吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 503
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645357

作品紹介・あらすじ

「もう泣くまい。悲しむまい。復讐の第一歩として、人知れず日記を書こう-」。親の借金のため19歳で吉原へ売られた光子が、花魁・春駒として過ごした日々を綴った壮絶な記録。大正15年、柳原白蓮の序文で刊行され、当時の社会に波紋を呼んだ、告発の書。

感想・レビュー・書評

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  • 吉原の遊女の日記。ただ江戸時代の話ではなく、大正末期の話。主人公・森光子は大正13年に19歳で吉原に売られる。1924年、今からほぼ100年前のことである。そして2年後に脱出し、この日記を出版する。最後、唐突に脱出で終わっており、その後が気になる。

  • 引き込まれるように読んだ。
    読みにくいと感じる箇所もあるが、フィクションでみる花魁よりもとてもリアル。
    金勘定が本当に酷く働けど働けど借金が嵩み、読んでいて辛く感じた。
    突然脱出編に入るので森さんが脱出に至るまでの経緯や具体的にいつから計画していたのか、白蓮さんとのお話なども知りたかった。

  • なんと聡明な方なのだろうという感想が読み進めていて何度も湧いた

    お客をとるきがないのにお客がつくのは、きっと彼女と話していると楽しかったからではないかと思った

    脱出に至るまでの胸中が書かれていないので、続きを読もうと思う

  • 吉原の廓に売られ、花魁として生きた女性の記録。作者の森光子は、19歳で1000円と引き換えに吉原の遊郭へと売られる。そして、初見世で見ず知らずの男に処女を奪われ花魁•春駒としての生活を始める。彼女は、そこでの生活を「復讐」として日記に克明に記録する。そうして生まれたのが本書となる。
    吉原に関する文献は多く残されているが、花魁本人の手による記録というのは数が極めて少ない。搾取される側の声はかき消されてしまうのが常であるし、そもそも字を書くことのできない花魁も多くいた。その中で、森光子はおそらくそれなりに高い教養を持ち、そして自らの境遇とその環境を冷静に見る観察眼を持っていた。だから、花魁の世界を今に伝える一級の資料であると同時に、廓の様子がいきいきと描写され読み物としてもとても面白い作品となっている。
    なにより、日記のはしばしから、森光子の意志の強さを感じられるのが最大の読みどころ。たとえ不本意な形で花魁となろうとも、心や誇りまでは決して売ることはない。それはどこまでも自らのものであるという確固とした決意を読み取ることができる。しかしそれは、そのくらいの決意を持たなければ、容易に挫け折れてしまうほどに過酷な状況であることの裏返しでもある。そこには、吉原や花魁といったキーワードから連想させるような華やかさなど微塵もない。ただひたすらに苦しみばかりの毎日があるのみ。その苦しみの毎日の中で女性たちはすり減っていく。吉原という男の快楽の街が、いかに女性の犠牲のもと成り立っていたのか、改めて考えさせられる。
    本書の最後で、彼女は吉原を脱出し晴れて自由の身にとなる。そして、柳原百蓮に保護されるのは、花子とアン」にも描かれている通り(森光子の役は壇蜜が演じている)。彼女のその行動があればこそ、現代の僕たちはこうして本書を手にすることができる。

  • NHK朝のテレビ小説「花子とアン」の中で、白蓮を訪ねて廓から逃げてきたお女郎。それがほんとうにあったことだったと知り、その彼女が書いたこの本を手にしました。貧困を理由に身売りされ、何をするかわからないまま女郎になった春駒の日記は、女性としていろんなことを考えさせられました。

  • 大正の末期。文学の好きな女の子がいた。酒飲みの父が死んで借金が残り、周旋屋に騙されて吉原の遊郭に売られ、日記をつけていた。それが大正15年に出版されたものがあり、数十年を経て3年前に再出版された。

    表紙が少女漫画風の花魁なので子供が女性史の勉強のために読むような本かと思ったが、とんでもなくヘビーな涙なくして読めない体験記録である。

    6年の年季とは言え、借金は簡単に返さないようなからくりになっていて、警察に届けられるので逃げることもできない。病気になっても入れられる病院は牢屋のようなところ、関東大震災の時経営者は被災した女性たちを見殺しにする。

    恥ずかしい日本の歴史がよくわかる。

    読んで少し嬉しかったのはクリスチャンの人がきて、卑屈にならないよう励まして、十字架の指輪を彼女にあげるエピソード。

  • ジャケ買いでしたがものすごく衝撃を受けました。

    八十年という前に、これだけの文才ある(即ちある程度は教育を受けている)聡明な女性が、自分の体を売って生活していたという事実。

    何度も何度も、これは物語ではなく事実の日記なんだと言い聞かせながら、ゆっくり読みました。

    吉原の(あくまでも春駒のいた店での)借金返済制度、一晩でどれだけの相手をしていたか、花魁同士の日々のやりとり。その一つ一つがよく分かります。果たしてこれだけの日記をひたすらに残す事が、私にできるだろうか。森光子さんの聡明さと芯の強さ、ぶれのなさがとても眩しい一冊。

    カバーイラストを描かれているこうの史代さんの漫画の中にも、吉原の女性の事が出てくる話がありますが、彼女たちはこうして暮らしてきたのかと思うと、また違った視点で読めそうです。

    出会えて良かった一冊。
    辛いけれど、目を背けたらいけない事を一つ知れたと思います。

  • 大正時代に借金のかたに吉原に売られた女性の日記。
    ノンフィクションなので、エンターテイメントというよりは歴史的な価値の方が高そう。

    出版を予定したものでないなら、ここまで物語として完成しているのはすごいなぁ。文章は口語に直したと書かれていたけど、それにしても読みやすい。

    日記って、基本的に根暗になりがちだと思うのに、人に優しいままの光子さんがすごい。ちょっとバカでお人好しなのかな。だから商売ッ気がないのにそこそこ売れちゃったんだろうな。
    昔の人の気質なのか、光子さんの個性なのか。

    消息がしれないらしいけど、お幸せになってるとよいと思う。

  • ふと目につき、手に取ってみたら、「大正15年、柳原白蓮の序文で刊行され、当時の社会に波紋を呼んだ、告発の書」
    というので気になって読んでみた。

    親の借金のため19歳で吉原へ売られた光子が、花魁・春駒として過ごした日々を綴った壮絶な記録。

    この本の出版の翌年に、もう1冊「春駒日記」を出版し、彼女を自由廃業へと導いた外務省の役人と結婚し、没年や著作権継承者も不明だという著者に興味が引かれる。

  • 3.78/447
    内容(「BOOK」データベースより)
    『「もう泣くまい。悲しむまい。復讐の第一歩として、人知れず日記を書こう―」。親の借金のため19歳で吉原へ売られた光子が、花魁・春駒として過ごした日々を綴った壮絶な記録。大正15年、柳原白蓮の序文で刊行され、当時の社会に波紋を呼んだ、告発の書。』

    冒頭
    『 ×月×日
    熊谷の周旋屋が話を決めて帰って行った。この急場を救うには、これより他に道が無い。
    金は千円以上借りられるとの事。今の借金には多すぎるが、どうせ借りられるのだから借りなければ損だと言う。それなら××のおばさん(お隣りの周旋屋)が、言ったように、母の死に金に取って置こう。
    それにしても、一体あの吉原というところは、どんな所だろうか。何も知らない自分が、そんな所で勤まるかしら?』


    『吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日』
    著者:森 光子(もり みつこ)
    出版社 ‏: ‎朝日新聞出版
    文庫 ‏: ‎320ページ

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