街道をゆく 40 (朝日文芸文庫 し 1-43)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022641489

感想・レビュー・書評

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  • この本を読了するのは2度目。
    1度目は18年ほど前か。あの時より理解度高く読めたと思う。
    台湾を旅しながら読むのには本当に最適で、読書を楽しむことができた。

  • 文章にリズムがある。雑談をしていて、あっ話がそれた。もとに戻そうというような。この当時はまだまだ日本語が達者な方がご存命だったと思うが、今はどうか。台湾の多様性、多層性がよくわかる。いつか、同じ街道を歩いてみたい。

  • 2008

  • 前評判通りの秀作。その前評判はどこからかというと『司馬遼太郎の遺産「街道をゆく」』という司馬氏没後に編まれたぬくもりにあふれた回顧録からであった。

    第二次大戦前に日本語教育を受けた人が終戦当時15歳だったとすると今年82歳ということになる。自分の親の少し上の世代だ。そう思うとその頃を知る人達に直接あって話が出来る機会は年々減少しているということであり、それはそれで少しさみしい。ただこの「さみしい」という感覚がどこから来るのかが重要な点であり、今までの自分ならば「世界中の人口の中での数少ない親日派人口が更に減ること」というぼんやりとした幾分自分勝手な理由からだけであったわけであるが、本当はもう少し先を見据えて感じるときに少し複雑な「寂しさ」になるということが少しずつ分かってきた。

    ここで言う「もう少し先」とは。

    明治時代に日本政府と清朝との間にどういういきさつがあったのか、日清戦争を経て蒋介石のどのような思惑でこの豊かな島は扱われたのか、当時の「多民族国家日本」はどのようにこの島を経営していたのか、現地人渡来人を問わず私心を忘れてその地に尽くした人達にはどういった人達がいたのか、孫文の思想は如何にこの島に巣食っているのか、海の向こうから持ち込まれた国家が島にもたらした作用というのがどういうものだったのか、内省人と外省人の心のなかには当初どういった感情が渦巻いていたのか、そしてそれがどのように変化していったのか、その中で登場する李登輝とはどういう人物なのか、その後の台湾島民がどういった教育を受けどういった思想が一般的なものになっていったなのか…というような非常に複雑なものである。こんな複雑なものを全て消化して人類愛にあふれた明確な回答を持てるような人は当然稀なわけで、それ故にそんな見解を持ち得る台湾島出身の人物や大陸生まれの人物にはなかなか会えない。ましてや歪んでいない周辺諸国の歴史教育をきちんと実施していない戦後の日本生まれはこれまた人材が希少であることにまちがいはない。

    ただ相手を罵ることは自身を罵ることになるということ、自身の無知を、高慢さを、心の狭さを声高に主張していことになるのであるということを常に肝に銘じておかねばならない。この島に対しての理解をできるだけ速く高め、一方で得た知識が自分の主張を誰かにぶつけて論破することが目的として使われるのではなく、様々な立場の主張を微笑みをもって聴くことに使われるように訓練した上で、もう少し踏み込んで付き合っていきたい。

    これこそが司馬氏の言う「北方領土をみてモンゴルの草原を想う」という人間に一歩近づける道の一つのような気がするからである。

  • 俺の学生時代、田中角栄が中国と国交を樹立したことはいいことだと単純にも思い込んだが。そのころ「光華寮問題」という問題(台湾所有の京都大学学生寮を中共がよこせと訴えた訴訟)が勃発し、実は40年経ったいまでもわざと決着させていないほど日中友好に気を使っている/侵略性大国の前では「小国は賢くなければ生き残れない」。戦前の日本の気質も残す、特筆すべき親日国ではある。台湾は主席公選の民主主義国であるが、先年小林よしのりの入国を拒むという事件が起きた。それほど大陸の共産党政府の核ミサイルを恐れている。日本は軍事的脅威に暢気すぎる

  • 今度仕事で台湾に行くのでその前に台湾のことを勉強しておこうと思い読んでみた。台湾の歴史について、全く知らなかった。オランダの支配、清の支配、日本の支配、そしていまだに続く外省人(中国)の支配。そういう支配された歴史のなかで、生きる市井の人々と触れあっていく司馬遼太郎。飼い犬の名前にポチと名付ける老人と出会い寂しさを覚える司馬遼太郎。台湾で生まれ、生後すぐ終戦と同時に日本に戻され生まれ故郷台湾の事をほとんど知らない若者が台湾の運動場を走る姿をみて、人は詩を言葉だけで書くものではなさそうだということを、ほのかに思わせられた。と書く司馬遼太郎の言葉。そして旅の終わりに、当然のことだが、この島の主は、この島を生死の地としてきた無数の百姓たちなのである。と書いて終わるこの紀行文は「国」や「故郷」といったものを深く考えさせられる。植民地政策は最大の国家悪(おそらく文化的側面について)と言うが、一方で占領する側が最大限の技術を投入しようと試みることで社会が整備されていく側面もあるということもなるほどなと思わされた。全編さすが司馬遼太郎といった紀行文だ。台湾行く前にもう少し台湾の事を調べてみたいと思う。

  • 新書文庫

  • 序盤が発行されて20年弱が立っているため、今の台湾とは大きく異なる描写が多く面白い。
    台湾の歴史を大まかに学習することに役立った。

  • 10年前に2度目の台湾旅行から帰ってきて、しばらくしてからこの本を買った。そして2015年5月に3度目の台湾となる旅を計画した。妻や子とではなく母と二人で行くことを提案し、意外にもスムーズに諸手配を終えることができた。出発の前日までに本書を再読を試みた。現地で起こるであろう様子を、あれこれ思い浮かべながらページを捲るのは楽しいものである。また、現地では限られた時間でのガイドしか無いだろうから、若干でも背景知識の足しになればと思いもあった。哲人李登輝元総統や八田與一の人柄にふれることができ、KANOの舞台となった嘉義のことも取り上げられ、有意義だった。本質をコンパクトな語句で抉る司馬節も味わえた。

  • 14/8/13読了

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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