ボケてたまるか! 62歳記者認知症早期治療実体験ルポ

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.21
  • (2)
  • (5)
  • (8)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 73
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023313552

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】スクープ記者が60歳を超え、物忘れが多くなり、「ボケの始まりか」と不安になった。大学病院の「もの忘れ外来」の門をたたく。そこから診断、数々の早期治療、患者たちとの交流と、体当たりで実体験する渾身のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  
    ── 山本 朋史《ボケてたまるか! 62歳記者認知症早期治療実体験ルポ 20141205 朝日新聞出版》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4023313556
     
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=
     ↑ 山本家の人々(学) ↓ 山本家の人々(太郎)
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=20130721
     
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%BB%B3%CB%DC%B2%C8%A4%CE%BF%CD%A1%B9
     山本 勝巳 建築 19051209 東京   19910923 85 /《天山文庫 1966 川内村》
     山本 薩夫 監督 19100715 鹿児 東京 19830811 73 /勝巳の弟/早稲田大学文学部独文科中退
     
     山本 駿  監督 19‥‥‥ ……          /薩夫の長男
     山本 洋  監督 19‥‥‥ ……          /薩夫の次男
    …… 山口 瞳《男性自身》
     
     ↑ 勝巳の甥 ↓ 薩夫の甥
     
     山本 學  俳優 19370103 大阪        /Yamamoto, Gaku 誤=学 [B] 167cm
    ♀水野 久美 女優 19370101 新潟        /1966-1969 山本 學の前妻/俳優座同期生
    /1973‐1999 五十嵐 通夫の未亡人/19750506 純一の母/籍=五十嵐 麻耶
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%BB%B3%CB%DC+%B3%D8
     
    ♀山本 □□    19‥‥‥ 広島 東京 2007‥‥ ? /學の後妻/旧姓=?原爆被爆者
    ♀山本 □□    19‥‥‥ ……          /勝巳の長女《徹子の部屋 20220714 テレビ朝日》?
     
     山本 圭  俳優 19400701 大阪   20220331 81 /1977 結婚/0425 訃報/, Kei [O] 167cm
    ♀小川 誠子 囲碁 19510401 福井 …… 20191115 68 /籍=山本 圭の妻/一女の母
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%BB%B3%CB%DC+%B7%BD
     
     山本 亘  俳優 19430121 東京          /, Sen [B] 165cm, 55kg
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%BB%B3%CB%DC+%CF%CB
     山本 朋史 記者 1952‥‥ ……          /元週刊朝日編集委員
     朝田 隆  医師 19550203 …… /精神科医/メモリークリニックお茶の水院長
     
     俳優・山本 學が認知症早期治療へ「今年から幻視が」
    …… 「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違い
    (20220922 週刊朝日 AERA dot. 撮影・小暮 誠)
     
     i 
     
    …… 山本 學さん、85歳。《白い巨塔》などテレビドラマの名作ほか
    映画、舞台を通じ演劇史に名を刻む俳優である。
     近作── 司馬 遼太郎・原作《峠 最後のサムライ》でも存在感ある
    農民役を渋く演じた。その學さんがいま認知症早期治療に励んでいる。
     山本 朋史・元本誌編集委員(70)が報告する。
     
     山本 學さん(筆者も山本で紛らわしいので以下、學さん)が東京・
    お茶の水にあるメモリークリニックで初めて朝田 隆医師の診断を受け
    たのは今年4月下旬のことだ。
     
    「記憶力が低下していることは以前から意識していました。特に80歳を
    過ぎて固有名詞が出なくなった。人の名前だけでなく物の名前も。それ
    だけだったら加齢が原因と軽く考えていたのですが、今年になってから
    幻視が始まった。ないものが見える。床に毛布が転がっている、足でど
    けようとしたら空を蹴っただけ。ハートやスペードの印のついたプラス
    チックの箱が壁にかかっている、でも実際にはそんなものはなかった」
     
     學さんは白内障を手術、緑内障の治療もしていたが、視力に問題はな
    かったはず。寝ぼけているのかと瞼(まぶた)をこすったという。しか
    し、1週間に2、3回の頻度で幻視は現れ続けた。本などを読んで得た知
    識から「これはレビー小体型認知症の症状では」と疑った。心配は募り、
    すぐに朝田医師のもとに駆け込んだという。
     
     學さんと筆者をつないだのは朝田医師である。
    「山本 學さんが認知症早期治療の体験記を書いた山本 朋史さんに会っ
    て話を聞きたい、と。連絡をとってもらえませんか」
     
     ゴールデンウィーク明けにメモリークリニックの近くのホテルでお会
    いした。筆者は朝田医師から8年半前にMCI(軽度認知障害)との診断を
    受けている。早期治療の効果か、リバーター(健常者に戻った人)とお
    墨付きをもらったが、今も週に1回デイケアに通いボケ再発阻止を念じ
    て不断のトレーニングを自分に課す身である。あの學さんが困っている
    のか。力になることができるだろうか。
     
     ii 
     
     テレビドラマで認知症の老人役もやったことがあるし、医師を演じる
    ことが多かった學さんだ。役で使うマイ聴診器(ファンの医者から贈ら
    れた)を持っているそうだ。病気に対する関心は深い。疑問がわくと専
    門書で調べたり医者に取材したりもする。知的好奇心が旺盛なのだ。医
    学雑誌にコラムも書いている。
     
    「30年以上前に亡くなった父がアルツハイマー型認知症でした。病室で
    『あそこの壁から子どもが出てくる』とよく言っていた。今思えばあれ
    も幻視だったんですね。以来、この病気のことについてはとくに興味を
    持っていました」
     
     父とは建築家の山本 勝巳さん(富山市郷土博物館など代表建築は多
    数)である。弟は圭さん(今年3月に81歳で死去)と亘さん。ともに俳
    優である。
     
     父の仕事を見ていて建築家にはなりたくないと思っていたそうだ。た
    またま三越劇場で見た芝居で舞台装置に興味を持ち、弟・圭さんの友人
    の父親だった東野英治郎さんに相談して俳優座の養成所に。でも、関心
    はあくまで舞台装置、役者になるつもりはなかった。養成所同期には田
    中邦衛や露口茂、井川比佐志らがいた。
     
     成蹊小・中・高校からエスカレーター式に大学に進学していた學さん
    だったが結局、大学は中退、養成所で舞台の勉強に打ち込んだ。
     
     父からは「30歳までに建築事務所を継いでくれればいい。それまでは
    好きなことをすればいい」と言われていたが、養成所にいる間にテレビ
    出演の声がかかった。俳優はできないと断りに行ったが「海外ロケもあ
    るよ」との言葉に誘われ引き受けることに。
     当時のテレビドラマはリハーサルを重ねての生放送である。
     
    ■側頭葉血流悪くMCI診断受け
     
    「NGが出せない生放送では極度の緊張感で台詞を間違えないことが大切
    だった。芝居をするというより、サーカスの曲芸かスポーツのようなも
    のでした」と學さん。
     
     テレビ業界は芝居の基礎ができた人を必要としていたに違いない。
     東芝日曜劇場など依頼が殺到した。「愛と死をみつめて」のヒットも
    あって、學さんはドラマを何本も掛け持ちでこなすようになった。
     TBSからフジテレビへとハイヤーを玄関に待たせて移動することもし
    ょっちゅうだったそうだ。
     
     iii 
     
     それはさておき、學さんの現在の症状である。
     MRIや血流検査など精密検査の結果、脳の萎縮は年相応だが、脳の側
    頭葉の血流が悪いことがわかっている。朝田医師は言う。
     
    「認知力検査では85歳にしてはしっかりしているし点数も良い。ただ、
    精密検査で血流が悪いところがあってMCIと診断しました。本人はレビー
    小体型と思われていましたが、むしろアルツハイマー型認知症の初期で
    進行する可能性があります。一人暮らしで人との接触も少ないので心配
    もあります」
     
     認知症はその50%以上がアルツハイマー型認知症、20%がレビー小体
    型認知症、残りが血管性認知症や前頭側頭型認知症などと言われる。レ
    ビー小体型認知症の初期と診断された筆者は認知症早期治療に励んでい
    ることを本誌で連載し、《ボケてたまるか!》など2冊にまとめた。今
    回は《學さんのボケてたまるか!》にアドバイス役として伴走できたら
    うれしい限りだ。
     
     學さんは4年前に数カ月、筑波大学附属病院の認知力アップデイケア
    に参加している(筆者も最初に半年通った)。この時は治療を意識して、
    というよりは認知症早期治療への興味が動機だったという。
     筋トレの本山 輝幸さんも当時のことをよく覚えていた。
     
    「とても熱心に通われていました。しかし、仕事が忙しくなったのか数
    カ月で見えなくなった」
     
     ちょうどその時、學さんは別の病魔に襲われていたのだ。
     
    「胃の内視鏡検査で悪性腫瘍が見つかったのです。最初は胃壁を削り取
    る手術をしました。結局は胃の3分の2を摘出しました。80歳を過ぎてか
    らの2度の大手術はこたえました。62キロあった体重は10キロ以上減少
    し、体力も落ちた」
     
    ■舞台稽古で使う洒落た室内履き
     
     体力には自信があった學さんである。若いころは山にこもって体を鍛
    え、400メートルトラック3周を軽く走った。高齢になってからも毎日8
    千歩歩くことを日課にしていた。その体力がなくなったという。學さん
    にとってショックだった。手術後はコロナ感染拡大による緊急事態宣言
    などと重なったこともあり、デイケアにはそのまま行かなくなってしま
    った。それが今年になって幻視である。
     
     iv 
     
     メモリークリニックのデイケアプログラムには芸術療法や音楽療法、
    シナプソロジー(同時にいくつかのことをするデュアルタスク)や認知
    トレなどさまざまなメニューがあるが、學さんと打ち合わせて最初は木
    曜日の本山式筋トレのレッスンを共にすることになった。85歳と言うが
    信じられない。姿勢がいい。柔軟体操をすれば筆者より体が柔らかい。
     
     参加者はトレーニング用の室内履きを持参するのだが、學さんはダン
    スシューズのような洒落れた履物を取り出した。
     
    「数十年前に舞台稽古の時に履いていたもので、もう履くことはないと
    思ったのですが、今回思わぬところで役に立ちました」
     
     コロナ禍のためこの日、本山式筋トレは残念ながら録画を見ながらの
    運動。器具は使わず自分の力を最大限に利用して鍛える筋肉に負荷をか
    ける。この時に感覚神経が痛みを感じて脳に刺激を与えて活性化させる
    というのが本山理論である。認知障害がある人は感覚神経が脳につなが
    っていない人が多いそうだ(筆者も最初、つながっていなかったのか感
    じ方が鈍かった)。學さんの顔が思いっきり歪む。痛みを感じなければ
    意味がない運動だから、この苦悶の表情はいい兆候。まさか演技ではな
    かったはず。
     
     學さんのテレビドラマや映画、舞台などでの活躍ぶりは山ほどあるが、
    中でもよく知られているのは《白い巨塔》の内科医・里見 脩二役だろ
    う。山崎 豊子・原作《白い巨塔》はこれまで何度も映像化されている
    が、學さんが出演したのは伝説の1978年バージョンである。
     主演・田宮 二郎(最終回直前に猟銃自殺。それまでも高かった視聴
    率は最終回に30%超となった)。
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%A1%D4%C7%F2%A4%A4%B5%F0%C5%E3
     
     大学医学部の次期教授をめぐる権力闘争を描いた物語だった。食道噴
    門がんの権威、外科助教授・財前 五郎役の田宮 二郎に対して患者第一
    主義のライバル、里見内科助教授を學さんが演じた。患者思いのヒュー
    マニストで、里見助教授ファンが激増したと言われている。
     學さんは言う。
     
     v 
     
    「他のドラマとの日程調整ができないと最初は断ったのですが、脚本家
    とプロデューサーがどうしてもと言ってすり合わせてくれました。躁鬱
    病を患って感情の起伏の激しかった田宮さんとぶつかることもあった。
    早く彼の病気を知ってアドバイスできていたらと思うこともありました。
    あのドラマでは先日亡くなった島田 陽子さん(東 佐枝子・役)とラブ
    シーンも。彼女は身長がぼくより少し高かった。抱き合う時の撮影では、
    ぼくは小さな木箱に乗ってました。屈辱のラブシーンでした(笑)」
     
     出演したテレビドラマは《下町ロケット 2018年版》など数百本、舞
    台では《放浪記》だけで1300回も演じている。
     
     學さんは俳優座同期生と結婚したが離婚、その後一般女性と結婚した。
    しかし、その女性とは2007年に死別。子どもはない。一人暮らしが長く
    なった。
     
    「妻は広島の原爆被爆者でした。肺がんの治療から8年後に今度は頭に
    腫瘍ができた。最後は自宅で亡くなりました。家の中のことは妻に任せ
    っきりでしたので、はじめはどこに何があるのかもわからず大変でした。
    でも、料理も自分でするようになってなんとか暮らしています」
     
     學さんはポジティブだ。筆者ぬきでもデイケアに通うようになった。
    週に3回も。
     
    ■筋トレの効果か記憶テスト満点
     
    「授業(メニュー)をひと通りやってから通い方を決めようと思って」
     心配した本山トレーナーから連絡が入った。
     
    「學さんは今日も参加されました。まだ体力回復が万全でないのに85歳
    できついトレーニングを週に3回はやりすぎ。朋さんから學さんにひと
    こと言ってください」
     でもその言葉の後で、本山さんは嬉しそうにこうつけ加えた。
     
    「學さんはすごいですよ。昨日トレーニングの後で残ってもらって、認
    知症テストで有名なファイブコグテストをやってもらったら32点満点で
    した。本山式筋トレを集中的にやった効果ですよ。過去に筑波大学の大
    学院生でもそんな点数は取れていません」
     
     vi 
     
     筆者もそのテストを受けたことがある(筋トレを始めて約1年後)。
    その時は30点、學さんに負けた。ちょっと悔しかった。學さんに電話す
    ると、「ああ、あの記憶テストですね。俳優は台詞を覚えるのが仕事で
    すから、あれぐらいは……」
     
     デイケアの感想を聞くと、「ぼくは(デュアルタスクの運動の)シナ
    プソロジーと本山式筋トレが効くような気がしています。疲れてしまっ
    たが、筋トレを続けてやって感覚神経がつながって脳に刺激が上がると
    いうのが何となく理解できた。やった後でスッキリしたし」
     
     という答えだった。趣味で水墨画を描くという學さんは写真撮影をし
    た認知トレで素晴らしいデッサン力も見せてくれた。
     弟の圭さんはもっと絵がうまかったという。
     
    「父の知人の画家の所に2人で習いに行っていた時期もありました」
     
     幻視を見る回数が減り、頻繁には見なくなったそうだ。トレーニング
    を始めて3カ月。効果があらわれたのか。學さんは真剣だ。拙著2冊を読
    んでくれたらしい。
     
    「あなたは競馬が好きなんですね。私も電話投票で少しやります。中央
    競馬会の10競馬場を巡って雑誌《優駿》に紀行文を書いたこともありま
    す。今度、競馬場に一緒に行きますか」
     
     筆者がギャンブラーであるのは間違いないが、馬券で儲けたことは数
    えるほど。しかも、当たったつもりがマークシートを書き間違えて大外
    れしたボケ体験も何度もしている。學さんに競馬道を教えてもらわねば。
    ── 山本 朋史《週刊朝日 20220923-0930 合併号》
    https://news.yahoo.co.jp/articles/4ed5e95da66803a2cd8efe3614693c4a18709e44?page=6
     
    (20220922)
     

  • 朝田隆さんの『認知症グレーゾーン』のなかで紹介されていた本。現役新聞記者が認知症の入り口の症状が出ているかもと自覚し、健常に戻るためのトレーニングを受けた過程が記されています。新聞記者だけあって文才があり、一気に読んでしまいました。認知症は早めに気づくことがとても大切と痛感。親のため、自分のためにも。

  • こんなにしっかりしてるのに認知的にはそれなりにあるんだなあと。でも外を歩いて色々な人と色々するのは絶対にいいだろうな。筋トレに効果を感じているのがまあ、そうなんだろうけど意外な感じもした。

  • 60歳を過ぎ契約社員となっていまだ現役の週刊誌記者が仕事のダブルブッキング等を機に、認知症か?との疑念から「物忘れ外来」を受診。そこから始まった様々な早期治療の実体験ルポ。いつか直面するリアル。以前読んだ本と合わせて大変参考になる。

  • 今時はのんびり穏やかに静かに暮らしていてはまともに歳も取れない時代になってしまった
    歳をとってからも筋トレが必要とは…

  • ◆きっかけ
    ・『母の友』2015年5月号で紹介されていた
    ◆感想

    ◆引用

  • 褒められることはうれしい。こういう刺激も脳の活性化に役立つという 最近のテレビはクイズと旅と食の番組が多い。製作費がかからず、視聴率がある程度取れるからだろう アルツハイマー病は大脳の海馬付近の細胞がβアミロイドの増殖に壊される病気ですパーキンソン病は中脳の神経が死んでしまう 

  • 軽度認知障害(MCI)を改善するための筋トレ、脳を活性化する運動プログラムの紹介があり、具体的な改善策からもMCIについて理解することができた。

全11件中 1 - 10件を表示

山本朋史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×