 偕成社
3.98
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本棚登録 : 144
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035405603

作品紹介・あらすじ

ときは平安時代。主人公平貞道(たいらのさだみち)は源頼光(みなもとのよりみつ)の郎等(ろうとう)。郎等になってすぐに妖怪の白きつね・葉月(はつき)と知り合い、立場を超えて互いに助け合うようになる。貞道は少し先輩で弓の名手である季武(すえたけ)ととりわけ仲が良く、不遇な斎院の姫を助けたり、少年時代の藤原道長の護衛をしたり、盗賊の袴垂討伐に加わったりと忙しい。この物語は貞道が京都にでてきたばかりの若者の頃であるが、貞道はのちに渡辺綱(わたなべのつな)、坂田金時(さかたのきんとき)、平季武(たいらのすえたけ)とともに頼光四天王(らいこうしてんのう)として勇猛を知られるようになる。

感想・レビュー・書評

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  • 『童の神』を読む前準備として読了。

    期待以上に面白かった。
    源頼光の郎党・平貞道が、妖怪の白きつね・葉月と助け合いながら、京の都を賑わす盗賊・袴垂を討伐する物語。
    史実にもののけなどの妖しを巧く絡ませたワクワク感もある上、弓の名手・平季武との友情、斎院の姫君救出など見どころもたくさんで読みやすい。

    また、少年時代の藤原道長(当時はまだ五の君)が読めるのも嬉しい。
    五の君が兄・道隆に叱られる姿を見ると感慨深いものがある。
    「兄君を見返すぞ」「わたしがのぞむのは、一の人(帝を補佐する摂政や関白のこと)だ」のセリフにはドッキリ。
    道長は小さい頃から上昇志向の強い子だったんだ。

    今回は源貞道目線のお話。
    これに対して『童の神』は盗賊・袴垂側目線の物語とあって、比較しながら楽しめそう。

  • 読みやすい平安ファンタジー。

    “頼光四天王”の一人、碓井貞光こと平貞道が、まだ若くて源頼光の郎党になったばかりの頃のお話です。
    白狐の“葉月”との交流を中心に、因縁の盗賊・“袴垂”に煮え湯を飲まされたり、藤原一族の若君・五の君(後の藤原道長)の護衛や、“葉月”が守っている斎院の姫君を助けたり等・・と、貞道の京での経験と成長が素敵な挿絵と共に楽しんで読めます。
    真っ直ぐな気性の貞道と、人を化かす事もあるけど、斎院の姫君を大切に思う白狐・葉月、飄々とした性格で弓の名手である季武(後の四天王の一人・卜部季武)、五の君の従者で大らかな公友。といった、キャラのバランスも良いですね。
    本書は児童書(文字も大き目です)なのですが、あの上橋菜穂子さんの“守り人シリーズ”と同じレーベルだけあって、大人も楽しめる良作だと思います。
    続編も一緒に借りてきたので、読むのが楽しみです。

  • 平安時代の京の都。源頼光の郎党、平貞道は手柄をたてたいと思っていた。勇ましいがどこかやさしい貞道は、人を化かすきつねを捕まえたものの、いじめられているのを見過ごせず、逃がしてやった。その白きつね葉月と特別なつながりができた貞道は、互いに助け合うようになる。
    京都を舞台に、貞道ときつねの活躍を描く物語。

  • 源頼光が郎党・平貞道は橋にでるという化狐を捕まえることに。1度は化かされてしまうが、捕らえて仲間の元へ連れ帰る。捕らえた狐をいじめ始めた仲間から逃がしてやったことで白ぎつね・葉月と縁がうまれて...。

  • 2022.01.15

  • 久保田さんの作品は『駅鈴』『氷石』『もえぎ草子』と読んだけど、これが一番いいのでは?と思った。
    私が読んだ中では唯一ファンタジー要素のある作品だが、それが久保田さんの中世をリアルに描く力、誠実な物語運びとうまい具合にミックスされてる感じ。
    頼光四天王の一人平貞道が、頼光の郞等となるところから話は始まる。妖狐葉月を助けてやったことが縁で、貞道と葉月はピンチの時にお互い助け合う約束を交わす。
    葉月は、賀茂神社の斎院である幼い尊子姫の女房をしており、斎院は葉月が狐であることを知った上で姉のように慕い、頼っている。幼くして母と別れ、実家に戻ることもままならない斎院を愛しく不憫に思う葉月は、何としても彼女を守ってやりたい、望みを叶えてやりたいと思っている。
    葉月の口調は丁寧だがそっけなく、特に女っぽくもなく(私は「彼女」と書いたが、そもそも雌狐であるかも不明。ただ、化けるときは女になる)、ツンデレというよりツンツンという感じで、そうでありながら、言葉や態度の端々から、どんなに斎院のことを愛しているかが伝わってくる。
    貞道は腕が立つとはいえ、まだ思慮深さには欠ける若者であり、何度も葉月に助けてもらううちに成長していくのも良い。
    今昔物語に出てくる盗賊袴垂れや陰陽師賀茂保憲も出てくるし、頼光四天王のもう一人平季武も、ちょっと軽めだが、いざとなると類い希なる弓の使い手として貞道とともに活躍する。
    幼い頃の藤原道長(五の君)もやんちゃな少年として生き生きと描かれている。
    これだけキャラが立ってるんだから(二次創作のネタに使えるくらい、アニメ化、マンガ化してもいいくらい)、もっとベタベタに友情、冒険、恋愛を書けば、もっとたくさんの読者を獲得できるのに、それをしないところが久保田さんらしい。挿し絵の佐竹さんもそれを重んじて、わかりやすい美男美女を描いたりしない。誠に上品。
    また葉月と貞道が活躍する物語を読みたいなあと思ったけど、久保田さんはそういうこともあんまりしなさそうな気がする。まあ、書いてくれたら嬉しいけど。

  • 平安時代の郎党の様子が丁寧に描かれていて、それでいて今時の雰囲気もあり、読みやすい。
    きつねを「悪いもの」としない、別れで終わりにしない。
    強く主張するわけではないが、自分に真っ直ぐな貞道のキャラクターと優しいラストが新しい。

  • 健気な狐の話って意外とレアな気がする

  • テンプレと言われようが、こういう話が大好きだー‼︎ううう。最高でした。好みど真ん中。主人公がカラッと明るくて、若者らしい野心もあって友達になったら楽しそう。きつねや郎等に懐かれるのもわかる。願わくば、この先も仲良くやって欲しい。読んでいたら髭切が出てきてちょっと嬉しかったです。

  • 《図書館-借》狐の葉月と貞道が、平安時代に、京都で、大活躍。斎院様を護る葉月が、一緒にいられたらいいなあ。

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著者プロフィール

岐阜県生まれ。2004年、『青き竜の伝説』(岩崎書店)で第3回ジュニア冒険小説大賞を受賞しデビュー。『氷石』(くもん出版)で第38回児童文芸新人賞、『きつねの橋』(偕成社)で第67回産経児童出版文化賞・JR賞を受賞。他の作品に『きつねの橋 巻の二 うたう鬼』(偕成社)、『緑瑠璃の鞠』(岩崎書店)、『駅鈴』『もえぎ草子』(くもん出版)、『千に染める古の色』(アリス館)など。

「2022年 『やくやもしおの百人一首』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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