- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022648723
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学小説】祖父の寛太に誘われた、壊れた自転車でゆく旅。その過程で寛太から聞く、限られた時の中で精いっぱい自分たちの命を生きた恋人たちの物語。あの戦争で心に深い傷を負った寛太と、彼が本気で愛した美しい少女・真利子。旅の果てにあるものは?
感想・レビュー・書評
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安心安定の市川拓司でした。
優しい世界を描かせたら、右に出る者なしと断言できる。
そんな素敵なお話でした。
今作も特段な設定ではない。祖父を軸に孫とその彼女。祖父の昔話を二人に語っている。
大雑把に説明すればこれだけなのだが、そこは流石の市川ワールド。
“純”で“一途”で“温かい”。
読みやすい表現が、さながら絵本を読み聞かせる母親を彷彿させる感じがしました。
筆者夫婦も寛太と真利子と良く似ている。むしろ夫婦をモデルとし、寛太と真利子が居る。
筆者のエッセイを読んだとき、そんなふうに書いてあったと思います。
変わり者の旦那と、それを見過ごせない思いやりの奥さん。
ちゃんとバランスがとれてるんだよなぁ…。
だからこんなにも優しい世界が描ける…。
特に気に入ったところに、P72「ほんと、あなたたちってユニークね。どれもこれも、少しひととずれてるの」とある。
これは作品中では寛太と真を指すが、筆者も右ならえらしい。筆者の奥さんならきっとそう言うだろう。
P180からP185にかけての、真と麻美のキスシーンも市川ワールドならではの描き方。純愛そのものを透き通る様に綺麗に、そして温かく表現している。他の作品にも見られるが、やはり市川拓司の世界は愛おしいぐらい優しく書き綴っている。
最後にP206の「不器用な者たちだけが愛に身を殉じていくんだ」とある。
この一文は市川ワールドにおける真骨頂でもあるだろう。
少しずれていても構わない、共に歩むことが大事、如何なる時も寄り添う、筆者の根底にはこんな要素が含まれている。
だから読者は納得します。
貴方がた夫婦がそうなのだから…。
久々の市川拓司、優しい世界は盤石でした。
素敵なお話を、ありがとうございました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
付き合ってそうで付き合ってない2人だからこその葛藤とか焦りが、愛って何だと思う?って聞いてくる感じ。壮大な展開は無いのに読み飽きないのすごい。この人の書くお話は本当に優しさしかないと思う。
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市川拓司さんの作品は、
いつも透明で美しい愛が綴られている。
今回も 持ても綺麗な作品だった。
世界はいつも、純粋に愛する2人を
理不尽に呑み込もうとしてくる。
そんな世界でも 変わる事なく愛し続けられることは
誰にでも出来ることでは無い。
この2人の流れる時間は
きっと他の人が入り込む余地すらない、
2人はきっと、普通の時間とは別の時間に生きているのだろぅなと思う。
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久しぶりに読み切った本。1人の人との出会い、1人の人を想い続ける人生…そんな人生もあるんだろうなと、なんだか純粋な愛情に心温まる話でした。
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スキ
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始業前に読み終わり真っ赤に目をはらして涙をぬぐっているのを職場の人に見つかって、スギ花粉が酷くてと取り繕いました。人間嫌いを公言しているくせにまだ救いを求めているのが恥ずかしくなると同時に人に優しくありたいと切に思いました。
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それはほんとに哀れで惨めなことだったの?