暴力に逆らって書く: 大江健三郎往復書簡 (朝日文庫 お 40-3)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643728

感想・レビュー・書評

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  • 新聞掲載を目的とした往復書簡であるから、基本的に同調者との対話に軋轢は生じない。皆それぞれ自身の言葉で真摯に語る。何度も心に響く言葉に出会えた。ただソンタグが暴力を止める為に必要な暴力の存在を肯定しているのがひっかかった。なるほど、短絡的には有効なのかもしれない。しかし暴力で勝ち得た安寧など更なる暴力の増長に拍車をかけるだけだ。冷戦時代の核軍備競争と同じじゃないか。大江は自分の死後にまで長期戦を見据えている。これからの人々へ、真の平和への足掛かりを残そうと、愚直に誠実にナビゲートする役目を自ら課している。

  • 特にアモス・オズとの往復書簡に衝撃を受けた。ユダヤ人は武器も国も無く虐殺された経験から非武装による平和の幻想を捨てた、と。他にもソンタグ、アマルティア・センからの返信に、より現実的な策が必要と手厳しく打ち返されているように思う。それでもジョナサン・シェルが言うように、批判を正面から受けながら何十年も核廃絶のような理想を訴え続けた高明な作家は他にはいない。それが、ご本人が言われるように執着する子どもじみた性格によるところもあるのかも知れないが、それこそがこの作家の大きな大きな魅力だったと改めて思わされた。

  • 大江氏と各界知識人との往復書簡をまとめたもの。これまで知らなかった人を知れて、かつ、物事の捉え方について多様なものを学べて、なかなかためになる本だった。

  • 本書で語られていることの、恐らく十分の一も、実感をもって理解できていませんが、年を重ねるにつれて、その折々に触れて読み返したくなる予感でいっぱいの本です。

  • [07.07.25]<市

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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