- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784023318809
作品紹介・あらすじ
マリ共和国出身の京都精華大学長、ウスビ・サコ氏の自伝。幼少期、中国留学、日本人との結婚、子育て、学長就任。波乱に満ち「なんでやねん」の連続だった日々をコミカルに回顧しつつ、日本社会や教育の問題点を独自の視点で鋭く批判する。
感想・レビュー・書評
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日本人は外国の方から批判されたり、持ち上げられたりすることを有難がる傾向があるように思える。この本もそこを狙っている本かと思っていたが、いい意味で裏切られた。
著者はマンガ家の竹宮惠子氏の後任として、京都精華大学学長を務めており、本物の「教育者」だと感じた。サコ氏はアフリカのマリ共和国の出身で、中国に留学したが留学生と中国人学生との衝突を経験。その後、日本に留学する。日本に来た理由は、「面白さ」を感じたからだという。それは「だらしなさ」や「わけのわからなさ」だという。こんなこという人初めてでしょう。
本書の中盤以降、真摯でユニーク(日本人にとって)な教育論が展開されている。教育とか大学に興味のない方でも、本書の第8章だけは読むと良い。そこに書かれている「政治に関心がないのに政府に依存する」という文にハッとさせられるに違いない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
webに掲載されたインタビュー記事などを読んで興味を持っていたウスビ・サコさんの著作を図書室で見つけて借り出し。ざっくばらんな語り口で大変読みやすかったです。生まれ故郷のマリでの生活から中国と日本への留学、伴侶との出会いと結婚に子育て、その過程でいろいろ衝突したり理解してもらえなかったりしながらも自分を殺して周りに合わせたりせずに信念をもって努力するうちに相手にもその様子が伝わって和解し良好な関係を築いてきたことなどが、生き生きと明るい調子で綴られています。マリに居た頃から学校ではフランス式の教育制度と価値観の中で過ごし、家に戻ればマリの部族の言葉を話し文化の中で育つという、異なる価値観を行き来するような少年時代だったというのが印象深かったです。後半部分は日本の教育制度や組織の文化、人間関係の在り方について、サコさんから見ておかしいんじゃないの?ということをズバズバと書いてくれてあり、耳が痛いながらも、そうだよねと共感するばかりでした。共感しつつ、ではどうしたら良い部分を失わずに開かれた方へ向かって変わっていけるのかということに思いを馳せながら思考停止になりながらも、やはり内側だけを見ていてはダメで、内側のことは大事にしながらも外へ向かう窓のようなものを開けて、風通しを良くするようにするしかないのでは、と思ったりしました。大変興味深く読了。すぐ読めます。
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京都精華大学は、実は現役の時に滑り止めに受けて受かった学校だ。美大生だった私には、この学校へ進学した友人・知人が数人いる。当時は山奥の美大という印象以上のものを抱かなかった。
外国人、西洋やアジア系ではなくアフリカ人の学長というのが一際噂になり、この著作を手に取った。いろんな国の文化やくらしに触れたからこそ、日本という国のありのままの姿を捉えていて、感じたことを率直に表現できるのだろう。
天災に人災、戦争やコロナ禍、いろいろなことが起きるが、これからの世の中を作るのはこの地に住む人々なのだ。大学は指南を仰ぐところではなく、自身で考えて成長する場所。当たり前のことだが、日本の大学は徐々に経営至上主義と企業ファーストに成り果てた。慣習の良し悪しはともかくとして、学生に慕われ、時に厳しい姿は、学長というより徒弟を育てる親方に見える。これほど希望の持てる教育者が、今の時代日本にどれほど存在するのか。そんなことに思いを馳せた。大学だけでなく、社会での人との出会いで、人は育つ。コロナで人と出会うことも少なくなってしまった現在、非常に危惧されるのがこれからの社会のしくみだ。学生には厳しい現実が付きまとうが、諦めずに時に人を信じて歩める人になってほしい。 -
こんな人が周りにいたら、人生は全然違うものになると思う。
私の思い込みが、ステレオタイプが、世界をどれだけ歪めているんだろうと思いながら読んだ。 -
関西弁のツッコミがはいる軽妙な文章。前半の自伝部分では、マリ共和国の知り合いの知り合いはみんな知り合い文化に驚き、学生時代の豪快なエピソードに笑った。熱量と明るさが周囲にも伝播している。人を巻きこめる大きいひとなんだなあ。
後半は日本社会や教育への提言。空気をあえて読まない、曖昧な空間や関係をだいじになど、外からも中からも見てきたからこその指摘に考えさせられた。 -
マリという、アフリカの価値観とフランスの価値観が混在したルーツ、そして中国への留学経験から来る中国そして日本への目線。その後、日本に移ってからの体験記、そこから専門で研究された建築、人が住む住環境への目線が「国ごとにどう異なるのか」という観点まで加わってくる。そのすべてが面白い。
西洋的な価値観、東洋的な価値観、どちらも併せ持つ筆者の目線を味わえるのが醍醐味。 -
前半はサコ氏の生い立ち〜学長になるまでのお話。後半は日本の教育の問題点などを中心に大いに語るパートで、後半の読み応えがすごいです。
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サコ氏は、京都精華大学の学長。 アフリカのマリ出身。 自分自身の半生と学長になった経緯から日本の教育の問題点や提言まて、彼の教育に対する考え方がとても明確で共感できることが多かった。 日本の教育の問題点は、画一的なものであり窮屈な感じで、子供の個性を封じるようなもの。 日本人自身は気付いていないが、多様な文化の中で育った著者にはそれがよく分かる。 日本人は、親たちが受けてきた教育を、子供にも当然の教育として強いるが、そもそもその教育制度は本当に現代社会にマッチしたものなのか、昔ながらのこの制度で育って社会人になっていけるのか、著者は疑問に思うことがあるようだ。 声を上げるだけでなく行動することが大事。 著者はこれを実践している。 素晴らしい考え方の持ち主なので、彼の今後の行動にも注目してみたいと思う。