自民党の魔力 権力と執念のキメラ (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.73
  • (4)
  • (5)
  • (5)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 93
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951786

作品紹介・あらすじ

自民党はなぜ勝ち続けるのか?権力を牛耳る強さの根源は何か?今も変わらないのは、後援会、町内会名簿、夏祭り、掲示板、「どぶ板」戸別訪問といった旧来的なメディアや手法だ。地方議員と国会議員の関係、地域とのつながりにこそカギがある。20年来の取材メモも掘り起こし、自民党の強さの秘密に朝日新聞政治記者が迫った。地方と組織の舞台裏に証言で迫るノンフィクション。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 題名に「魔力」と偶々在るのは無関係だと思うが、紐解き始めて「憑かれた」かのように夢中になり、他の本に優先して読んでしまったという一冊となり、素早く読了に至った。
    「好い」または「好くない」ということでもない。眼前に「在るモノ」に関する経過等をやや古い辺り迄遡りながら示し、「こういうようなモノ?」と説くような、それも少しずつ角度を変えて豊富な話題を提供しながら考えるという筆致の一冊であると思う。
    著者は全国紙の記者として活躍されている方である。20年余りの活動歴になるようで、政治に関することを主要な取材テーマとし、東京でも地方でも活動した経過が在るようだ。そうした御自身の活動を通じて積上げられたモノを柱に、または背景に、必要に応じて史料的な古い記事を引くようなこともしながら綴っている一冊で、なかなかに興味深かった。
    1980年代末頃、所謂「1955年体制」というような政治状況が行き着く果てに在ったような感で在った中、色々な事件も在って「政治改革」というようなことが在り、1993年の細川政権による政権交代という出来事が在って、やがて衆議院議員選挙が小選挙区制となって行った。この国政に関する変化の他方に、地方での都道府県議会や市町村議会の議員選挙は旧来の形が遺った。そういう時代から四半世紀以上も経た中、「自民党?」と多様な角度で論じているのが本書だと思う。
    大きく括るなら、昭和の事柄を回顧しながら平成から令和への“政治”の質的変化のようなことを論じている「30年史」ということになるであろう。が、各章を視ると「“政治家”達の肖像」というようなモノや関係証言を集めた感であり、それらを駆使して現況を説き、「で?如何なる?如何する?」を考える材料を提供してくれていると思う。細かく言えば、現在の自民党の中で重要な役職に在る人達の経歴のようなことを挙げている辺りが、少し興味深かった。「自民党一筋」ということでもない人達が大きな存在感を示しているのだ。加えて、変動した情勢の「非常に大きなキーパーソン」となった小沢一郎に関することは、著者が担当記者として苦心しながら活動した思い出も交えて、なかなかに面白い内容が在る。
    本書に触れて、個人的には「“未完の革命”というようなモノが自潰し、時代の潮流で嘗てと相容れない状態が生じ、嘗てのままの中に在る人達が当惑している」というようなことが「30年史」なのではないかと思った。“未完の革命”というようなモノとは、国政選挙の大幅なルール変更の他方に地方選挙が従前のままであることや、政権交代が実現した時の様々な拙さが在って、何か「1955年体制」とも異質な硬直のようなモノが生じているかもしれないということだ。そして「時局の勢い」のようなモノの御蔭で、昔ながらの選挙運動と無関係に国政の場へ参入する議員達が登場し、地方の人達との間に溝のようなモノを認めざると得ないかもしれない一面も在る。
    というようなことなのだが、「それでも“自民党”」というのが現状で、何か「明らかに性質の異なる細胞が合わさって異様な姿を見せる神話上の怪物=キメラ」という存在感を示している自民党が在るのかもしれないのだ。
    2023年は、4月に地方選挙が在る。こういう時期であるから、この種の内容は「モノを考える材料」として非常に有益かもしれない。そういう意味で、併せて単純に興味深いので広く御薦めしたい。

  • 自民党の魅力は、地方と中央でもイデオロギーの濃淡がある一方で、政権党に座り続けることで利益誘導を実現するということ。
    問題は政党として純化すればするほど支持者の離反を招く恐れがあり、それでも凝集性を保ち続けている点、他の政党より寛容なのだろう。

  • 政治の入門書として良いと思う。意外と政治家も努力してんだなというのが一番素直な感想。強い野党を望む気持ちが強くなった。

  •  著者は朝日の政治記者。そのため体系だった分析というより取材内容が多いが、それだけに政治家や講演者の肉声は生々しい。
     本書の主な視点は地域社会、地方組織との関係。前半部は丸々地方議員に割いている。地道な陳情受けやどぶ板選挙、政党を全面に出さず与野党相乗りの地方政治。町内会長やPTA会長を経ての政治活動。
     小選挙区制では衆院議員は「オーナー社長」から「支店長」に変質、しかし地方議員はそれに不満で従わず、との記述がある。しかし連立相手の公明党はより地域活動に熱心でそれを補完、一方で旧民主党議員は地域の足場固めに不熱心、ともある。やはり自民党の地域への浸透は一朝一夕には変わらないのだろう。
     政策本位の健全な競争、なんてものは所詮中央の論理か、と思わされた。

  • 右も左も、保守だろうがリベラルだろうが、離党しようが全てを飲み込むブラックホールのような自民党の存在をまとめた一冊。
    要するに自民党は、
    「どんな手をつかおうが…………最終的に…勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」
    という政党だと。

  • ・目次はまだ公開されていないみたいだ。
    ・版元のPR文。
    “自民党とは何か。その強さの理由はどこにあるのか。そもそも国会議員と地方議員の力関係はどうなっているのか。総選挙では、派閥、公認、推薦、後援会、業界団体、地元有力者はどう影響しているのか。「一強」の舞台裏を朝日新聞政治記者が証言をもとに追う。”

全7件中 1 - 7件を表示

蔵前勝久の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×