- Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022650085
作品紹介・あらすじ
俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ! 極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をW受賞、作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」――侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか? 朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。
感想・レビュー・書評
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語り部風の文章が初めは読みにくかったけど、そんなことはすぐに気にならなくなるくらい内容が濃くて面白かった。
任侠の家に生まれながらも役者としての類い稀な才能を持つ喜久雄。父親がヤクザ同士の抗争で亡くなり、歌舞伎役者花井半二郎の家で暮らすことになる。そこでは半二郎の息子、俊介と切磋琢磨しながら女形として着実に成長をしていく。
順風満帆な役者人生を歩む喜久雄の転機となったのは、半二郎の事故。重傷を負った半二郎の代役に大抜擢され、実の息子ではなく実質的に半二郎の後継者となった喜久雄だったが、半二郎が病に倒れ、後ろ盾をなくしたことから、不遇の時代へ。
歌舞伎の世界のことは何も知らないけど、役者だけでなく歌舞伎を取り巻く者たちの人間の欲望が交錯しその迫力とリアリティに読むのが止まらなかった。
喜久雄に後継者の座を奪われ、失踪した俊介が戻りこれからまた喜久雄に苦難が待ち受けているのかと思うと、喜久雄かんばれ!と思わずにいられない。
個人的にはどんな時にも喜久雄を支える徳次のことが好きです。
下巻で喜久雄がどのような人生を見せてくれるのか楽しみでなりません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まるで芝居を観ている感覚で、物語に没入しました。文体や構成が歌舞伎っぽく、その代表が人物の会話の合間にある口上だと思います。(例 〜と申しましょうか、〜なのでございます) お陰で、歌舞伎や伝統芸能のもつ堅苦しさや昭和の古臭さへの抵抗もなく、加えて展開の面白さに、するする読み進められました。
片や人気歌舞伎役者の御曹司、片や九州にその名を馳せた任侠一家の跡取り息子。二人は切磋琢磨しながら芸の道に励み、時代の寵児として取り上げられるようになります。
しかし、師匠の事故・病気をきっかけにして二人の明暗が分かれ、運命が大きく動いていきます。出奔、暗転、そして再開…、まさに上巻の副題〝青春篇〟の如く、苦悩の先の希望を期待しながら、展開から目が離せませんでした。
下巻〝花道篇〟を早く手に取りたく、気がはやります。 -
長崎のヤクザの組長の息子として生まれた喜久雄。
抗争により父を亡くし、大阪の歌舞伎役者である2代目花井半次郎に預けられ。半次郎の息子である俊介と共に女形として成長していく。
半次郎が骨折した時、代役として選んだのは息子・俊介ではなく…
俊介の出奔、2代目半次郎の死、3代目半次郎襲名…
2代目半次郎という後ろ盾を失い、思うような活動ができない喜久雄…
そして俊介は…
3代目半次郎として、なかなか思うような活動ができないところに歯痒さを感じる…
部屋子上がりだからか…
歌舞伎の世界だけならまだしも、映画ででも…
春江は喜久雄と、と思っていたのに、あっさりと…
市駒は市駒で、ひとりで娘・綾乃を育てて。
何かじめじめしたものが全くない女性たち…
どうなっていくんだろうか…
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待ちに待った文庫化。
期待を裏切らない面白さ。
主人公の喜久雄は、若くして結構な立場に追い込まれていくが腐らずに成長していく姿がグッと心を掴みにくる。ただ、喜久雄自体の感情の動きはつまびらかに描かれているわけではないので行間から読み取れる感じがまたなんとも想像力を掻き立てられる。 -
語りの妙と魅力的な人物の一挙一動にどんどん物語の中に引き込まれていく。上巻青春編は喜久雄14歳から30歳までが描かれている。長崎の立花組の新年会から物語は始まり、喜久雄の父親であり立花組組長の権五郎が弟分の辻村に殺されてしまう。新年会には辻村が連れてきた歌舞伎役者の二代目花井半二郎も参加しており、それがひとつきっかけとなり喜久雄は辻村の紹介で大阪の花井家に世話になる。
旅立つまでにも仇討ち騒動があったり、花井家で修行するようになってからの実子俊介とのやり取り、喜久雄の世話役徳次や天王寺村の弁天の人柄など魅力満載。権五郎の後妻マツの大親分の妻としての心意気と、喜久雄を育てた母としての決意には思わず涙ぐんでしまう場面もあった。二代目半二郎の人生と三代目を襲名した喜久雄2人の女形を通して描かれる熱量も相当なもので、順風満帆とはいかないからこそ読んでいるこちらも喜怒哀楽を満載にして物語に入り込んだ。さて、下巻も楽しみだ。 -
初読み作家、文庫化を待っていた本書。
任侠の家に生まれた喜久雄だか、上方歌舞伎の一門へ。任侠の坊ちゃん喜久雄と、梨園の坊ちゃん俊介の若き二人の青春篇の上巻は、しっかりと下巻へ引き摺り込んでいく。
文章の語りが、歌舞伎の解説イヤホンガイドのようで、作者の意図を感じた。さて、下巻だ! -
レビューは下巻でまとめて。
文体と世界観に慣れるまで少し時間を要しましたが、とてつもなく面白い作品に出会ってしまった年末でした。
下巻が楽しみで仕方ありません。
2022年13冊目 -
伝統芸能に興味があるので、読む前からワクワク!
まさにお芝居を観ているような語り口に、震えながら読み進める。
喜久雄の歌舞伎に対する熱い情熱と徳次の喜久雄坊ちゃんに対する忠義のいじらしいほどの健気さに胸が熱くなる。
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#3628ー18ー59