- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022648976
感想・レビュー・書評
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総合病院に併設されたカフェのお話。
カフェ従業員、病院職員、患者、患者の家族、様々な人たちが集います。
病と向き合い、それに伴う人間模様はどの病院内でもあることで、それが現実的に描かれていると思いました。正直、実際の病院内はもっと厳しい空気が流れているように感じますが。ラストに向けての展開に、肩の力が抜ける思いでした。個人的に、病院には大切な人が長年お世話になり、その度、心が沈むことも多々あって。自分はやり切ったので何の後悔もないですが。例えカフェが無い病院でも、待ち合いの椅子に座って飲む缶コーヒー、これでどれだけ救われたかわかりません。重い空間だからこそ、美味しいコーヒーの存在はなくてはならないものです。元気がもらえるクッキー、いいですね(買ってみたい)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
病院内にある、町中でよく見かけるチェーン店のカフェが舞台の長編小説。
カウンターの内側には、バイトの村田君と、週末だけバイトをしている作家兼主婦の相田亮子がいます。
レジをはさんだ向こう側には、医師や患者と思われる人たちや、患者の家族など、常連客で賑わっていて、病院と言えどもちょっとしたオアシスのよう。
エスプレッソマシンのプシューというスチーム音が聴こえてきそうです。
お客さまを遠くから見ているバイトの亮子も、実は悩みを抱えています。
カフェの常連客である、両親の介護を終えた朝子と、入院中の夫孝昭の夫婦の話がとても良かったです。
「健常の世界と病気の世界の間には壁がある。
病人が自分の世界に閉じこもるのも、闘うための手段ではあるかもしれないが、出ていくことを忘れちゃいけない。
それと向き合うのは自分しかいない。」
この夫婦の手紙のやりとりが最高に素敵でした。
そして、物語の最後には、カフェ内でとても「いい話」が巻き起こります。
読み終えて、身も心ぽかぽかと温かくなるようでした。
初読みの作家さんということもあって、とても新鮮な気持ちになれました。 -
涙と温かさで満たされる一冊。
先日、院内カフェで一日中過ごした。
老夫婦、千羽鶴を折る女性、母娘と様々な方たちを眺めては、彼らが今抱えているものを勝手に想像し胸が痛んだことを思い出す。
痛みも悩みも決して同じ分量を分かち合うことはできない。
登場人物誰もが葛藤と気づきを得てたどり着いた場所に涙せずにはいられなかった。
大切なことは全てここで学んだ、そんな姿と予想外の優しさ溢れるラストに涙と温かさが満ちる。
何もかもを忘れてただ目の前の時間を楽しむ、そんな止まり木の場と時間の必要性を感じた、どこまでも心に優しい物語。 -
読み返したい本がまた出来た。持病で毎月のように通院していたとき、まさに院内カフェで居合わせた方と話したことがある。何とも言えない連帯感がある、不思議な時間だったことを思い出す。中江有里さんの解説も良かった。
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病院内のカフェのお話。通院していた病院のカフェを思い出しました。病院は無機質な感じだっだけど、院内カフェだけはほっとする暖かい場所だったなぁ〜。
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ずっと気になっていた本。
柔らかい印象のカバーイラストに惹かれてました。
病院内にあるカフェのチェーン店を関わる人たちを描いた連作短編集。
病院の患者や付き添い、家族、医師、店員など様々な視点で様々な悩みや思いを抱える様子が描かれている。
そして、立地ならではの通りがかりの縁というようなものもあって、奥深かった。
話は決して軽くはないけれど、読み進めれば進めるほどカフェでの出来事がするすると結びついていく感じが読んでいて心地よかった。 -
院内カフェの店員さんとお客さんの話
病院とカフェの境目
病気と健康の境目
家族や夫婦だからこその孤独感
中島たい子さんの文章がとても好きです
朝子さんの介護の話は、これから自分も経験するかも知れないと思うと憂鬱になる
何でもかんでも当たり前はないこと
周りにいる人や健康な身体に感謝しないとと再度思わせてくれる本でした! -
カバーに惹かれて中島たい子作品初読了。病院のカフェに来るお客さんたちのオムニバス短編集。
両親の介護の後夫の介護をすることになった妻の話が、自分の近い未来の話のような気がして身につまされた。結婚生活20年30年を超えた夫婦の微妙な距離感、依存するようになった年老いた親とガッチリ寄りかかられる子どもの危険な距離感のなさがせつなく悲しい。夫婦の現状を打破する方法が、読んでる私にはちょっと甘ったるい感じがしたけど、ある程度関係が出来上がっていても、あがけば今からでも関係を変えられるんだなと思った。人生いくつになっても人間関係は難しい。