- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022730923
感想・レビュー・書評
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本書の内容は、題名からネトウヨ的立場による朝日叩きかと思ったが、朝日叩きの内容はほとんどなく、リベラルと保守の本質を突き詰めていく内容である。
なぜ各国でトランプのようなポピュリズムが台頭し、リベラルがどのような経緯で成り立ち、なぜポピュリズムに勝てないのか等リベラルや保守、ポピュリズムを知る上でかなり参考になった。また保守は各国独自の価値観に左右されるが、リベラルは国際基準で同じ価値観であるから、世界的に普遍の価値を有するということがリベラルの本質をついていると思われた。
本書の冒頭で、日本においては自民党が革新的立場にあり、共産党や立民党が保守のような立場にあることが、若者層の支持を得ずリベラル衰退の要因と書かれていた。最初はインパクト狙いの詭弁と思ったが、まさにそのとおり的を得た見方であった。
とにかく内容は難しかったが、リベラルを知る上でためになる一冊であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
橘氏らしい、データに裏打ちされた議論。
本来リベラルが取るべき政策を、野党・及びマスメディアが避けている。安倍政権はもうこれ以上の右には展開する必要なく、リベラル政策を選挙公約に掲げ、しっかりと勝利している。
朝日新聞や毎日新聞、民進党や立憲民主党はこの本の問いかけにどうこたえるのであろうか? -
朝日というかリベラルが常に劣勢なのはなぜかという話。著者が解説するその理由は実に判り易い。↓
現在の世界では急速にリベラル化が進み成果を上げ、結果リベラルは敗退している。
つまりリベラル化は奴隷制やアパルトヘイト(少し前までは何処の国でも似たようなものだった)など、普通に考えれば善悪のはっきりしている殆どの問題を解決するという大きな成果を上げた。その結果残った問題は経済格差や安全保障、温暖化・脱原発など簡単には善悪を付けられない問題ばかり残ってしまった。リベラルは世界的に勝利したことで敗北したのである。
日本で云うネトウヨ的な主張は世界中で拡大しており、その発祥はアメリカにおいてリベラルの基準から逸脱した白人の田舎者。彼らに共通するのはアメリカから見捨てられたという怒り。
白人という立場は彼らにとって何の努力の必要もなく手に入れられるものであるから、トランプ支持者みたいな人には唯一のよりどころ。日本のネトウヨにとってのそれは日本人という肩書だけが誇れるものであり、それを覆す外国人参政権などの政策には必死で反対する。
また彼らが中国・韓国に異常にこだわる理由は、日本人がアジアで最も優れた民族であるという優越感を、中韓があらゆる方面で覆しつつあるという事。これはまた白人コンプレックスの裏返しであり、だからこそケントギルバートなどによる嫌韓本が彼らによく読まれる。
人間として道徳は6つある。1.安全2.公正3.忠誠4.権威5.神聖6.自由。それぞれが保守とリベラルでは受け止め方が異なるが、これらは人間の本性から生じてきた。しかし典型的なリベラルは3.共同体への忠誠4.権威への追従5.神への崇拝をバカにしてきた。つまりリベラルは6つの味付けの内3つしか使えない。6つの味付けができる保守が作った料理に大衆が魅力を感じるのは明らかであり、世界では保守がリベラルを圧倒する結果となっている。
ただ、どの国でも保守はその国内だけで支持されるのみで、グローバルでは他国に支持されないため(日本は事実上アメリカの属国なので、その立場を受け入れている人々にはトランプが好かれているのだと感じる)、グローバリゼーションの中ではリベラルが強い。
さらに日本だけがリベラルな愛国者という立場を否定してきてしまった。これは日本のリベラル政策の失敗。 -
現在の日本におけるリベラルとは何かという根本を解説する本。よく、自民党がリベラルと考える若者が増えて来ている(そもそも自民党の党是は憲法改正なので当然だ)。では旧来の左翼は何処へ行ったのか。当時革新を目指した層は老いさばらえて、自らの保身を図る。若者の多くは変えられるものなら世の中を変えたいと思っている。知識層と貧困層がそれぞれ指すリベラルの定義が違ってきていると思う。作者は明らかにリベラルだと思うが、新しい時代のリベラルである。惜しむらくは、朝日を叩くつもりがないのにこのタイトルをつけたこと。
旧来のリベラルがダブスタのジレンマに陥っている、という話は面白い。確かにそうだ。だって、旧来のリベラルは世の中に乗り遅れてしまったのだから。その代表が朝日だという話であると。ただ、朝日が叩かれている理由はダブスタだけでなく、捏造からの自作自演が多いことがバレてじったからではないか…… -
リベラルとか、保守ってなんだっけ?いかにしてなるもの?というものを調査結果を用いつつ明らかにしている本。
リベラルとか保守、いまいちよくわからんという方には一読の価値あり。
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中公新書の「戦後民主主義」を読んで、民主主義の来た道、行く道を考えるには、「戦後民主主義」の気分を作ってきた朝日新聞研究だろ、と思い開いた本です。書名から完全に感情的朝日ディスリ本パターンかな、と思い積読本にしていたのですが、内容は全然違う目鱗な本でした。初・橘玲です。ミチコ・カクタニの「真実の終わり」でショックを受けたポスト・モダンが反知性主義を生んだ、ということが端的に論理的にピシッピシッと語られています。そして、「保守」がなぜ「リベラル」に勝つのか、の説明に用いられる「道徳の味覚」というロジックも衝撃。しかし、グローバルでは結果的に「リベラル」が「保守」を凌駕するという再転現象も納得。ビヨンセがオバマ大統領の就任式で国家を歌う意味を市場性というテーマで説明していて、なるほど・ザ・ワールド。人間という生き物の生存戦略としてのネオフィリア(新奇好み)とネオフォビア(新奇嫌い)のストラグルも説得力ありあり。「雑食動物のジレンマ」のアナロジー、これから自分でも使いまくりそう。そして心理学、遺伝子まで話は広がり、イデオロギーは匂うか?みたいなテーマまで振り回されます。そして、最後の最後、「リベラル高齢者」「シニア左翼」の牙城となった「朝日的」なるものにブーメランみたいに戻って来るのでありました。男はつらいよ、がファンタジーであるように朝日はつらいよ、からは若い世代へのストーリーは動き出さないかも…
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完全に好き嫌い分かれるだろう本だけど、やっぱり橘玲の本は面白い。
自分は「リベラル」と「ネオリベ」の中間にあたる価値観を持っていることも本書を読んで客観的に感じることができた。
自分の考えや価値観が「どこにあたるのか」を知っておくことで、友人関係などに応用できるんじゃないかなと思う -
自分がリベラルであると自認するならば、論理的帰結はこうなるという事が示された本です。
最新の生物学、経済学の理論をベースに書かれており、非常に面白いです。
が同時に毒があります。
リベラルであるか、保守であるかは、遺伝学的に決まる部分があるのではないかという事を示唆しています。
遺伝学的な要素が自分の行動を決定する範囲が大きいという事は、部分的にはマーケティングでアプローチする層を特定できるかもしれない、という結論に至りそうです。
将来自分の遺伝子情報からマーケティングが行われているかもしれません。 -
右派化が革新的で、左派の保守的な日本の奇妙な構図を、『「既得権にしがみつかないと生きて行けない世代」と「既得権を破壊しなければ希望のない世代」によって分断されている』と説明に納得。日本の政治やマスメディアの報道で感じる違和感や矛盾の正体が掴めたと思う。