- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784023312944
作品紹介・あらすじ
【自然科学/自然科学総記】"らせん"をほどいた先に、人類の幸福はあるのか。もはや神の領域ではなくなった遺伝子操作。善意と探究心の裏側でパーフェクトな命への誘惑がうごめく。米国特派員として生命科学研究の最前線を追ってきた朝日新聞記者が見た現実とは。
感想・レビュー・書評
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遺伝子技術と掛け合わさった、現代アメリカの優生思想を伝える本。筆致はやや扇情的。
著者は統計学を知らないし、取材対象者の話を理解してるようにも思えない。
【内容紹介】
ISBN:9784023312944
定価:1620円(税込)
発売日:2015年7月21日
四六判並製 256ページ
ジーンリッチ(優秀遺伝子)階級、誕生前夜。目の色から寿命まで、好みの卵子や精子を選べるビジネスに特許が認められた。理想的な遺伝子の組み合わせが実現すれば、推定IQは1000以上になるという。努力する能力さえも遺伝子のなせる技なのか。治療と能力増強の危うい境界線。揺れる生命倫理。遺伝子覇権の今を追え!
<http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=17219>
【目次】
第1章 「究極の個人情報」の価値と値段――個人向け遺伝子検査ビジネスのからくり
優しくて酷な米国式ソフトボール/わずか七つの遺伝子で適性を判定/実際に遺伝子検査を受けてみた/病気のリスク判定に突然の中止警告/結局裏ワザが存在する矛盾/欲しいのは顧客の遺伝子データベース/弱肉強食化する遺伝子検査業界/「究極の個人情報」の取り扱い/遺伝情報による差別は防げるのか
第2章 遺伝子はだれのものか――遺伝子利権争奪戦
もし遺伝子が特許として認められたなら/アンジェリーナ・ジョリーの「告白」/揺れた司法判断/人工的に合成されたものならOK/自然界との付き合い方すら変えた判決/市場独占はなくならない?
第3章 裏切る遺伝子――才能と努力と遺伝子と
害虫と殺虫トウモロコシのイタチごっこ/すたれるクローンペット業界/ヒトラーのクローンは教師か獣医?/孫の代まで受け継がれる記憶/三毛猫クローンの仕組み/コムギは人間より高等?/ネズミにヒトが語れるか/トップアスリートの諦念と孤独/1万時間の法則/努力しないのも遺伝子のせい?
第4章 天才遺伝子を探せ――IQ最強人間への誘惑 119
2000人の「天才」募集中/中国発「天才赤ちゃんづくり」/脈々と続く中国の優生学/理論的にはlQ「1000超」?
第5章 人はいつ人になるのか――生命の定義論争 139
命をめぐる対立と意識の二極化/奪われる命は「1時間に3人」/消防車が来るまでに救える命/もう一つの「反対」
第6章 「ジーンスッチ階級」は誕生するか――デザイナーベビーの予感 165
一番人気は「100%男女産み分け」だが……/米国医師がメキシコで開業するわけ/「狂った科学者」の暴走なのか/デザイナーベビーをビジネスに/『ガタカ』の世界が現実に?/新しい人類「ジーンリッチ階級」
第7章 妊婦たちの選択――広がる新型出生前診断
ダウン症児出産数が示すもの/中国で生まれた高精度の新型出生前診断/「共存より予防」の危うさ/出産後の心構えと準備のために/拡大し続ける「わかること」/日本の中絶選択率は99%
第8章 人間の「質」に介入する時代――「消費者優生学」の足音 217
日本も無縁ではいられない/3人の親のDNAを持つ子ども/クラゲの教訓/戦後も残る優生政策の爪痕/個人主体の「消費者優生学」/治療と増強の「線引き」/あるがままを受け入れる美徳/「犯罪遺伝子」は刑を軽くするか
エピローグ(2015年5月 行方史郎) [249-255]詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遺伝子検査ビジネス、遺伝子組み換え、クローン、デザイナーベビーなど、最近の遺伝子研究とそのビジネスについて、科学医療部の記者である著者がアメリカでの取材をもとにその実態を書いています。
「妊婦たちの選択」では出生前診断について書かれています。妊娠中に染色体の異常について知ることについて、子どもを持つ母親としてとても考えさせられました。遺伝子研究の発展によって、救われる命もあれば失う命もあります。研究者の意図しないことに使われてしまうこともあるそうです。答えは出ないでしょうが、宗教、倫理、経済、哲学などあらゆる面から議論を続けるべき問題だと思いました。
著者の思いが感じられるエピローグが良かったです。本書を読んで遺伝子研究に興味がわきました。とくに「エピジェネティクス」について、もっと知りたいと思いました。 -
アメリカを中心に遺伝子研究、遺伝子ビジネスの現在がわかりやすく、コンパクトにまとまっている。
本書にあった「社会が技術のスピードに追いついていない」ことを実感する。
「エピジェネティクス」というらしいが、生まれたときに持ってた遺伝子が全てでない、ペットのクローンを作ってもそっくりではない。自然の奥深さとともに、遺伝子万能でないことに少しだけホッとした。 -
朝日新聞記者である著者の遺伝子ビジネスの最前線報告。遺伝子レベルの取捨選択が技術的に可能となり、それを生業とする企業が登場し、その責任者たちへのインタビューは貴重であろう。遺伝子操作の最前線を、記者らしい多様な視点かつ幾許かの批判を基に構成されている。
興味深いのは話題になった遺伝子関連の後日談だ。遺伝子解析の「23アンドミー」サービスのアドバイザリーは終了となり、「スポーツXファクター」は倫理性ではなく採算面から撤退し、羊のドリーは遺伝子的にはクローンながら性格の異なる羊となったりと、倫理以外にも遺伝子そのものの効用と環境が与える影響範囲の解析という今後の課題が見えてくる。 -
2015年 10月新着
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不妊治療、着床前診断、遺伝子に関わる生殖医療の進歩が進む中で倫理的な問題が大きくなっているけれど、倫理的な一線が曖昧になり、崩れて行く危険を感じる。何処までが医療で、どこまでが個人の権利として認められるのか。SFの世界で語られていたことが、既に現実になりつつある。