- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784030167209
感想・レビュー・書評
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佐藤さとるの自伝的小説。
昭和二十四年の春、二十一歳の加藤馨が、市役所に就職したところから、教員になり、編集者になり、やがて代表作となる『コロボックル』の物語の着想を得るまでを描く。
作中で青年「加藤馨」が、ペンネームとして「佐藤暁」と名乗り、同人誌活動をしたり、物語の構想を練ったりする、作者曰く『自伝的目眩し小説』。
発想のかけらが、あちらと繋がりこちらに飛躍して物語になっていく過程が面白い。
畑違いの仕事にも落ち着いて取り組み、運命の相手に出会っても有頂天になるでもなく、どこか飄々とした馨は、本当に「せいたかさん」そのもの。
もう新しい作品が生み出されることがないのは残念だけれど、読み返すたびに瑞々しい感動がある、佐藤さとる作品。
コロボックルはもちろん、赤んぼ大将や、おばあさんの飛行機も大好き。
子供の頃に、出会えて幸せだったなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館本。佐藤さとるの作品を読んだ事はあったが経歴は知らなかった。知ってる名前の作家が何人も登場して驚きました。
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佐藤さとるの自叙伝。
戦後の混乱期から市役所に職を得て藤沢の中学校に移り、童話創作活動を続けた筆者。戦争の影が色濃く映し出される中で希望を持ち続けた著者だからこそ最後には美しい伴侶にも恵まれて童話の世界で花開いたのであろう。決して平坦な道ではないが淡々と進む著者の姿が描かれている。 -
2020年8月18日
子どもの頃大好きだった佐藤さとる。
こんなあれこれを経て童話作家として成功したんだ。
作家修行も生活も大変だったんだ。
戦後の窮乏生活の中で、自分の実力筆力を高めるべく、焦らずあたためてきた、井戸のはなし、おこりむしのはなしは、何度も推敲されてきたんだ。
引用された童話は、説明的な部分が結構多くて、童話ってこんなだった?読むのに苦労する、なんて思いながら文字を追ったが…
情景を美しく表現する言葉は童話作家ならではだし、何より思いがけない結末があり、その発想に驚いた。
構成についても構造を箇条書きしていく作風。
ちゃんとどうやって読者を旅させるかを考えて作るのだということがわかった。
佐藤暁、加藤馨
どっちが本人?
佐藤さとるが本人って最後の最後で明かされたわ
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戦後、横浜市役所に就職してから中学校教師、学習雑誌の編集者と仕事を変えながら、長編児童文学をこころざした佐藤さとるの自伝小説
長崎源之助、いぬいとみこ、神戸淳吉と同人誌『豆の木』を創刊した経緯や生涯の伴侶との「盲亀の浮木」の出会い、そして一寸ほどの小人族“コロボックル”を見つけるまでが「加藤馨」という青年に託して描かれている
『てのひら島はどこにある』も一部収録 -
プロの作家になる前の佐藤さとるさんが過ごした場所は、自分にもなじみのあるところが多くて、ああ、ここを歩いたのかな、なんて思いながらゆっくりゆっくり読みました。幸せな読書でした。
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2016.6.29
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「誰も知らない小さな国」の作者、佐藤さとるの自伝的小説。
戦争後、専門学校を卒業したさとるが、市役所職員となり、さらに教員を経て編集者になるまでの生活と、その暮らしの中で考えていたこと。
さらに、その時代に出会った幾つかの物語。
そう、彼にとって物語は、あちらの方から書いてくれとやってくるものであって、無理やり作者が拵えるものではなかったようです。