ディス・イズ・ザ・デイ (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022650115

作品紹介・あらすじ

「こういう話をしてるとさ、どんな気持ちでも生きていけるんじゃないかって思うよね」22のチーム、22の人生――サッカー国内2部リーグ22チームの22人のファンたちは、それぞれの思いを抱いて今季最終試合のザ・デイ、「その日」に向かう。職場の人間関係に悩む会社員、別々のチームを応援することになった家族、憧れの先輩に近づきたい男子高生、両親の離婚で十数年ぶりに再会した孫と祖母など、ごく普通の人たちのかけがえのない人生を、サッカーを通してエモーショナルに描き出した、一話完結の連作小説集。単行本刊行時、30近いメディアで多数書評掲載や紹介がなされるなど圧倒的な評価を得、また第6回サッカー本大賞を受賞した作品が、ついに待望の文庫化!装画:内巻敦子<単行本刊行時に掲載されたメディア(一部)>新聞:読売・朝日・日経・毎日・産経・赤旗・朝日中高生新聞・南海日日・京都新聞など雑誌:週刊現代・週刊文春・週刊朝日・SPA・日刊ゲンダイ・文學界・文藝・群像・小説新潮・女性自身・ダ・ヴィンチ・日経エンタテインメント!等々多数テレビ:めざましテレビなど <目次>第1話 三鷹を取り戻す/第2話 若松家ダービー/第3話 えりちゃんの復活/第4話 眼鏡の町の漂着/第5話 篠村兄弟の恩寵/第6話 龍宮の友達/第7話 権現様の弟、旅に出る/第8話 また夜が明けるまで/第9話 おばあちゃんの好きな選手/第10話 唱和する芝生/第11話 海が輝いている/エピローグ――昇格プレーオフ/あとがき <本書に登場する架空の22チーム>オスプレイ嵐山/CA富士山/泉大津ディアブロ/琵琶湖トルメンタス/三鷹ロスゲレロス/ネプタドーレ弘前/鯖江アザレアSC/倉敷FC/奈良FC/伊勢志摩ユナイテッド/熱海龍宮クラブ/白馬FC/遠野FC/ヴェーレ浜松/姫路FC/モルゲン土佐/松江04/松戸アデランテロ/川越シティ/桜島ヴァルカン/アドミラル呉/カングレーホ大林

感想・レビュー・書評

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  • メチャクチャ幸せにしてくれた一冊でした!
    思いが溢れちゃって何から書けば良いかわからない。

    サッカーを小学3年から愛し続け、唯一のひいきは弱小時代からの日本代表。
    Jリーグができてここまで地域にサッカーが根付いたことに、勝手に感動しているおじさんには、すごーくおもしろい「11」のお話しとエピローグでした。設定が、J2、最終節というのも絶妙です。
    11話それぞれの土地、方言、日常などがなんかうらやましいのは、サポートするチームへの愛を感じれるからと自分の定年後の夢が重なったからかな。

    日本各地でののんびり観戦旅行。あー早く実現したいなぁ。

    新年早々、この本に出会えて感謝で~す。

  • 日本のサッカー2部リーグで戦う22のチーム。
    その各チームのサポーターたちを描いた11編の連作です。

    彼らの普段の生活、仕事や家庭の悩み、なぜそのチームを応援するようになったのか、そのチームにどんな想いを抱いているのか。
    そして今季最終節、チームの昇格・降格・残留がかかった"その日"を彼らはどう過ごしたのか。
    チームにとっての節目である"その日"は、サポーターたちにとっても各々のターニングポイントになっています。
    彼らの中で何かが変わったり、停滞していたものが動きはじめたり。
    スポーツではないけれど、私にも心から応援している推しがいるので、サポーターたちのその心の動きがとてもよくわかりました。
    日常生活には嫌なことも不安もあるけれど、それらを少しだけ離れて全力で誰かを応援する時間のかけがえのなさを改めて感じながら読了。

    本書は津村さんの人間への愛があふれてるなぁ…としみじみ。
    特に第7話「権現様の弟、旅に出る」がとてもとても好きでした。
    「あらゆる僥倖の下には、誰かの見えない願いが降り積もって支えになっているのではないか」という一文がとても優しくて、本当にそうであってほしいとちょっと涙ぐみながら思ったのでした。
    読めば読むほど好きになる作家さんですが、本書でひときわ私の津村記久子愛が深まりました。

  • 初、津村記久子。

    本の雑誌誌上でサッカー本大賞との事なので、選手にターゲットを当てた熱い熱いお話のかと思って読み始めた。

    全く違いました笑

    少し問題は抱えてるかもしれないが、ごく普通の人々が、何気なくスタジアムに足を運ぶことになり、サポーターの一体感やゲームそのものに徐々に魅せられていき、結果として少しだけ前を向けるようになるのを静かに描いたもの。

    舞台設定が架空のJ2チームでその最終節を描いているというのがまずいい。地方色も豊かでこじんまりとしたチームゆえの、人々のつながりがなんとも言えず心地よい。

    個人的にサッカーは草サッカーレベルではあるが、30年くらいプレイヤーとして楽しんできた。ホームタウンにはJ3以上のチームが3チームある。久しぶりにスタジアムに足を運んでみたくなった。

  • なんと架空のサッカーチームを22、作り上げ、エンブレムまで作り、それでいて選手ではなく応援する人にスポットを当てた物語。全11話、対戦する2チームと、それぞれを応援する人たちが登場する。
    描かれる試合はすべて最終節。その日までにどんなふうにチームと関わってきたのか、どんな思いでその試合を見ているのか――濃淡はさまざま。何年も熱心に追いかけている人もいれば、ひょんなことから見に来るようになった人も。背景も世代もバリエーションに富んでいて、サッカーってめっちゃ懐の深いスポーツなんだな!とびっくりした。いや、スポーツ観戦全般に言えることなのかもしれないけど。

    どの話もとても面白い。
    両親を亡くして少し不安定になっている兄弟が、エースで人柄も良いFW選手を大好きと思うことで支えられているような、やさしい話『篠村兄弟の恩寵』。
    気になる先輩に近づこうと、全く詳しくないサッカーを見に行き始め、音楽好きだったためにゴール裏でドラムを叩き、チャントを作るようになった高校生の話『唱和する芝生』とかが好き。

    「芝生の歌いまくる人々の大声を聞きながら試合を観ていると、一種のトランス状態というか、サッカーと歌とコールだけがそこにあって、ほとんど別のことが考えられなくなって、それはそれで心地よかった。」

  • 僕は中日ドラゴンズを偏愛している。
    好きになったきっかけがあるかと言われれば、野球を見始めたときに強かった、好きな選手がいた、地元だった、チームスタイルが好き、などなどたくさん挙げられるけれど、本当はそのどれでもなくてそのどれでもあった。
    実際問題勝っても負けても自分の人生には本来何の影響もないはずなのに、試合が始まる時間には必ずと言っていいほどスタメンを確認し、観られれば観て、勝てば1日報われるくらい嬉しく、負ければめちゃくちゃ悲しい。気晴らしだったはずのものは気晴らしではなくなっていき、野球で負ける気晴らしによくわからないことを始める。
    弱くなったしファンやめるか、って毎年言ってみるけれども結局裏切れないだのなんだの訳のわからないことを言って翌年も観て、今年は違うだのなんだの言いながら、チーム方針に文句言ったり勝手に期待したり失望したり忙しい。シーズンが終われば次のシーズンを心待ちにし、ストーブリーグの動向に見入る。

    その全ての感情が、この小説には描かれている。そして、その全ての価値が、かぼそく、でも確かに、描かれる。だから僕は野球を見るのだ。

    この小説は、最終節が明確で降昇格のあるサッカーでなければいけなかったし、派手な一部リーグでも海外リーグでもいけなかった。誰も観ていない二部リーグだからこそ、この小説はスポーツの価値を鮮やかに描き出す。

    「スポーツの力」はオリンピックでもオールスターでも代表戦でもなく、「二部リーグの最終節の消化試合」にこそあるのだ

  • 今年は久しぶりにサッカー観戦に行こうと思っています。この作品に綴られていたような雰囲気をスタジアムに行って味わってみたい。一人で観戦もあり。

  • 全国に散らばる架空のサッカーチーム(それも二部リーグ)を22、それぞれのエンブレムまで作るというかなり細かい念のいった設定を作りこんで何を書くのかと思えば、そのチームのファン達のサッカーをとりこみつつも普通に過ぎていく日常と彼らにとってのシーズン最終節。

    なんという贅沢なサッカー小説。とてもマニアックな世界を描いているのに、サッカーをほとんど知らず、ましてJ2の昇降格なんてまったく意識にもない俺にも興味深く読める至極の短編の数々。

    生活の中に推しのサッカーチームがしっかり入り込んで、勝ったら喜び負けたら哀しみ、その感情はチームとともにあり(選手のせいだけにはしない)、応援は力だと信じる日常。
    阪神ファンやったけど、負けた日の気分の悪さ(調子よくて4割、下手すると半分以上負ける)とか一生懸命やってる選手のミスをヤジる自分がイヤになってファンを辞めてしまった自分からみたら、なんと贅沢で素晴らしいファン生活かと羨ましく思えて仕方がない(ファンたちは辛いことも苦しいこともあるんだが)

    だからサッカーを観てみようとまでは思わなかったのだが、今接している趣味、ランニングとかクライミングとか読書とか特撮映画鑑賞とかアニメ鑑賞とか、をもっともっと大切にすれば、人生まだまだ濃密になるんかなと思ってみたり…。

    久々に津村記久子の真骨頂を味わったように思う。

  • JリーグのJ2がモデルのサッカー国内2部リーグが舞台。各地域のクラブの最終節がサポーター目線で描かれていく。熱心に応援する人、なんとなく観に行く人と熱量は様々で、でも試合を観ることで日常のなにかを忘れたり、見つめ直したりと、直接的ではなくともサッカーが生活の一部のような感じがとてもいい。勝敗に一喜一憂したり、スタジアムで知り合った人と分かち合う光景が鮮やか。優勝がかかったチームの試合、残留か降格かギリギリにいるチームを応援する人たちと色んな想いがあってとても楽しかった。今は贔屓にしているチームはないけどまたスタジアムで観たくなる作品でした。

  • 舞台は架空のサッカー2部リーグ、各地方クラブ。それらを応援するサポーター(登場人物)たちの、応援感情の機微を描いた話。
    そこには、観戦のきっかけって案外ひょんなことなんだとか、チームの勝敗に一喜一憂する様子、日々の気苦労は絶えないけれど観戦中の一体感、没入感のリアリティがよく描かれているように思う。
    生活の中心にチームの応援が息づいている。地域密着って、こういうことなんだと感じさせられる。

  • スタジアムに行く前の電車の中で読みたい本。個人選手推しも、マスコット推しも、ゴール裏で熱く応援する人もサッカーが地域に溶けけみ生活になっている人もみんなそれぞれ90分を楽しむ温かさがでて、一気に読了。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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