【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630650

作品紹介・あらすじ

【哲学心理学宗教/心理】第2次世界大戦時の強制収容所から生還した著者が、その体験を人間の極限状態として克明に、静かに描き出す。35言語に翻訳され、世界中で読み継がれてきた古典的名著。旧版『アウシュヴィッツは終わらない』を改題し、増補、完全版としておくる。

感想・レビュー・書評

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  • かれらは人間ではない。

    そこには一日に何万も
    の人間を焼く焼却炉が
    あった。

    三才の少女エミーリア
    が、

    好奇心に溢れ朗らかで
    見えっぱりで頭のよい
    少女が、

    まるで一顧だにされず
    ガス室に送られ、

    呆気なく殺されていく。

    活発な少女の姿が幼き
    日の娘の面影と重なり、
    胸が塞がりました。

    本書は、
    体験した者にしか綴れ
    ない貴重な記録書です。

    戦争がもたらす悲劇を
    心に深く留めて。

  • アウシュヴィッツは終らないの 改訂完全版ということですが
    その本は読んだ事がありませんが
    アウシュヴィッツから 生還した 著者が書いた本というので 読んでみました。

    ラーゲルと いう 言葉を 見ると
    シベリア抑留についての内容を思い出しましたが
    かなり似ています。
    劣悪な状況の中 著者はどうして 生きて出られたのか。

    収容所の中では 誰もが 非人間的になると 書かれていました。
    勿論 収容されてる人に 体罰などを加える人達は
    非人間的ですが 収容されてる人達も 非人間的になると。
    非人間的というと 悪者というイメージですが
    収容されて 希望もなくなり 飢えと寒さなどに 襲われていき人らしい 心を失っていく。

    この冬一番の寒さと言われる日でも
    私達には 暖かい食事や 服があります。
    だから 収容されていた 人達がどれほど過酷だったかは想像するしかできませんが
    生きるか死ぬかの 境目は 収容所の中では
    予測不能です。

    著者は 最後伝染病になり 多くの仲間が移動していくけど 置いていかれた から 寒い中死なないでいられた。

    つらかったでしょうけど 
    こうして 何があったかを 記録に残してくれて
    良かったです。

    さらっと 読んでしまいましたが
    また ジックリ再読したい本の一つになりました。

  • 人間から名前、名誉、尊厳、希望、顔(表情)を奪い去るナチ統治下の強制収容所(ラーゲル)に抑留され、ソ連軍の解放で母国イタリアに帰還したユダヤ人化学者の体験証言です。〝労働は自由をもたらす〟と掲げたラーゲルの門をくぐった著者は、無言の労働と行進、罵りと殴打を浴びる毎日、飢えと寒さと病いに耐えるだけの、人間の魂の抜け殻が蠢く収容所を奇跡的に生き残ったのでした。本書はファシズム、ナチズムの罪禍をとおして、政治体制に煽動されたホロコ-ストを繰り返す危機感への大いなる警鐘となる魂の叫びです。

  • アウシュビッツを生き延び、イタリアに帰還した後、自らの体験を書き留めた著者による主著。
    完全版として翻訳された本書は、読む者の魂を揺さぶるに違いないです。

  • 著者が強制収容所から生還した経験を書いたノンフィクション。過酷すぎる飢えや労働、伝染病の蔓延する劣悪な環境で、名前もアイデンティティも奪われ、人間が人間で無くなっていく様子がよくわかる。強制収容所は世界中にあれど、ナチスが他と違うのは抹殺を目的にしたところだそう。ひとつの民族を根絶やしにするなんて愚かな考えだが、殺す側も殺される側ももはや人間ではなかった。ただの昔話でなく、地続きな現代においても必読書だと思いました。

  • 1919年にトリーノに生まれた作者は44年2月アウシュビッツ強制収容所に抑留。45年1月ソ連軍に解放され、同年10月イタリア帰還。

    実話。

    ナチ統治下のドイツ地図があり主要収容所および抹殺収容所の場所が点在していてその数の多さに驚かされる。

    ユダヤ系のイタリア国民だというだけで生きる権利を奪われる。
    人でなく物として、いくつあるか数えられる。
    何百人も軍用列車で運ばれて、たまたま列車の片側に降りたものが収容所に入り、残りはガス室行きになった。

    ここでは、収容所の中での暮らしが事細かに書かれている。私たちの常識のような規範で生きていたらすぐ命はなくなる。
    こういうことがあった歴史を知ると、いまがどんなものでもありがたくなった。
    あんまり、本を誰かに勧めたりはしないけどこれは読んでほしい。と思った。

    それにしても、よく生き延びたな。

  • 234

  • 最初にタイトルから連想したのは、強制収容所に入った人間の外見の変化だった。木の枝みたいに痩せて、目がガラス玉のようになって、まるで人間じゃないみたいだ、という意味かと思っていた。(「物みたいに扱われるうちに人間の尊厳を失う」というのは著者も言っているけど)
    でも、そうではなかった。極限の状況を生き延びるために野生動物に戻っていく人間(作者自身も含む)を目の当たりにした、作者の驚きと失望の声だった。

    これまでに読んできた強制収容所の体験記は「逆境に置かれても挫けず、高尚な精神を保って生き延びた」というものばかりだった。(立派なことだと思う)
    けれど、この本の著者は、科学者であり政治活動家であったにも関わらず、盗みははたらくわ、セコい商売するわで、手を汚しまくる。
    そんな自分を正直に、後悔や反省の感情も交えず、淡々と書いてくれているからこそ、胸にずんと響いた。「意識高い系」な人でもコソ泥に落としてしまうのが、強制収容所なんだと。

    読んでいて1番苦しかったのは、収容所に捨ておかれ、ソ連軍に見つかるまでの10日間。独軍の支配から解放された途端、憑き物が落ちたように人間らしい思いやりや団結力を取り戻す著者たち。しかし、同じ棟の仲間や周りの人間たちはバタバタと死んでいく。死体の山ができる。解放=希望ではないことが辛かった。

  • 私はまだまだ知らない物事が多すぎるな、と痛感した。
    そのあまりの壮絶さに圧倒されながら長い時間をかけて読み終わり、訳者解説で筆者が自死で最期を遂げていることを知って愕然とした。
    いつかまた読み返すと思う。

  • こっちを先に読んでしまっていたのだけどようやく読んだ。
    https://booklog.jp/item/1/4901477005
    感想や要約を許すようなタイプの本ではないので、皆、読むといい。著者がその目で見たことしか書かないというポリシーに基づいているので、これだけで強制収容所体制を理解した気になると過小評価になることは承知しておく必要がある。

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著者プロフィール

1919年、イタリア・トリーノ生まれ。トリーノ大学で化学を専攻。43年イタリアがドイツ軍に占領された際、レジスタンス活動に参加。同年12月に捕えられ、アウシュヴィッツ強制収容所に抑留。生還後、化学工場に勤めながら作家活動を行い、イタリア文学を代表する作家となる。その円熟の極みに達した87年、投身自殺を遂げた。

「2017年 『周期律 新装版 元素追想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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