秘録 CIAの対テロ戦争

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023315044

感想・レビュー・書評

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  • [見えぬ最前線で]CIAの第一線を長きにわたって歩んできた人物が記す回顧録。9.11以後の対テロ戦争の様子を中心として,貴重な一次証言が収められています。著者は,CIA長官代行として対テロ戦争の指揮を取ったマイケル・モレル。訳者は,津田塾大学を卒業した後に翻訳家となった月沢李歌子。原題は,『The Great War of Our Time: The CIA's Fight against Terrorism - From al Qa'ida to ISIS』。

    映画や小説によって,いろいろな側面で誇張されてしまいがちなCIAですが,その実像の一端を正しく照らしてくれる作品。この一冊で明かされているのはごくわずかな活動にとどまるかもしれませんが,それでも読む価値は十分にあるかと。また,本書で紹介される9.11後の英国の動きに非常に感銘を覚えました。

    〜テロを警戒しなければならないときが2度ある。テロの話を傍受したとき,そして,テロの話を傍受できないときだ。つまり,テロは常に警戒しなければならない。〜

    議会とCIAの関係も覗ける興味深い作品でした☆5つ

  • 9.11からISISまで分析官から副長官まで、上り詰めたパワーエリート。9.11を阻止できず大量破壊兵器を特定できないのにイラク戦争を阻止できなかった。この記録を自己弁護とみるのか、失敗を含めて類い稀なガバナンスの履践者と見るかは、読む者の姿勢次第だろう。自己弁護もあるかもしれない。しかし、現代の最も困難なテロとの闘いに、筋を通すべく最大限の努力を果たそうとした人だと、私は思う。

  • 【由来】
    ・確か図書館の新着アラート

    【ノート】
    ・CIAの長官代行まで務めた叩き上げのスタッフによる回顧本。網羅されているのは9.11、アルカイダ〜イラク戦争からスノーデン、ISまで。大統領へのブリーフィング担当を務めた著者の体験による関係者の言動は、ある程度割り引いて読んだとしても面白い。

    ・自分の中でのCIAというのは、いわゆる映画(それもアクション映画)に出てくるイメージがほとんどなのだが(中には「アルゴ」みたいなのもあるけど)、CIAだって官僚的組織なわけで、実際はこんな感じでやってます〜というのが、ある程度の説得力を以て描かれている。だが、本書で書かれているのは、表沙汰にして問題のない(あるいは既にバレてる)部分だけだろうし、しかも言及されていること全てが快刀乱麻を断つように明快にまとめられているというわけでもない。

    ・例えばイラク戦争。開戦前には大量破壊兵器の有無が焦点となり、そのレポートはCIAが作成した。本書や他の本でも触れられているように、当時のCIA長官のテネットが大統領に「(大量破壊兵器があるのは)スラムダンク(確実)」と言ったというのは、かなり有名なエピソードなのだが、本書では、それは事実だったとした上で、そのレポートが適切性を欠いていたとは認めている。ただ、なぜ、そのようなレポートができあがることになったのかという経緯があまりにも細かすぎる。「レポートの執筆担当者が帰宅した後に、別の分野の専門家が全体を勘案しないままの一文を追加して、そのことを他の者に伝えていなかった」ために、そのような報告書が出来上がってしまった、というのだが、こうなると最近頻出している国内不祥事の言い訳のようなうさん臭さが漂う。

    ・疑ってばかりでもつまらないので、ある程度素直に読み進めるならば、アメリカは、多分、我々が考えている以上に「世界の警察」としての責任を自覚しており、それを法治国家の枠組みの中で遂行する努力を放棄してはいないという姿が見えてくる。法の執行時には裁判所の令状が必要なのと同じように、CIAの活動は議会の監視下にあり、その承認には相応のプロセスが必要であり、大統領の認可が必要というのが本来のルールであることも分かった。

    ・だが、本書を読んでいて著者のあざとさが見え隠れするように感じるのは、自分が著者のことをCIAの副長官まで務めた人間だからと身構えるあまりの下衆の勘繰りだろうか。
     結局、関係者自身による回顧本というのは、書かれた内容をそのまま鵜呑みにすることはできない。ただ、こういうアメリカ関連のテーマは、ボブ・ウッドワードをはじめとした様々な立場の人たちが取り上げている。登場人物も重複してくるわけで、複数の本を読んで、そこから読み解くと、また浮き彫りになってくるものがあるだろう。

    【目次】
    第1章 戦いの始まり
    最初の犠牲者
    CIA長官補佐の日々
    国際テロの予兆
    大使館爆破事件は避けられたか?
    「我々はアルカイダと交戦状態にある」

    第2章 大統領とシャイフ
    CIA分析官にとっての夢
    ブッシュ大統領のブリーフィング担当
    報告書「ウサマ・ビンラディン 脅威は本物」
    7月、急に途絶えたテロ情報

    第3章 最も暗い時間
    「アメリカは攻撃されています」
    実行犯は誰か?
    攻撃はまだ続くのか?
    9.11はアメリカの政策の失敗によって起こった

    第4章 最良のとき
    外交なんてクソうらえ、戦争だ
    デッド・オア・アライブ
    テロを許した責任者を探せ
    CIAの復権

    第5章 不完全な嵐
    イラクとの開戦
    不透明な関係
    大量破壊兵器ーなぜ間違ったのか
    CIA史上最大の失敗

    第6章 アルカイダの復活
    揺れ動く脅威
    スペイン史上最悪のテロ
    国を守るため、法の許す限界まで
    ドローン攻撃の有効性

    第7章 ミッキーマウス会議
    伝令アブ・アハメド
    「ウサマ・ビンラディンが見つかった」
    その男は本当にビンラディンなのか?
    勇気ある決断

    第8章 アルカイダの春
    予見できなかったアラブ騒乱
    ある実業家からのコンタクト
    リビアでの失敗
    民主化の困難

    第9章 2012年9月11日
    リビアにアルカイダが聖地を築く
    CIA基地への襲撃
    CIA長官代行
    計画性のないテロ

    第10章 論拠を巡って
    ベンガジ問題からアメリカが学ぶべきこと
    「襲撃」が「デモ」か?
    ホワイトハウスの論拠
    CIAは国民を欺いたのか?

    第11章 難しい判断
    尋問と拷問の境界線
    水攻めは合法である
    尋問から得た情報が多くのテロを未然に防いた  → それを言うなら、尋問によって新たな憎悪の連鎖が起こり、さらに多くの人命が失われた、とも言える
    北軍を救うため憲法を逸脱したリンカーン

    第12章 背信
    内部告発者
    国家安全保障局の成功
    情報漏えいによるダメージ
    スノーデンは売国奴である

    第13章 先の長い戦い
    ニューヨークのために祈る
    今後の脅威
     ISIS
     AQAP(アラビア半島nアルカイダ)
     アルカイダの指導者
     ホラサン・グループ
     ボコ・ハラム
     ほかのグループ

    第14章 星を刻む
    アメリカのために命を落とした人々へ
    現代の大いなる戦い

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