EPITAPH東京 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 534
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648822

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】刻々と変貎する《東京》を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている筆者Kは、吸血鬼だと名乗る吉屋と出会う。彼は「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが……。スピンオフ小説「悪い春」を特別収録。

感想・レビュー・書評

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  • 東京を舞台にした戯曲を書いている主人公(まあ恩田さんでしょう)が、その舞台となる東京を色々な角度から切り取って東京という街の実像に迫っていく過程を書き記したエッセイ、という感じでしょうか。東京のあんな点こんな点とかなり興味深い内容です、少し物知りになったような気がします。ただし、視点が途中で謎の男性が見る東京に変わったり、肝心の戯曲の冒頭場面や設定詳細が登場したりと、なかなかに全体像を理解するのが難しい作品でした。

    そして、頭に浮かんだのは「三月は深き紅の淵を」の〈回転木馬〉です。まさしくあれに似た構成。あの作品も章自体の全体像を理解するのに苦しみましたが、こちらはもう少し整理された印象を受けました。ただ、その肝心の戯曲の話題が途中でパッタリ止まってしまって、後半、話の展開がどんどん散漫になっていったのが残念でした。いきなり巨大生物襲来とか、少しかっ飛び過ぎて流石についていけない感が…。
    ただひとつ興味深い記述がありました。「筆者はここ数年、資料として大量のピアノ曲を聴いているのだが…」これは恐らく「蜜蜂と遠雷」に関係することなのだと思いますが、バルトークにも触れられています。まさかこんなところでこんな記述に触れられるとは思わなかったので、ちょっと得した気分です。

    あと、一点面白いなと思った点は、恩田さんが自身の書く戯曲について以下のような注意書きをしていた点でしょうか。
    「台詞は膨大な量になる予定」
    もの凄い納得感。流石、わかっていらっしゃる…。恩田さんの書いた戯曲に出演する役者さんは相当な覚悟が必要です。

  • うーん…ちょっとテーマが分かり辛かったかな。
    「エピタフ東京」という戯曲を書く筆者と、
    自分を吸血鬼だと言う男・吉屋。
    それぞれの目線からの文章。
    そして「エピタフ東京」の台本。

    筆者の方は、恩田さんのエッセイのような感じ。
    特に途中からそれを強く感じた。
    吉屋の方の話や、台本は意外に面白かった。

    最後にあるスピンオフ小説「悪い春」は、
    ちょっと恐怖を感じた。
    こんな世の中にならないよう祈る。

  • これは東京にまつわるエッセイだ。
    物語を期待したが、相変わらずチャレンジングな構成を
    試したがる筆者の趣味嗜好の本だった。
    ただ、エッセイとしては大変面白かったのだが…
    そういえば、戯曲EPITAPHは桐野夏生のoutを連想させた。

  • 恩田陸らしい作品だったなぁと。タイトルにある「東京エピタフ」の戯曲が彼女の「木曜組曲」の設定とほぼ同じで、その部分は嗤ってしまったけれども。

    このふあふあとしたとらえどころのなさが彼女のSFやホラーの楽しさなんだよなぁと改めて思う。

  • 何小説なんだろう、これは。この何者でもなさ、匂いのない乾いた質感が、都市東京ということなのか。

    過去の歴史と今の時点の東京を閉じ込めるように描写している。

    国民という単位で共有する記憶を、自分の言葉で記録する行為は業であると思う。いつもそのようなことを考える。

    「悪い春」が面白かったな。「春なのか?」という、終わらせ方が良かった。

  • 6割ほど読んで挫折。一つひとつの章(ピース?)は短いので読みやすいけれど、場面や人物が繋がらなくてなかなか読み進める気力が続かず。淡々としており、先が気になるーー!ともならずに挫折。

  • 興味深い話は途中途中にいくつかあったが、連想ゲームのように話題が転々としていくので、全体の輪郭が掴めないまま読み終わってしまった。
    作中作は面白そうだった。

  • 電子版で読み始めたけど、やっぱり思い直して久しぶりに紙単行本で再読
    纏まりごとに紙の色もフォントも組み方も異なるのに、めくり心地は均一だから没入感がたまらない
    悪い春だけ文庫電子版で

    311を過ぎた後の東京が舞台の2015年刊行の本作だが、「必ずまた疫病は来ます。」などハッとさせられる文言はあるし、東京オリンピックへのネガティヴな印象は開催前後のドタバタを思うと薄寒くなる
    この本自体が東京の墓標になりやしないかと思えてくる

    幸いまだゴジラは上陸していないし、平和サポートボランティアは導入されていないけれど、きな臭い空気感に包まれている社会がそれを笑い飛ばせなくしていて気が遠くなる

  • もし可能なら単行本で読むのがおすすめかも。
    装丁が素晴らしくて、よりこの作品の世界観を感覚で掴みやすいです。

  • エッセイとフィクションが浸食し合ったような不思議みのあるお話。
    終盤の襲来後どうなったん!?あれは夢オチ??

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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