ブラックボックス (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648211

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】真夜中のサラダ工場、最先端のハイテク農場、地産地消を目指す給食現場……。利益を追求し、科学技術を駆使した果てに現れる「食」と環境の崩壊連鎖を、徹底した取材と一流のサスペンスで提示する、エンターテインメント超大作。

感想・レビュー・書評

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  • 農業や工場システムの専門的な説明部分は難しかったが、とにかく、先へ先へと読ませるパワーがすごい。

    大学の農学部出身で、父親の代の『食えない農業』『閉鎖的な農村社会』を否定し、新しいやり方で仲間たちと農業を営んでいる、三浦剛。
    しかし彼は、大企業に「野菜工場」として土地を提供する羽目になる。

    投資顧問会社の人気経済アナリストだった、加藤栄実は、社長の不祥事に巻き込まれ、マスコミにさんざん叩かれた末、故郷に逃げ帰る。
    深夜の野菜工場で働き始めるが、そこでの外国人労働者の悲惨な労働事情に驚く。

    市川聖子は、玉の輿で開業医と結婚したが、セレブ社会ではじかれた末離婚、栄実と同じく故郷に帰る。
    彼女は一念発起して資格を取り、4つの学校で栄養教諭として働くこととなるが、子供たちの健康状態の変化に危機感を感じ始める。

    3人は同級生。
    彼らが、食品の裏の『ブラックボックス』に疑惑を持ち、つぶされたり、巻かれそうになったりしながらも戦っていく物語だ。
    これはある意味、『食品クライシス』?
    日本が、いや、世界中が、向かっている先は、やはりハイテク野菜工場なのだろうなと思う。
    スーパーでの買い物もなんだか怖くなってしまう読後感。
    諦めるしかない部分もあるのだろうが、やはり、給食には安全なものを使って欲しいと思う。
    圧力に負けずに子どもたちを見守りつづけた聖子に、MVPを送りたい。

    ヒールとしての片岡の存在が面白いアクセント。
    映像化もいいかもしれない。

  • 読んだのは文庫ではないけど、これしかないから仕方なく登録

  • コンビニでサラダをよく購入する。
    仕事の昼休みに。

    カット野菜は栄養がないとは聞いていたけど、危険だとは考えてもいなかったので怖くなった。

    弟が弁当工場でバイトをしたことがあり、それ以来コンビニ弁当やサラダ、惣菜を口にしない。
    床に落としたハムをアルコールを吹きかけてレーンに戻したオバちゃんを見たと言っいた。

    これとはむしろ逆で、この本は清潔・安全を考えぬいたからこそ生まれる危険性について書かれていた。

    最終的には運が味方して、ドミノのように解決へ導かれるが、もっと3人で戦って勝ち取る結果も見たかったかな。

    リアリティはなくなるだろうけど。

  • 7月-5。3.5点。
    マニュアルされたハイテク農業。その野菜からサラダを作る工場で働く主人公。かつては東京で脚光を浴びたが、田舎に戻りパート勤務。周囲で健康被害が出て、安全なはずのハイテク農業生産物に疑いが。

    解説に「この小説は瘴気が漂う」と書かれているが、その通り。外国人研修生の過酷さや、食物の危険性などが理解できる。ただ、少し専門用語が多すぎる気が。読むのに時間がかかる。

  • 勤めていた会社の社長が逮捕され、広告塔としてメディアに露出していた栄実は、バッシングを受け都落ちして地元へ戻ってきた。
    人と接することを避け、深夜のサラダ工場で働くことに。
    そこは外国からの研修生が多数をしめ、3食を自社製品で済ます彼らの中からは体調不良を訴える者が後を絶たない━

    親とは違う稼げる農業を目指し、同世代の仲間と大手肥料農薬メーカーと手を組みハイテク農場を始めた剛。
    しかし農場というより工場のような現場はトラブルが続き、実験台のような扱いに蟠りを持つが━

    離婚し地元へ戻り栄養教諭として働く聖子。受け持つ学校で給食が始まり、ニュートリションの野菜を使うようになってから子供たちにアレルギーや病気が急増したと感じ━

    同級生の3人は現状を変えようと原因を調べ始め、ニュートリションの野菜サラダに使われている「プレドレッシング」に疑いの目を向ける。会社やメディアに訴えるが強大な相手に成す術もなく━

    真夜中のサラダ工場、最先端のハイテク農場、地産地消を目指す学校給食……「安全安心」を謳う「食」の現場でいま何が起きているのか。利益追求と科学技術への過信の果てに現れる闇を、徹底した取材と一流のサスペンスで描くエンターテインメント超大作。


    カット野菜を割りとよく買う私にはかなり怖いお話でした-
    カット野菜には栄養あんまりないってのは聞く話で、手軽さと野菜摂取してる気休め的に使ってるんだけど。

    そんな風に“体にちょっと良いこと”してる気で選んだものが原因で不調になったり病気の引きがねになったら…

    登場人物たちが二面性ある人たちが多かったように思います。
    立場や時期で見方が変わったり、理想と現実に揺れ動く様が生々しくて、本当にこの事件起きたことあるんじゃ…と感じて、それがまた怖かったです。
    リアリティーありすぎ。

    野菜工場も効率化とか脱農薬を考えるとメリットはあるけど、そういう作られ方をしたものを受け入れられるかというと…抵抗感ある-

    しかし、強大な相手に 太刀打ち出来ずに燻ってたのに、ほんの些細なきっかけで変化が起こるのも、変化が起こっても根本的な解決が即実行されないのもフィクションじゃなくノンフィクションみたいで。

    口にするものを今までより考えて選びたいと思いました。

  • 単行本「ブラックボックス(篠田節子)」(2013/01/04)の文庫化(「ブラックボックス(朝日文庫)(篠田節子)」(2016/09/07))。
    登場人物の発言によれば、2005年以前の話。
    週刊誌での連載が2010年、単行本の出版が2013年であることを考えると、もう少し現在に近い時点の話にはできなかったのかと思う。
    いろいろと資料を活用しているようなので、執筆時で資料が出そろう5年以上前の話にしかできないのかもしれない。

  • 篠田節子さんの小説、初読破。
    食の安全という難しい題材を色んな立場の視点で時系列に進めていって読みやすかった。身近な題材だけに色々考えさせられた。

  • ひと言で言うなら、会社の同僚に「読み終わったんで、よかったらどう?」と渡されて。読み始めたら「あのヤロー」と思う本、って感じ?(笑)

    いや、面白いんですよ。それも、かなり。
    ページもどんどん進む。
    でも、それは個々のエピソードであって。600ページの小説として面白いかとなると、うーん…、みたいな(笑)
    (評価の★を一つ減らしたのはそういう理由)

    篠田節子はかなり好きで。実は、唯一サインをもらいに本屋に並んだことがある作家だったりするんですけど。でも、一時期ヨーロッパのホラー(?)みたいな、似たような本が続けて出た時があって、あれでイヤんなっちゃったんですよね(笑)
    そんな久しぶりの篠田節子でしたけど、やっぱりさすがだなぁー。
    この同じようなエピソードが延々、延々、延々…続く、続く。さらに続く600ページ弱を一気に読ませるんですから(笑)
    いやもう、盛り上がりなんて、ほぼナシ!(爆) ←100%褒めてます

    そんないやはや…な小説ですが(いや、面白いんですよw)、小説としての面白さはともかく、何がスゴイって、篠田節子節(ややこしいw)な耳の痛い文が目白押しなのがスゴかったです。
    もう、食品会社は元より、技術系の会社、というより仕事している人なら読んでおいた方がいい、示唆に富んだ文章のオンパレード。
    読んでいて、カツンとくる人もいると思うんですけど、でも必ずカツンとくる人の立場にたったことも書いてあるのが、またスゴイ!

    「科学的」じゃないと世間から馬鹿にされ相手されなくなっちゃった結果、逆に「科学的」という言葉さえ付いていれば、その「科学的」の論拠がいいかげんでも“科学的なんだから正しい”ともてはやされる今の日本。
    個人的には、最初の方、サラダ工場のパートであり、チーフでもある堀田が「科学的に安全だと言っても、体が拒否するものはおかしいんだ」みたいなことを言う場面、あれはちょっとガツン!ときました。
    だって、ついこの間まではそういう人はいっぱいいたのに。今は私もそうですけど、みんな、ネットで調べて。ネットで専門家がこう言っているから、それが絶対正しいって思いこんでるじゃないですか。
    そう言っている「専門家」なんて、何がどう「専門家」なのかわかりゃしないのにさ。

    堀田みたいな人って、ちょっと前までは普通にいたんですけど、今はそんな風に肌感覚で物言う人ってあまりいないですよね。誰もが「科学的」な理屈で物言っている。
    もちろん、肌感覚だけの物言うが困るのは確かしょう。でも、人間である以上、間違いは必ずある。人智の及ばないことだって起こる。
    そういった事態に対処するために理屈と肌感覚は両輪で、とても大事なことのように思うんだけどなー。
    ただ、そうは言っても理屈をパーっと並べた方がカッコいいというのはあるし。
    また、テレビやそれに出てくる人なんかだと、科学的な理屈で話さないとウケない(つまり、お金が儲からない)というのはあるもんなぁ~(笑)

    ま、それはそれとして。
    出てくる食べ物の話は確かに恐ろしいんですけど、今やその手のサラダは言うに及ばず。様々な調味料や加工食品を同時に食べているわけですからね。
    本当はずいぶん前からヤバいんだけど、体が異物を輩出してくれていることで何とか平常を保てているみたいなところがあるんじゃないでしょうか。
    いや、完全に素人考えですけど。

    個人的には食べ物のことよりも、外国人労働者の扱いの方が怖かったですね。
    だって、日本はどんどん人口が減っているわけでしょ。何年後かには東京でもマイナスになるとか言われているわけです。
    人口が少なくなれば、サービス業は元より、さまざまな産業が成り立たなくなるはずです。
    となれば、今度は日本人が外国に出稼ぎに行かなければならないわけで、つまり、この『ブラックボックス』で描かれている外国人研修生の実態は何十年後か(たぶん20年後くらい?)の私たち日本人の姿かもしれないわけで。
    って、今や野菜工場以上に、日本そのものがブラックボックスってこと?

  • 食品工場や植物工場を題材にした怖い小説。いろいろな出来事が起るにつれ、だんだん気分が悪くなってくる。自分が食べているものは大丈夫かと困惑が広がっていく。また、そこで働く外国人研修生の過酷な環境と彼らの事情などにも思いをはせる。登場人物がもつ多面性にも多く触れられている。感覚的に受け入れられないものと対比的に描かれる太陽のありがたみを実感する。

  • 2017.12.13-100
    安心安全の食の裏側。日々考えてはいたが改めて恐ろしさを痛感。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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