ルポ 児童相談所 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022730930

感想・レビュー・書評

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  • なんでこういう本を読んでしまうかな、気持ちが沈むやんか、と自分でも思いながら、ついつい手に取り一気読み。
    タイトル通り、児童相談所に密着取材して実情を書いたルポルタージュです。
    1章から5章までは、それぞれタイトルはついているが、ほぼ実例集。こんな家庭があり、こんな子どもがおり、児童相談所はこのように対処しており、こういうところで対処に困難がある、ということがありのままに書いてある。
    私自身、教育現場に20年以上勤務し、”常識”では考えられない家庭や、育児のできない親がいることを知っているので、ひたすら児童相談所の大変さがわかる。5章までは、「無理だ…この体制で、本来子どもを育てるべき親がこんなんなのに、地域で(自治体)で子どもの命を守るなんて、無理すぎる…」としか思えない内容だ。
    児童相談所の職員が、一人で何十件も子供の命に関わる案件を抱えながら奔走して、解決できるわけがない!と思ってしまう。
    私は公立学校に勤務しているので、各学校に一人ずつでも児童相談所の職員が担っている仕事をするような人が常駐すれば話が早いのではないか、とも思った。
    なぜなら私たち教員は本来、学問を教えることが中心的な仕事なのに、現在はそれに加えて家庭環境に問題がある子どもたちの支援など、どんどん仕事が増えている状態で、もし児童・生徒に家庭的な問題が見つかった場合、まずどう対処するべきかを決めるところから始めなければならず、そのためには関係機関と連絡をとったり、そのために書類(報告書)を作ったりする仕事がさらに増えるからだ。勉強を教えるはずの教員がいちいちそういうことをしなくて良いように、何かおかしいな?と思ったらすぐに動ける専門の人が各学校にいれば良いのでは?などと思った。(現在はスクールソーシャルワーカーなど外部機関との連携が進んでいるが、常勤ではない)。
    現実には一つの児童相談所が、学校規模で言えば何校もの校区を担当しているのだ。つまりは単純に、人手不足だ。
    しかし読めば読むほど、闇が深い。そもそも、子どもを育てる、人間を一人育てるのは大仕事だ。私だって、二人の子育て中だが、上の子が3歳くらいのころ、自分が虐待をしていると思ったことが何度もあった。叩いたり、ひどく叱ったり、大声を出したりしたし、子どもも大声で泣き続けて、「いっそのこと、近所の人が通報でもしてくれて、児童相談所でもなんでも来てくれたら、相談できるのに」と思ったことすらある(来なかったけど)。経済的に問題がなく、教職に就いている私でも育児をしていればそんなこともある。
    貧困状態にあったり、精神疾患があったり、ひとり親だったり、健全な状態とは言えない親が子供を育てていて、問題がないほうがおかしい。それに対して、行政がなにができる?と思う。
    しかし6章では、福岡市と高知県の取り組みが紹介され、トップが変わることで児童相談所の仕組みが変わり、地域ぐるみで子どもを見守れる体制に持っていける可能性も示唆され、希望が持てる内容になっている。
    ちょっと衝撃だなぁ…と思ったのが、取材者の方が、高知県知事に、「虐待から子供を守る、という取り組みは、(選挙で)票につながらないのでは?」みたいな質問をした下り。たしかに今の日本では、高齢者福祉に力を入れた方が政治家にとって有利に働いてしまう。
    弱い立場にいる子どもたちや、子どもを虐待してしまうような親をいくらサポートしても、そもそもそういう人達は投票に行かない。だからおのずと、政策が後回しになってしまう。なんて恐ろしい仕組みなんだ。
    最近全国的に広まっている「こども食堂」は虐待防止の視点からは、かなり有効に働く、ということもよくわかった。
    私には何ができるだろうか。

  • ニュースで、何か不備があったときだけやり玉に挙げられる児相。
    現場の方たちは、本当に大変そうだ。
    何より、保護者への対応で精神をすり減らされるのが切ない。
    本書ではその負担を少しでも少なくするため、弁護士を常駐させるなどの取り組みをしている自治体を紹介している。
    もっと、スムーズにいろんな機関が連携し合えるようになれば、保護されるべき子どもも、その保護者も、そして児相ではたらく人たちも、救われる社会になるのだと思う。

  • 児相人足らん
    ホンマに足らん
    このままマンパワーだけに支えられてる状態で進んだら近いうちに破綻は避けられへんと思う

    受け入れ先としての里親も足らん
    これだけ少子高齢化やて言うなら今生きてる子供らを守るためにお金使わんとエライことになる

    この本を読んで里親の大切さを感じる
    今自分に何かできるか改めて考えなあかんと思う

  • 2018年に刊行された児相のルポ。緊迫感あふれる現場や「社会的養護」と呼ばれる、子どもを社会が守り育てるシステムの一端について学ぶことができる。

    日本は家庭が一番、生みの親が子を守らないわけがないとする性善説が強すぎる。それが故に家庭で起きる事件や虐待も数多く存在するのに。

    家庭で虐待を受けて強制的に保護された子を、その原因となった家にまた帰さないといけない、しかも親は児相に家庭を壊されたと敵対モード… など難しい事案も山積。

    刻々変わる状況の中で逡巡し立ちすくむ担当者たち。弁護士をつけて児相の判断力、機動力を上げる機運なども紹介。児童福祉士の負担を下げるため、それこそAIなどでリスク度を判断しアクションする方法はないものか。

  • 児童相談所の現実を描いた本。職員の勤務状況の厳しさを知った。児童相談所に関わる家庭は、選挙に行かない比率も高く、国(政治家)の動きが鈍いう事実がショッキングだった。

  • 「児童相談所が子どもを殺す」に比べ、児童福祉司か専門知識をもつようになり、弁護士や警察といった他機関との連係が密接になっているのが分かり、地域差やかけられている予算の違いもあるだろうが、良い方向に向かっているのが分かった。しかし、一人のケースワーカーがあまりにも多くの案件を抱えているだけでなく、突発的な通報にも対応しなければならないと、児童相談所の激務自体は変わっていないのも痛感した。知事や市長といった立場の人が子どもを取り巻く現状を理解し、行政によって改善しようとすることで、明確に結果として表れるのもよく分かった。

  • いつも批判の矢面に立つ児童相談所。この立場から児童虐待にどう関わっているのかに触れることができた。そして、職員たちの苦労には頭が下がる思いがした。
    しかし気になるところが一点。やはり、職員たちの「親」への思い込みや幻想と思われるところが各所に散見されているような気がした。職員自身の持つ「親」を雛形にして、虐待する親の苦悩を分析しているような印象を抱いたからだ。
    どうしても子育てできない親もいる。しかし、手助けすれば子育てできるようになると思っている節がある。ここを著者には気づいて欲しかった。そして、切り込んで欲しかった。また、児相職員の親への態度も気になった。幼い子どもをあやすような態度を端々から感じられた。親身になるのと、馴れ馴れしいのとは、違うと思った。
    思い起こせば、これを勘違いしている福祉現場の職員は意外と少なくないのではないだろうか。

  • ふむ

  • 3.5

  • 新聞記者なので描写記事。考察不足。

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著者プロフィール

朝日新聞社編集委員

「2004年 『啊、我的祖国!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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